生産現場の概況
本研究 の対象 とした コー トジボ ワール 中部 地域 は
,灌
漑設備 の建造及び 回場整備 が行 わ れ た稲作地帯が点在 してい る。 また,整
備 は されて い ない ものの,雨
期 の降雨 を利 用 して 灌漑稲 作 が行 われ てい る内陸小低地 も多 く,国
内で も最 も灌漑稲作が盛 んな地域 である。本節 では
,こ
の地域 にお ける 自然条件,主
だった稲 作作業 の内容 と労働力等 を整理す るこ とに よ り,稲
作環境 のポテ ンシ ャル と現状 の技術水 準 を概観 す るこ とを 目的 とす る。 した が つて,技
術 そ の もの の評 価 及 び 労働 費 の検討 は,「第Ⅳ 章 ノミフォ ンにお け る小規模 機 械化 の妥 当性」 にて行 う。1)自
然 条 件始 めに
,灌
漑稲 作 を行 う上 で最 も重要 な 自然条件 で あ る降雨量 をみ てみ たい。 西経 4°〜6°
,北
緯7° 前後 に位置す るコー トジボ ワール 中部地域 は,赤
道 雨林気候 帯 とギニア (湿 潤)サ
バ ンナ気候帯 の中間地帯 に属 し,年
間降雨量 は,約
1,100〜1,200mm,平
均 降雨 日 数 は約 80日 で あ り,そ
の90%が
4月 か ら 10月 の雨期 に集 中す る (図Ⅱ‑1参
照)。 した がつて,雨
期 には降雨 に よ り冠水す る内陸小低地 の川 底部及び その外縁部 においては,貯
水施設 を もたな くとも灌漑稲作 が可能 となる。一方
,二
期 作 を行 うた めには乾期 の水源 確 保 が絶対条件 とな り,灌漑 用 ダム等 の貯水施設 が利 用 で き る地 区では乾期作 も可能 であ る。しか し近年 では降雨量の変動が激 しく
,貯
水施設 が あつて も十分 な灌漑水量 が得 られ な い作期 もあるこ とか ら,畑
作物 との輪 作 を行 う農 民 も存在 す る。 また,貯
水施設 を持 た ない地 区で も
,雨
期 にお け る降雨期 間が長 い年 には二期 作が可能 とな るこ ともあ り得 る。 こ の よ うに,降
雨不足 が もた らす リス クは常 に一定程度存在 してい るものの,降
雨過多 に よる影響 で深刻 な ものはな く
,洪
水等 の被害事例 もない ことか ら,
自然 災害 に よる農産物被出所 :Ministё re (1995)̀̀Annuaire
月
図Ⅱ ‑1コ ートジボワール中部地域の降雨量
dIEtat,WIinistёre de lIAgricutture et des Ressource Anilnales des statistiques Agricoles",Dttection de la ProgrammadOn。
‐
30‑
害 の リス クは極 めて低 い環境 にあ る とい える。
雨期 に降雨が集 中す るこ とで
,通
常 な らこの時期 の 日射量の不足が,心配 され るが,熱
帯特有 の降雨パ ター ンのた め,稲 の生育へ の影響 は比較的少 ない もの と考 え られ る。つま り,
1日 のなかで
1度
か ら数度,短
時間の激 しい降雨 (ス コール)が
あ り,終
日降雨が続 くこ とはまれ で あ る。 このため,雨
期 において も,稲
の生育 に必要 な 日射 が得 られ る環境 で あ る とい える。図 Ⅱ
‑2,I‑3で
示す よ うに年平均気温 は約 26°C,最
低気温 も20°Cを
割 り込む こ と はほ とん どな く,赤
道 に近 い こ とか ら 日長 の変化 が少 ない。12月
か ら1月
にか けて 日長 は最短 ■ 時間45分
となるが,6月
と 7月 の最長12時
間30分
と比較 して も,そ
の差 は45 分 で しか ない。 したが って水浜 が確保 されれ ば,ほ
とん どの水稲 品種 で通年作付 けが可能 とな るが,例
外 として,■
〜 12月 は鳥 に よる食害が深刻 となる可能性 が あるこ とか ら,一般 的に作付 けが避 け られてい る。収穫 時期 が鳥の繁殖期 に重 なる うえ
,乾
期 の終盤 で あsttri、v hatlレ皇
40
3S m]ximum 32 「B 2a
24gttH里
ユ
SttreJ F tt A tt J JA S O N D
図 Ⅱ
‑2コ
ー トジボワール中部地域の気温 日湿度 出所 :Weather Online Ltd,Meteorological Services由日照 時間 (2004).
