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神経活動パターンの解析

3.2 実験手法

3.2.2 神経活動パターンの解析

神経回路網の電気活動パターンを解析するために,当研究室で開発したソフトウェア

(SPR)を用いて,神経活動の記録及び時空間パターンの類似度を計測した.電気刺激直 後の一定幅(100 ms)の時間窓を設定し,各電極において検出された活動電位スパイク 数をカウントした(図3.5).電極毎の活動電位スパイク数を要素とした64次元ベクト ルをその時間窓における神経回路網電気活動パターンの特徴ベクトルとした.従って全 測定時間にわたって1つの時間窓ごとに1つの特徴ベクトルが生成されることになり,各 時間窓における特徴ベクトルはその時刻における神経回路網の活動状態を一意に表し ていると言える(図3.6).そこで,ある時刻における2つの活動パターン間の差異は対 応する2つの特徴ベクトル間のユークリッド距離によって定量的に表現できる(図3.7).

履歴現象とは,「事前の 1 回目の刺激によってシステムの状態が初期状態から変更さ れ,この変更が維持されている間に次の刺激が入った場合に状態に依存した出力が返さ れる.」ことであるので,1 発刺激に対する応答と 2 連続発刺激に対する応答を比較し て差があれば履歴が存在すると考えられる.そこで初めに 1 発刺激を Stim 1 として印 加し,60 秒後に,刺激間隔の短い 2 発刺激を Stim 2 と Stim 3 の連続刺激として印加 した.上述の単純な刺激スキームでは,刺激による応答活動のスパイク頻度の影響を受 ける.例えば,刺激直後に誘発応答頻度が増加した場合,実際の活動パターンの差異は 刺激してから一定時間後の方が大きかったとしても,誘発応答頻度の高い刺激直後の方 が頻度の上昇に伴ってばらつきも大きくなるため,見掛け上パターン差異が大きく見積 もられてしまう.これを軽減する為に,Stim 1 に対する応答パターンと,同日・同一 細胞で行った別の実験から得られた Stim 1 に対する応答パターンとのユークリッド距 離で,Stim1 に対する応答と Stim 3 に対する応答とのユークリッド距離を除して正規 化を行った(式(1)).また,改良した実験スキームにおいては,単発の刺激を 60 秒あ けて 2 回印加し(Stim 1,Stim 2),60 秒後に 2 発刺激(Stim 3,Stim 4)を印加し(図 3.4), Stim 2 に対する応答と Stim 4 に対する応答とのユークリッド距離を,Stim 1 に対する応答と Stim 2 に対する応答とのユークリッド距離で除することで正規化を行 った(式(2)).

𝐷

𝑛𝑜𝑟𝑚

=

𝐷𝐷𝑠1−𝑠3,𝑡

𝑠1−𝑠1′,𝑡

……… (1)

𝐷

𝑛𝑜𝑟𝑚

=

𝐷𝐷𝑠3−𝑠4,𝑡

𝑠1−𝑠2,𝑡

……… (2)

𝐷

𝑠1−𝑠3,𝑡

= √(𝑆1

𝑡,1

− 𝑆3

𝑡,1

)

2

+ (𝑆1

𝑡,2

− 𝑆3

𝑡,2

)

2

⋯ (𝑆1

𝑡,64

− 𝑆3

𝑡,64

)

2

… (3)

𝐷

𝑠1−𝑠1′,𝑡

= √(𝑆1

𝑡,1

− 𝑆1′

𝑡,1

)

2

+ (𝑆1

𝑡,2

− 𝑆1′

𝑡,2

)

2

⋯ (𝑆1

𝑡,64

− 𝑆1′

𝑡,64

)

2

… (4)

3.培養神経回路網における履歴現象

43

𝐷

𝑠1−𝑠2,𝑡

= √(𝑆1

𝑡,1

− 𝑆2

𝑡,1

)

2

+ (𝑆1

𝑡,2

− 𝑆2

𝑡,2

)

2

⋯ (𝑆1

𝑡,64

− 𝑆2

𝑡,64

)

2

… (5)

𝐷

𝑠3−𝑠4,𝑡

= √(𝑆3

𝑡,1

− 𝑆4

𝑡,1

)

2

+ (𝑆3

𝑡,2

− 𝑆4

𝑡,2

)

2

⋯ (𝑆3

𝑡,64

− 𝑆4

𝑡,64

)

2

… (6)

ただし,

𝐷

𝑠1−𝑠3,𝑡

は時刻 t の時間窓における Stim1, Stim3 間のユークリッド距離,

𝐷

𝑠1−𝑠1′,𝑡

は時刻 t の時間窓における Stim1, Stim1′間のユークリッド距離,

𝐷

𝑠1−𝑠2,𝑡

は時刻 t の時間窓における Stim1, Stim2 間のユークリッド距離,

𝐷

𝑠3−𝑠4,𝑡

は時刻 t の時間窓における Stim3, Stim4 間のユークリッド距離,

𝑆1

𝑡,1

⋯ 𝑆1

𝑡,64

は Stim 1 後の時刻 t の時間窓における特長ベクトルの各要素,

𝑆1′

𝑡,1

⋯ 𝑆1

𝑡,64

は Stim 1′後の時刻 t の時間窓における特長ベクトルの各要素,

𝑆2

𝑡,1

⋯ 𝑆2

𝑡,64

は Stim 2 後の時刻 t の時間窓における特長ベクトルの各要素,

𝑆3

𝑡,1

⋯ 𝑆3

𝑡,64

は Stim 3 後の時刻 t の時間窓における特長ベクトルの各要素,

𝑆4

𝑡,1

⋯ 𝑆4

𝑡,64

は Stim 4 後の時刻 t の時間窓における特長ベクトルの各要素とする.

3.培養神経回路網における履歴現象

44 図 3.5 特徴ベクトルの生成法.

この例では時間窓の幅を 100 ms としている.例として電極 2 におけ る活動波形とカウントされた神経活動電位が示されている.

図 3.6 特徴ベクトル間のユークリッド距離.

ある時刻における 2 つの活動パターン S11,S31はそれぞれ活動電位ス パイク数を要素とする 64 次元ベクトルで表現されている.

3.培養神経回路網における履歴現象

45

図 3.7 64 次元空間におけるユークリッド距離の概念図.

ある時刻 t における 2 つの活動電位パターンの類似度を 2 つのパター ンに対応する特徴ベクトル,S11,S31間のユークリッド距離 D で表現 する.