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反応度制御設備機能喪失による影響評価

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 40-43)

第2章 空気侵入事故時の事象進展解析

2.4 空気侵入事故の事象進展での緩和機能喪失の重畳による影響評価

2.4.1 反応度制御設備機能喪失による影響評価

高温ガス炉では、空気侵入事故時にCRS機能喪失が重畳した場合においても、

負の大きな温度反応度のフィードバックにより直ちに出力は下がり静定するこ と、さらにその後に温度反応度とゼノン反応度のバランスにより再臨界が発生 することが知られている21。ここでは、CRS 機能喪失の重畳が燃料温度及び自 然循環流量に与える影響を定量的に評価するため、Table 2.3に示すCase 2及び

Case 3の評価結果の比較を行った。

短時間スケールでの原子炉出力及び燃料最高温度の評価結果を Fig. 2.10 に示 す。原子炉出力は、スタンドパイプ破損に伴う1対の制御棒の飛び出し(0.267$) により、直ちにCase 2では762.6MW、Case 3では798.1MW まで上昇する。さ

らに、Case 2 では1対の制御棒以外は全挿入され、スクラム反応度が添加され

る。Case 3 では制御棒は臨界制御棒位置で固着しておりスクラム反応度は添加

されない。しかしながらCase 3 においては、原子炉出力の上昇及び冷却材喪失 による除熱量の減少により炉内温度は上昇する。これにより負の温度反応度が 投入されることで出力は30秒程度でゼロまで低下し静定するため、どちらのケ ースにおいても燃料温度の急激な上昇は見られない。

長時間スケールでの核分裂による原子炉出力、全反応度、燃料最高温度、自然 循環流量の評価結果をFig. 2.11Fig. 2.12Fig. 2.13に示す。Case 3においては、

温度反応度とゼノン反応度のバランスにより全反応度は負から正に転換し、再 臨界は約 300 時間経過後に発生する。燃料最高温度について、再臨界時刻まで は出力がゼロであるためCase 2とCase 3で同じ挙動となるが、再臨界後、Case 3では再臨界時刻の温度が維持されるためCase 2より高温の状態が続く。なお、

未臨界状態が維持されているにも関わらず長い間、燃料温度が高温状態である 理由は、崩壊熱の影響及び黒鉛の熱容量が非常に大きいことによる。さらに、自 然循環流量についても、再臨界発生前は同じ挙動を示すが、再臨界後は、Case 3

の方がCase 2 よりも炉内温度が高いため、空気とヘリウムの混合流体の粘性係

数が大きくなり混合流体の流量が抑えられる結果となった。

以上のことから、起因事象にCRS機能喪失が重畳した場合でも、燃料温度は 設計基準である 1600℃を超えることはなく、急峻な事象進展には至らないと言 える。このため、CRS 機能喪失の重畳により、燃料溶融に伴う追加評価の必要 性がないことを明らかにした。

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Fig. 2.10 Case 2及びCase 3の出力及び燃料最高温度(短期挙動)

Fig. 2.11 Case 2及びCase 3の出力及び全反応度(長期挙動)

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Fig. 2.12 Case 2及びCase 3の自然循環流量(長期挙動)

Fig. 2.13 Case 2及びCase 3の燃料最高温度(長期挙動)

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