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分析に使用する変数の構造

ドキュメント内 学位授与機関 同志社大学 (ページ 45-52)

3.1 「就きたい」職業の構造と職業クラスタの設定

ここから、実際の分析に移る。まず、分析に用いる変数の構造を把握することからはじ めよう。

まず、本章で用いる職業分類について。上で述べたように、大学生が自らの職業を選択 する際には、既存の職業分類にとらわれていない可能性が高い。これをふまえ、本章では 本人たちの職業選好を基準とする新たな分類を試みる。すなわち、本人たちが「就きたい」

と思う度合いの類似性から、職業を分類していくのである。

5例えば、大学生の就職と社会移動を論じた藤森(1983)は、学生の選択した職業のうち、技術者・管理的公 務員・事務従事者・教員・科学研究者・薬剤師・医師といった、代表的な職業に限定した議論をしている。

調査では、具体的な36の職業について、「就きたいと思う」「就いてみてもいいと思う」

「就きたくない」のいずれかを選んでもらっている。本章ではこの回答を本人の職業選好 度をあらわすものとみなし、これを用いたクラスタ分析による分類をおこなう。

図 3.2 クラスタ分析のデンドログラム

クラスタ分析をおこなった結果が、図 3.2および表 3.1に示されている。デンドログラ ムを示したものが図 3.2、得られたクラスタの構成を示したのが表 3.1である(ここでは、

素点をもとにしたユークリッド距離を指標とし、12の職業クラスタが得られた段階(距離

13.569)で結合を終了している)。以下で、分析の結果をおおまかにみていこう。

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表 3.1 職業クラスタの構成

職業クラスタ

1公務員系 国家公務員,地方公務員 2芸術系 デザイナー,作家・芸術家

3技能系 スチュワーデス・客室乗務員,理容師・美容師,料理人

4建築系 建築士

5プロフェッション系 医師,薬剤師,弁護士

6警察系 警察官

7事務系 営業・外交員,経理・人事・総務事務員,会計士・税理士 経営コンサルタント,会社役員

8製造・販売・サービス系 小売店の店員,飲食店の店員,食品製造,衣類製造 看護師,デイサービス・ホームヘルパー

9現場系 消防士,自衛官,バス・電車・タクシーの運転手,トラック運転手 大工,機械製造・組立・修理,建設工事,電気工事,ソフト開発 10農業系 農林漁業・畜産業

11教育系 小・中・高の教員,幼稚園教員・保育士 12研究系 大学教員・研究者

職業名

公務員系クラスタは、特に目立った特徴を示している。早い段階でクラスタが結合され た、すなわち選好がかなり類似しているのは、国家公務員と地方公務員、小売店員と飲食 店員、電気工事と建設工事などであった。これらそれぞれの職業に対する選好は、特に違 いが意識されずほぼ同じように考えられているようである。この中でも、公務員系クラス タは2つでクラスタを形成し、他とは最後まで結合されない。すなわち、公務員系クラス タの選好度は、他の職業クラスタの選好度とは大きく異なっていることを意味している。

芸術系クラスタは、デザイナーと作家・芸術家で構成されている。これらの職業は、一 般的な常勤職とは少し異なる職業、という点で同じように考えられている。技能系クラス タは、客室乗務員、理・美容師、料理人で構成されている。これらの職業は、仕事をする 上で専門的な技能・技術が重要になる、という点で類似していると考えられる。プロフェ ッション系クラスタは、医師、薬剤師、弁護士で構成されている。収入や威信が一般的に 高い、と考えられている職がまとめて1つのクラスタとなっている。事務系クラスタは、

事務職だけでなく役員などを含む多くの職業で構成されている。屋内での事務的作業をお こなう、という点で同じようにとらえられているようである。製造・販売・サービス系ク ラスタは多様な職業からなり、最もまとまりがないクラスタである。あえていうならば、

他者と関わり合いながら仕事をすることの多い職業として類似している、と考えられなく もない。

現場系クラスタの結果は、非常に興味深いものである。図 3.2のデンドログラムを見る と、まず建設工事・電気工事と機械製造、大工などいわゆる現業職が結合し、その次の次 の段階で消防士・自衛官という保安系職業と結合している。これらの職業に対する選好は、