123456789101112
月
図 Ⅱ
‑3コ
ー トジボ ワー ル 中部 地 域 の 日長 西経5°,耳ヒ緯7° か ら算出。0
6
2
B
4
0
6
2 4
3
3
2
2
2
刊
1
14
2
︵じ L Ш
注
ゴ 上
ゝ
ゝ 〆
′
〆
′ ゝ
ゝ
るこ とか ら他 の食料 が不足 し
,稲
に被害が集 中す ることが理 由 としてあげ られ るが,こ
の時期 を除けば
,作
期 に関す る制 限はほ とん どない と判 断 され る。次 に土壌条件 で あ るが
,図
Ⅱ‑4に ,コ
ー トジボ ワール の上壌分布 図を示す。一部 には Luvisol,Canbisol,Nidsol等 の,粘
土移動 が少 な く比較 的肥沃 な土壌 も存在す るが,多
くは土壌浸食 が激 しく農業生産力 に乏 しい Acttsolが 占める。他 のアフ リカ諸 国同様
,総
じて土壌肥沃度 は低い と判断 され るが
,内
陸小低 地 において湛水状態 が一定期 間継 続す る条 件 下 で は,還
元 が促 進 され る と同時 に粘 土含 量 の増力日が報告 され てお り (「第 Ⅳ章 ノミフ ォ ンにお ける小規模機械 化 の妥 当性」 にて詳述),ア
ップ ラン ドに比較 して,一
定 の肥沃 度 が確保 され てい る と考 えるこ とがで きる。 また}内
陸小低地 での灌漑稲 作は,高
収 量 品種 の導入 に伴 う化 学肥料 の投入 を前提 としてい るた め
,多
くは無施肥 で あ る陸稲栽培 に対 し,収
穫 量 が上壌肥沃度 に依 存す る割合 は比較 的低 い もの とな る。■ CamЫsЫs mOderat』y dev』oped bamyto davey sЫIs
■ OttysЫs:肘stosds,oorりdrttned or mgh watertaЫ e
■ Vertisoisi binck:crackina Ciays
Iボ' Re9osoisi soWs on coarset uncconso dmes sedimetts LtthosoisI LeptOsolsl sha‖ ow:stoney saWs
遷目 Sand dunesl sand 争 rDCk
Xerosolsi Vermosois:very weakly developed soils ll SattI Solondェt Solonchaki sa‖ne soWs
■ КastanOzems:Rend=haI Phaooェems humus‐rich 30‖S
■ Andoso皓:s9Ws devЫoped rrOm YOLa Cs m飢8 封S
■ F山 s』まso‖s dev』 oped from aHu 封mateWtts
■ Lu sds:NWsdsIPhnosoに:s にwnh day hcreadng st dewh Ferralsols:Acrisols:Low n rient holding capachy soWs Arenosolsl sandv 30iIS(alSO Pod=ols)
図 Ⅱ
‑4コ
ー トジボワールの上壌分布図 出所 :FAO Soil MapAfrica so‖ r¬ap leBend
‐
32‑
この よ うに
,コ
ー トジボ ワール 中部地域 の内陸小低地 は,土
壌肥沃度 においては恵 まれ てい る とはい えない ものの,こ
こで扱 った他 の 自然条件 に関す る限 り,灌
漑稲作 に不利 と な る要因は見つ か らない とい える。総合 的に判断 して,む
しろ灌漑稲作 を行 う上で好適 な 自然条件 を持 ち合 わせ てい る とい え よ う。2)栽
培 技 術(1)品
種コー トジボ ワール で作付 け されてい る水稲 品種の約
90%は ,1978年
にイ ン ドネ シアの B189b‑52‑8‑3‑1か ら選抜 され たBouakё189で
あるd食
味 に優れ,収
量 も高 く安定 してい る た め,急
