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今後の課題

ドキュメント内 現代日本語の使役文に関する一研究 (ページ 155-166)

第9章 むすび

9.3 今後の課題

今後、次のようなことについてさらに考察していこうと考えている。

・「V-サセル」の意味に関する再考察

本論文では、「V-サセル」の形・機能に注目してそれぞれによる使役の意味の特徴を述べ た。「V-サセル」の意味として、《引き起こし》《許可》《放任》といった使役主体の使役対象 への働きかけのあり方に注目した分類、そして、《つかいだての使役》《みちびきの使役》

という「V-サセル」動作の実現が誰のためのものであるのかによる分類であった。しかし、

実際、考察を進めていくと、いずれの観点からも分類できない用例が多くあった。これら をどのようにすればいいのか、そして分類できない例には何らかの構文的な特徴はないの か考察する必要があるように思われる。

さらに、前節で《引き起こし》《許可》《放任》/《つかいだての使役》《みちびきの使役》

という意味は「V-サセル」文が表す意味であると述べたが、それでは使役動詞「V-サセル」

が表す文法的な意味はいったい何なのか改めて考える必要があるように思う。

・Vが無意志動詞である場合の再考察

本論文では「V-サセル」の V が意志動詞であるか無意志動詞であるかで分けることなく

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考察を行った55。しかし、V の意志性を問わなかったために、「V-サセル」文が表す意味が

《引き起こし》に傾いてしまったのかもしれない。なぜなら「V-サセル」の V が無意志動 詞である場合、《許可》を表すことができないからである。しかしながら、本論文で考察の 対象とした例の中に「V-サセル」のVが無意志動詞である例よりもVが意志動詞であるも のの例の割合が高く、「V-サセル」のVが意志動詞である場合だけを対象としても同じよう な傾向がみられるのではないかと思う。とはいっても「V-サセル」の意志性に注目して考察 を行うことは必要だと思われ、分けて考えることでそれぞれの表す意味が明らかになるの ではないかと思われる。

・「V-サセル」と非使役形(V)との文中での形・機能による意味的な違い

本論文はVが使役動詞であるものを対象に文中での形・機能に注目して考察を行ったが、

考察を通じて明らかになった特徴がはたしてVが使役動詞であるからみられるものなのか、

それとも文中における機能、もしくは本来の補助動詞がもつ意味によるものなのか今のと ころはっきりしない。

・本論文で考察できなかった「V-サセル」の文中での形・機能、そして他の補助動詞がつ いた形に注目した考察

本論文では、第Ⅱ部で「V-サセル」の文中での形・機能に注目して、「V-サセル」が連用 の形である場合、条件の形である場合、終止の形である場合について考察し、第Ⅲ部で「V-サセル」のテ形に補助動詞がついた形として、「V-サセテヤル/アゲル」「V-サセテクレル」、

「V-サセテオク」、「V-サセテシマウ」をとりあげて考察した。しかし、今回考察できなかっ たほかの形について考察することでさらに文中における形・機能と意味とのかかわりがよ り明らかになるのではないかと思う。その一つとして、本論文で考察した範囲では「V-サセ ル」が《許可》を表すものがごく少数であったが、それは本論文の第 5 章で考察対象とし た複文の範囲に関係がある可能性がある。すなわち、第 5 章では連用の従属節を伴う主節 述語の「V-サセル」のみを考察対象にし、原因・理由の形の従属節を伴う主節述語の「V-サセル」は考察しなかった。《許可》の例はこれらの場合に多く現れるのではないかと思わ れる。

・家康のもくろみどおり、光悦の一門眷族、友人、およびかれの影響下にある茶人、蒔絵

55 これまでの先行研究でも「V-サセル」のVが意志動詞であるか無意志動詞であるかに分けて考察したも のはあまりなく、管見に入るものとして佐藤(1986)しかない。

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師、筆師、紙すき、陶工などがあらそって移住を希望してきたから、光悦はかれらに土 地を分けあたえてやり、屋敷をつくらせた。(国盗り物語・斎藤道三)

・「あんたは、兄ちゃんごど頭がええわけでもにゃあ、靖代みたいに、看護婦になるとか、

そげな夢を持っちょるわけでもねかった。それなのに、ただただ、もう、こんな田舎か らは出ていきたい、都会で一旗揚げたいとばっか言うかい、母ちゃんも、父ちゃんに頼 み込んで、無理をして大学まで行かせたとばい」(しゃぼん玉)

「V-サセル」が《許可》を表す場合は、佐藤(1986)の用語でいえば、動作の源泉が使 役対象にある場合56である。第 5 章で述べた連用の形の従属節をともなう主節述語の「V-サセル」の場合、従属節と主節との関係が従属的で、密接にかかわっていることから、従 属節の主語と主節の主語はともに使役主体であることがほとんどである。そのため、従属 節に使役主体による何らかのきっかけ(動作の源泉)が連用の従属節に現れやすくなるの だと思われる。ところが、原因・理由の形の「V-サセル」の場合、従属節と主節との関係が 連用の形の従属節のそれにくらべていくらかゆるやかな関係であり、従属節の主語に使役 主体ではなく、使役対象が現れることが許される。そのため、原因・理由の形の従属節に 使役対象による何らかのきっかけ(動作の源泉)が現れやすいということではないだろう か。

今後、本論文で考察できなかった「V-サセル」の形・機能にも注目して考察する必要があ ると思われる。

56 3参照

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