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現代社会の規範から距離をとる人びと

ドキュメント内 学位授与機関 同志社大学 (ページ 76-81)

第Ⅱ部 職業における「自由」の新たな可能性

4 おわりに

4.2 現代社会の規範から距離をとる人びと

ところで、フリーター問題に対してマートン流の解釈が有効であるとすれば、ここまで の議論で前提としてきた「やる気」「積極性」についても改めて考える必要のあることもま

10 こうした説明は大学生だけでなく、一般的なフリーターにも適用できると考えられる。したがって、本章の 分析は、現在おこなわれているフリーターに関する議論について上述のようなアプローチが可能であることを 示していることになる。

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た明らかだといえる。確かに、世間一般で広く認められている目標に向かって邁進してい る姿は、人びとの目に「やる気がある」と映るはずである。「やる気」のある姿は人びとに よい印象を与えることになるため、「目標を承認している=やる気がある=よいこと」とい う判断がなされることは少なくないと思われる。だが、このような印象や判断もまた一面 的なものであるという点には注意しなければならない。なぜならそこでの「やる気」とは、

見方を変えれば、「社会で広く承認されている目標」というひとつの価値に対するやる気で しかないとも言えるからである。

このように考えた場合、逃避主義に対応する非地位志向・フリーター許容に対する見方 もまた慎重でなければならないことがわかる。彼らは、いわゆる世間でのフリーター像に もっとも近く、何かに強いこだわりをもたない無気力ともいえる傾向を示している。それ ゆえ彼らは、現代の労働社会においては逸脱的であり、非生産的な立場に陥りやすい人び とだとみなされるかもしれない。しかし、そのことをもって彼らを「とるにたらない存在 である」と判断することは決してできない。なぜなら彼らはあくまでも「高い地位を得て 成功すること」というひとつの価値目標と手段から遠ざかっているだけに過ぎず、彼らが 本質的に無気力で消極的な「よくない」人びとであるかどうかはまだわからないからであ る。

表 4.8 自己効力感・独創性志向の違い

自己 効力感

独創性 志向

全体 3.394 3.860

【同調】地位・定職 3.485 3.845

【儀礼】非地位・定職 3.486 3.840

【革新】地位・フリ許容 3.380 4.000

【逃避】非地位・フリ許容 3.183 3.803

p 0.216 0.751

表 4.8に示されている結果は、こうした解釈が的外れではないことを物語っている。こ こで示されているのは「物事をやり遂げる自信がある(自己効力感)」、「自分のオリジナリ ティや独創性にこだわりたい(独創性志向)」という項目の類型ごとの平均値であるが11、 表を見る限りそれぞれの平均値に大きな違いのないことがわかる。すなわち、非地位志向・

フリーター許容の人びともまた他の人びとと同じくらい効力感や独創性を目指す意志をも

11 いずれの項目も、そう思うかどうかを5段階で訊ねたものである。分析に際しては、そう思うほど点数が高 くなるように値を調整している。

っているのである。

以上より、フリーターを志向する大学生に対するイメージ、ひいては世間一般での「フ リーター=やる気がない」というイメージが一面的かつ極端なものでしかなく、決して正 当なものだとは言えないことはもはや明白であろう。こうしたイメージから離れ、フリー ターになってもよいとする人びとのなかからさまざまな可能性を見出そうとする姿勢こそ、

今われわれに必要とされているスタンスなのではないだろうか。なぜなら、多様な観点か らあらゆる可能性を吟味し、幅広い知見を蓄積していくことによって、はじめて若年労働 者に対して的確なアプローチが可能になると考えられるからである。

[付記]

本章は、「現代大学生のフリーター志向に関する考察――自己効力感の視点から」(『評論 社会科学』87,95-116,2009)に大幅な加筆修正をほどこしたものである。

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フリーターおよび正社員の内部構成と意識

――若年労働者における異質性の検討

1 はじめに

第4章の分析によって、世間一般での「フリーター=やる気がない」という極端なイメ ージが必ずしも正当なものだとは言えないことが明らかにされた。フリーター化を許容す る人びとは決して一枚岩ではなく、そのなかには革新的な存在となりうる者たちなどがい る可能性が考えられるのである。ただ、第4章で議論の対象となっているのは、まだ実際 に職を得る段階にいたっていない大学生である。それゆえ、実際のフリーターたちが一枚 岩的であるどうかについては検討の余地が残されている。たとえば、フリーターとして働 く前は何らかの強い思いを抱いていたが、実際にフリーターとして働き世間の目にさらさ れるなかで、一般に言われるような「フリーターらしい」態度をとるようになる、といっ たこともあるかもしれない。現実にフリーターとなっている人びとたちもまた、一枚岩で はないのか。そうでないとすれば、どのような傾向を示す人びとがいるのか。そうした人 びとの存在が何を意味するのか。本章では、この点について検討していきたい。

なお、分析を進めるにあたっては議論をフリーターだけに限定せず、正社員も検討対象 に含める。第4章では、正社員を志向する人びとのなかに「儀礼主義」的な特徴をもつ者 がいる可能性も示された。このことをふまえるならば、実際の正社員の内部が同質的であ るかどうかについても検討しておく必要があるといえる。それゆえ、本章では若年労働者 全体を分析の対象とすることにした。

分析に用いるのは、2006 年に兵庫県民を対象としておこなわれた意識調査1のデータで

1この調査は、平成16~19年度科学研究費補助金による共同研究「新しいコミュニティの構想――東部被災地 域をフィールドとして」プロジェクトが実施したものであり、正式名称は「兵庫県民のコミュニティと生活に 関する調査」である(研究代表者:鵜飼孝造、同志社大学教授)。母集団は兵庫県在住の20~69歳の男女で、

市区町村を第1次抽出単位として無作為に抽出し、各地点の大きさに比例した対象者数を各市町村の住民基本 台帳より合計4000人抽出した。郵送法によって調査票の配布・回収を行い、有効回収数は1088人(有効回収率

27.2%)であった。データの詳細は次のとおりである(カッコ内は40歳未満の若年層(275ケース)に限定し

た場合の度数)

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ある。ただし、本章では便宜的に若年層を「40歳未満の人びと」と定めることとし、分析 の際はデータのうち20歳以上40歳未満のサンプルのみを使用する。また、本章では「若 年層(20歳以上40歳未満)のうち、学生・主婦以外で現在パート・アルバイト・派遣等 として働いている人びと」をフリーターとして扱うこととする2

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