第2章 空気侵入事故時の事象進展解析
2.3 空気侵入事故の起因事象選定
2.3.2 空気侵入事故時に考慮すべき現象の把握及び不確さ因子分析
2章では地震起因の SSC 損傷時の解析コードの妥当性確認にあたり考慮すべ き現象の把握及び不確実さ因子分析による不確実さ因子の選定を目指している。
考慮すべき現象として、燃料の昇温による破損と、その後の燃料の異常昇温に より生ずる燃料溶融に伴う著しい炉心損傷がある。炉心溶融が生じた場合、ソー スターム評価に加え、燃料デブリの挙動評価、原子炉外への放射性物質の移行評 価等が追加で必要となる。そこで燃料最高温度に着目した事故事象の進展解析 を実施し、2.3.1節で述べたSiCが急激に破損する2000℃を判断基準とし、これ を超えた場合には炉心溶融の可能性があるとしてその影響評価を行うこととす る。
次に、ソースターム評価の不確実さ因子分析を実施する。燃料から原子炉まで のFPの放出メカニズム及び各メカニズムを評価するための不確実さ因子を抽出 した結果をFig. 2.6に示す。なお、本研究では原子炉動特性解析に着目している ことから、不確実さ因子の抽出にあたっては、核・熱流動に関する因子に着目す る。
燃料からのFPの放出メカニズムは、早期放出と追加放出に分類される。早期 放出では、配管破断直後に炉内を循環している FP 及び機器に沈着している FP が冷却材とともに圧力容器外に放出される。追加放出では事故後、時間が経過し て冷却材の流れがほぼ定常になったのち、2.3.1 節で述べた、燃料の昇温や被覆 層の酸化腐食等の事象進展に伴いFPが放出される。
ここでは事象進展に寄与する不確さ因子の抽出を目的としていることから追 加放出に着目する。FP 追加放出における FP の移行段階は、燃料から冷却材へ
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の放出と、自然循環流れによる炉心からの放出に分類される。燃料からのFP移 行に係る現象は、昇温によるFP放出と酸化による燃料破損に分類される。昇温 によるFP放出の評価因子には燃料温度と放出計算パラメータ、酸化による燃料 破損の評価因子には燃料初期破損率及び追加破損率があり、追加破損率の評価 因子として燃料温度がある。また、自然循環流れ放出のFP移行に係る現象とし て原子炉内流動があり、評価因子として自然循環流量がある。自然循環流量は、
燃料の酸化量及び原子炉からのFP放出量に寄与する。Fig. 2.6の結果から、核・
熱流動に関する因子に着目した結果、不確実さ因子として燃料温度と自然循環 流量を抽出した。
燃料溶融による著しい炉心損傷等、追加で考慮すべき現象を把握するため、以 下の節で行う事象進展解析では、燃料最高温度に着目し、考慮すべき現象がある かを判断する。さらに、ソースターム評価の不確実さ因子として抽出した燃料温 度及び自然循環流量に着目し、事象進展解析を行い、最終的な不確実さ因子を決 定する。
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Fig. 2.6不確実さ因子の抽出
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