速 に普及 し,現
在 に至 ってい る。 しか し,「
曲IV l)に 感受性 が ある等,病
害 虫 に弱い こ とと,鉄
過乗J害がでやすい といった特徴が あるため,新
た な主力 品種 の導入 が待 たれ てい る。現在,WARDAで
は,い
もち病抵抗性・鉄過乗J耐性・RYMV抵
抗性 。多収性 等 を備 え持 つ新 たな水稲 品種 を交配 。選別 し,順
次 リリー ス してい る段 階で あ る。(2)耕
耗 作 業機械化 の進 展 は
,一
部 の輸 出向け換金作物用 プランテー シ ョン回場 にお ける大型 トラク ター の導入 がみ られ るが,稲
作分野 では非 常 に遅れ てい る。 このた め現在 で も稲 作 の各作 業 は人力 が大半 を 占めてい る。 一部,耕
絃機 の導入 が見 られ るが,そ
れ らは援助 に よ り農 村 に供 与 され た ものや農 民組織 に よる共 同購入,あ
るい は小規模 な機械賃耕業者 の所有す るもので あ り,個
別農 家 が機械 を所有す る段 階には至 っていない。 また,機
械 賃耕や雇 用労働 が生業 として成 り立 ってい ない こ とか ら
,そ
れ らの市場 が発 達 してい る とはい えない が,農
民組織 が存在す る場合 を除 き,労
働力 を互い に提供 し合 うとい った共 同作業 の習慣 もない こ とか ら,特
に重 労働 とな る耕絃作業 においては,機
械耕B人力耕 を含 め,一
部雇 用労働 を利 用 してい る農 家 が多い。耕絃前 の必要 な作業 として
,除
車 があげ られ る。 三期 作 を行 う場合,収
穫後 か ら次期作 開始 までは数週 間で あるが,気
温 が高い ことに加 え,田 面 は落水後 も水分 を保有 してお り,また
,前
作肥料 の残効 も影響 しやす いた め,雑
草 は短期 間で著 しく繁茂す るこ ととな る。除草作業 は
,マ
シ ェ ッ ト働αじ力ι滅)と 呼 ばれ る長 ナ タが用 い られ,重
労働 の一 つ で あ る。人力 に よる耕 絃 作業 は
,ダ
バlDabα)2)と 呼 ばれ る鍬 の一種 が用 い られ る。農具 の発展 を ほ とん どみ るこ とがなかった西 アフ リカにおいては,稲
作 に限 らず農 作業 の大半 は このダ バ とマ シェ ッ トによ り行 われてお り,作業精度・ 能率 は極 めて低 い と言 わ ざるを得 ない(写 真 Ⅱ‑1, 2参
照)。伝 統的 に畜耕 は行 われ てい ない。 北部 の一部 地域 におい て牛耕 がみ られ るが
,中
部地域 では皆無 である。 ツエ ツエバエ に よる家畜の催 眠病 (ηψα%οsοttα)の汚染 地域 だ った こ と に加 え,牧
畜 と農耕 では,元
来 それ を生業 とす る部族 が違 うこ とが,畜
耕 の普及 を阻んで きた もの と考 え られ る。 中部地域 に も放牧 を営む部族 は少数 なが ら存在す るが,主
に北部(マ リ
)か
らの移住者 であ り,彼
らが 同時に農業 を営む ことはな く,家
畜 が農 業 に利 用 さ写真 Ⅱ
‑1ダ
バ写真 エー
2ダ
バ による耕猛作業 (Aboukro)れ てい る例 はない。畜耕 は長 い年月 を得 て育まれた部族 内の伝統文化 の一つ と位置づ ける こ とがで き
,そ
れ を一つ の技術 として捉 えて導入 を図 ることは容易ではないだ ろ う。 した が つて,将
来 的 に もこの地域 に畜耕 が普及す ることは考 え難い3)。(3)播
種・ 田植 え作 業調査 対象 と した
8地
区で は,約 50%の
農 民が直播 (散播)を
行 つてい る。移植 では,正条植 え
,乱
雑植 えがそれ ぞれ約25%で
あった。移植 を行 つてい る農 民の約90%が
,「生 産性 の 向上 (増収効 果)」 ,「移植 後 の栽 培 管理 の容易 さ (主に除草 作業)」 をそ の理 由 と して あげてお り,概
