第 5 章 結論
B.3 実験結果と考察
B.3.5 疲労感
被験者H, 難易度高, 報酬なし
0 20 40 60
0 300 600 900 1200 1500 1800
経過時間(Sec)
解答時間(Sec)/問
被験者H, 難易度高, 報酬あり
0 20 40 60
0 300 600 900 1200 1500 1800
経過時間(Sec)
解答時間(Sec)/問
被験者H, 難易度高, 報酬なし
0 20 40 60
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55
解答時間(Sec)/問
回数(%)
正解 不正解
被験者H, 難易度高, 報酬なし
0 20 40 60
05 10 1520 2530 35 4045 5055
解答時間(Sec)/問
回数(%)
正解 不正解
図 B.6: 作業経過時間と問題解答時間(被験者H、難易度難)
また午前と午後をそれぞれ個別に見ると、有意差は無いものの、後半の試行ほどフリッ カー値が低下する傾向が見られた。これは、タスクを続けることでわずかに大脳系の 疲労が蓄積し、昼食とその後の休憩時間に、午前中の大脳の疲労が回復したためと考 えられる。しかし、全体としてフリッカー値の変動は小さいため、大脳の疲労状態は タスク成績に影響を与えない程度と考えられる。
各被験者の自覚症しらべの得点を図B.10、図B.11に示す。ねむけ感、ぼやけ感とも に、「難易度高、報酬あり、1回目」という全体で6回目の試行の得点が、他の試行に 比べて高かった。この試行を実施した時間帯は14時10分-14時40分であり、サーカ ディアンリズムによって、眠気が高くなったため得点が上昇したと考えられる。ぼや け感に関しては、全体で7回目の試行が4回目に比べて有意に得点が高く、1-4回目と 5-8回目を比較した場合にも、5-8回目の方が有意に得点が高いという傾向が見られた。
これは、ディスプレイを注視して作業を行うため、午後の方が目に疲れがたまったた めと考えられる。しかし、いずれもタスク成績に影響を与えるほどのものではないと
被験者K, 難易度高, 報酬なし
0 20 40 60
0 300 600 900 1200 1500 1800
経過時間(Sec)
解答時間(Sec)/問
被験者K, 難易度高, 報酬あり
0 20 40 60
0 300 600 900 1200 1500 1800
経過時間(Sec)
解答時間(Sec)/問
被験者K, 難易度高, 報酬なし
0 20 40 60
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55
解答時間(Sec)/問
回数(%)
正解 不正解
被験者K, 難易度高, 報酬あり
0 20 40 60
05 10 15 20 25 30 35 40 4550 55
解答時間(Sec)/問
回数(%)
正解 不正解
図 B.7: 作業経過時間と問題解答時間(被験者K、難易度難)
B.3.6 実験結果の再現性
2日間に渡って測定を行った被験者3名の実験結果を、1日目と2日目で比較したと ころ、報酬によりモチベーションが向上し、モチベーションによりタスク成績が向上 するという点は一致したが、被験者Cの難易度低を比べると、1日目は18.0%の向上 であるのに対して、2日目は1.8%と大きく差があるなど、タスク成績やモチベーショ ンの向上率は大きく異なった。この原因としては、以下のような理由が考えられる。1 つ目は、被験者の体調が変化したという理由である。被験者へのアンケートの結果で は、3名のうち2名の被験者は体調に関する回答が異なり、残りの1名は朝食の有無が 異なっている。2つ目は、実験の場やタスク内容に慣れが生じたことで、モチベーショ ンやタスク成績が変化したという理由である。実際、2日目は1日目に比べて、若干タ スク成績が良い傾向がある。3つ目は、体調などの条件が完全に一定な場合にも、タス ク成績は変動する可能性があるという理由である。特に本研究で提案してるモデルで は、人間の認知行動を確率的に表現しており、モデルが正しい場合は、正答数に数%の
被験者E, 難易度高, 報酬なし
0 20 40 60
0 300 600 900 1200 1500 1800
経過時間(Sec)
解答時間(Sec)/問
被験者E, 難易度高, 報酬あり
0 20 40 60
0 300 600 900 1200 1500 1800
経過時間(Sec)
解答時間(Sec)/問
被験者E, 難易度高, 報酬なし
0 20 40 60
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55
解答時間(Sec)/問
回数(%)
正解 不正解
被験者E, 難易度高, 報酬あり
0 20 40 60
0 5 1015 20 25 30 35 4045 50 55
解答時間(Sec)/問
回数(%)
正解 不正解
図 B.8: 作業経過時間と問題解答時間(被験者E、難易度難)
誤差が生じるのが必然といえる。これらの理由が複合的に影響した結果、実験結果の 再現性は、高いとは言えない結果になったと考えられる。
B.3.7 実験結果のまとめ
この実験では、モチベーションと心的負担が変化した場合の、知的生産性変動のデー タを収集することを目指した。また、難易度がほぼ均一な問題を連続して解いている 際に、解答時間が長くなる問題が発生する現象が、一般的に発生することを確認した。
その結果、報酬を「なし」から「あり」に変化させることで、モチベーションが有意 に向上した。モチベーションが高い群と低い群でタスク成績を比較したところ、高い 群でタスク成績が有意に高かった。また、タスク難易度を「低」から「高」に変化さ せることで、報酬がある場合に、NASA-TLX得点で表される心的負担が有意に向上し た。また、解答時間が著しく長くなる問題の発生が、多くの被験者で観察できること を確認した。
30 35 40 45
易 なし (1) 易 あり (1) 易 なし (2) 易 あり (2) 昼休憩 難 なし (1) 難 あり (1) 難 なし (2) 難 あり (2)
フリッカー値(Hz)
難易度 報酬 セット数
*:p<0.05 **:p<0.01
***:p<0.001
10:30
時刻 12:40 15:00 17:10
*
図 B.9: フリッカー値(全被験者平均)
5 10 15 20 25
易 なし (1) 易 あり (1) 易 なし (2) 易 あり (2) 昼休憩 難 なし (1) 難 あり (1) 難 なし (2) 難 あり (2)
自覚症しらべ(ねむけ感) * *
難易度 報酬 セット数
*:p<0.05 **:p<0.01
***:p<0.00 1
10:30
時刻 12:30 15:00 17:00
図 B.10: 自覚症しらべ(ねむけ感)の得点(全被験者平均)
5 10 15 20 25
易 なし (1) 易 あり (1) 易 なし (2) 易 あり (2) 昼休憩 難 なし (1) 難 あり (1) 難 なし (2) 難 あり (2)
自覚症しらべ(ぼやけ感)
*
難易度 報酬 セット数
*:p<0.05 **:p<0.01
***:p<0.001
10:30
時刻 12:40 15:00 17:10
** **
*
図 B.11: 自覚症しらべ(ぼやけ感)の得点(全被験者平均)
付録 C 机上面照度とモチベーションに着目した 被験者実験の詳細
付録Bで詳細を述べた被験者の内的要因に着目した被験者実験[1][2]では、環境要因 と個人特性については言及していない。オフィスでは、執務者のモチベーションを制 御することは環境を制御することよりもはるかに困難であるため、環境を制御するこ とにより知的生産性を向上させることが望ましい。そのため環境要因が知的生産性に 与える影響を考慮したモデルの構築が必要である。本章では、内的要因のモチベーショ ン、外的要因の照度、個人特性に着目したモデルパラメータを推定するために実施し た被験者実験[3]について述べる。