ね正 しい理解 が され てい る一方,直
播 を行 う農 民 の約80%が
,「技術‐34‐
。道具・資金面 の問題 」,「労働 力 不 足」 と回答 してい る。移植技術 が十分 に普及 してい ない と共 に
,農
村部 にお け る労働力 不足 が,栽
培技術 にまで影響 を及 ば してい るこ とが伺 える。共 同作業 が行 われ ることはほ とん どな く,移
植 の場合 は多 くを雇 用 労働 に依存す る こ とにな る。 また,直
播 。移植 栽培 共 に,塩
水選・催 芽等 の種子 の予措 はほ とん ど行 われ てい ない。(4)加
二月巴アジア諸 国に対 し
,ア
フ リカにお ける食料生産の停滞 が施肥量 に起因 してい ることは,度 々論 じられ る ところで あ る。 しか し
,コ
ー トヲボ ワール においては,1960年
の建 国以 降1970年
代後 半まで,政
府 の農 業保護 政策 に よ り,農
民 に対す る農 業用 資機材 に多額 の 補助 が与 え られ た こ とか ら,化
学肥料 の有用性 は広 く認識 され てい る。現在 で は一切 の補 助 が打 ち切 られ てお り,作
付 け前 に十分 な肥料 を購入す るだけの資本 を持 ち合 わせ ない農 民 も多 い なか,調
査 対象 の94%が
何 らかの形 で化 学肥料 の投入 を行 つてお り,地
域 差及び個人差 は大 きい ものの
,投
入 量 は施肥基 準4)の約80%に
達 してい る。一方 で
,堆
肥及 びその他 有機 物の投入 は一切行 われていない。前述 した よ うに畜耕文化 が普及 しなかった ことに加 え,稲
作 にお ける有畜複合経営 も全 くみ られ ないた め,現
在 まで堆肥 を投入す る機会・ 動機共 に見つ け出す ことがなかった と考 え られ る。地力保持 の観 点か ら堆 肥利用 は今後検討 され るべ き課題 となるが,現 在 の ところ,農 業普及機 関を含 め,
それ を推進 す る活動 はみ られ ない。 しか し
,一
部 の畑 作 において鶏糞 を利 用す る農 民が見 受 け られ るこ とか ら,水
田へ の普及 の可能性 が否定 され るものではないであろ う。(5)雑
草 日病 害 虫 防 除熱 帯 の灌漑稲 作 にお け る雑 草 防除の重要性 は
,改
めて論 じる必要はないだろ う。著 しい 速度 で成長す る雑草 に対 しては,作
付 け前 の耕絃 作業 の徹底 と,適
正 な水管理及 び除草作 業 に よる耕種 的防除が有効 で あ るが,こ
れ だけでは十分 な雑草 防除は不可能 で あ り,生
育 ステージ初期段 階にお ける除草剤 の使用 は不可欠 となる。 図 Ⅱ‑5が
示す よ うに,大
半 の農 民 は除草剤 を使 用 してい るものの
,除
草剤 の種類・ 使用 時期・使用量等 におい て基準 が 統一 され ていない こ とか ら,十
分 な効果 が得 られ てい る とは考 え難 い状況 で あ る。殺 虫剤 につ いて も同様 の傾 向にあ り,普
及員・農民共 々,薬
剤 に対す る知識 が乏 しい こ とに加 え,田曲
IV以
外 に深 刻 な病 害 虫の被 害 は報告 され てい ない こ とか ら,そ
の使 用 にはむ しろ慎 重 にな るこ とが求 め られ る。人力 に よる除草作業 も
,ほ
ぼすべての回場で行 われ てい る。一部農 民組織 が存在す る地 区で は共 同作業 に よ り実施 され るこ ともあるが,その他地 区では雇用労働 が圧倒 的に多い。しか し
,雑
草 の生育初期 の段 階で除草 が行 われ るこ とは少 な く,十
分 に繁茂 した後 に刈 り 取 られ る場合 が多い こ とか ら,非
効 率 な除草作業 となってい るこ とが指摘 で きる。鳥 に よる食 害 は