現場での仕事という意味で同じようにとらえられている。ただし、食品製造・衣類製造、

警察官などは、現場系とは別のクラスタに含まれている。同じ現業職や保安職であっても、

食品・衣類製造と機械製造、消防士・自衛官と警察官では選好のされ方が異なっている、

という点が興味深い。

教育系クラスタは、小中高の教員、幼稚園教員・保育士で構成されている。これらは、

大学生の中で「学校」にかかわる職業、としてひとくくりで認識されているようである。

ただし、その中に大学教員は含まれない。ひとくちに「学校」といっても、大学はまた別 のものとして考えられているようである。

上記以外の建築系、警察系、農業系、研究系はそれぞれ単一の項目でクラスタが構成さ れている。大学生たちは、これらの職業を他とは異なる別のものとして考えているようで ある。

表 3.2 職業クラスタと日本標準職業分類・SSM 分類との対応関係

日本標準職業分類

(大分類)

SSM分類

(大分類)

SSM分類

(原純輔による分類)

専門的・技術的職業従事者 専門 専門的職業

管理的職業従事者 管理 管理的職業

事務従事者 事務 ノンマニュアル自営業主

販売従事者 販売 マニュアル自営業主

サービス職業従事者 熟練 大企業事務職(販売含む)

保安職業従事者 半熟練 中小企業事務職

農林漁業作業者 非熟練 中小企業販売職

運輸・通信従事者 農林 大企業熟練

生産工程・労務作業者 中小企業熟練

分類不能の職業 大企業半熟練・非熟練

中小企業半熟練・非熟練 農業職

職業クラスタ 日本標準職業分類

との対応 SSM分類との対応

1公務員系 事務従事者

管理的職業従事者 専門的・技術的職業従事者

事務、管理、専門

2芸術系 専門的・技術的職業従事者 専門 3技能系 サービス職業従事者 熟練、販売 4建築系 専門的・技術的職業従事者 専門 5プロフェッション系 専門的・技術的職業従事者 専門

6警察系 保安職業従事者 事務

7事務系 事務従事者

管理的職業従事者 専門的・技術的職業従事者

事務、管理、専門

8製造・販売・サービス系 サービス職業従事者 販売従事者

生産工程・労務作業者

販売、半熟練、専門

9現場系 保安職業従事者

運輸・通信従事者 生産工程・労務作業者 専門的・技術的職業従事者

事務、熟練、半熟練

10農業系 農林漁業作業者 農林

11教育系 専門的・技術的職業従事者 専門 12研究系 専門的・技術的職業従事者 専門

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次に、既存の分類と職業クラスタの対応関係を確認しておこう。表 3.2は日本標準職業 分類・SSM分類の構成と、職業クラスタとの対応関係を示したものである。対応をみてみ ると、職業クラスタでは日本標準職業分類における「専門的・技術的職業従事者」、SSM 分類における「専門」にあたるものが細かく分けられていることがわかる。また、職業ク ラスタでは SSM 分類における「事務」も細かく分けられている。一方、いわゆるブルー カラー職の分け方に関しては、職業クラスタのほうがかなり粗い。また、「管理的職業従事 者」「管理」に明確に対応するものが職業クラスタのなかにみられない点も特徴的である。

職業選好に基づく職業クラスタは、以上のような特徴をもったものである。以降でおこ なう職業選好の分析は、この職業クラスタの分類を用いて進めていくこととする。具体的 な変数の設定方法は次のとおりである。まず、元になる36の職業それぞれについて、「就 きたいと思う」と回答していれば 3 点、「就いてみてもいいと思う」と回答していれば 2 点、「就きたくない」と回答していれば1点という具合に得点を与える。そして各職業クラ スタについて、含まれる職業それぞれの得点を合計する。その合計点を含まれる職業数で 除し、最高3点、最低1点となるように調整したものを、各職業クラスタの選好度をあら わす得点とする。たとえば、国家公務員に対し「就いてみてもいいと思う(2 点)」、地方 公務員に対し「就きたいと思う(3点)」という回答をした場合、公務員系クラスタの選好 度得点は[(2+3)/2=]2.5となる6

6表補-1は、上記の方法で算出した選好度の得点の平均値を、値の高いものから順に示したものである。ラン ダムサンプリングではないため参考程度にとどめておくが、本章で用いるデータにおいては、公務員系クラス タが最も好まれており、現場系クラスタが最も好まれていない、という傾向がみられる。このような傾向には、

調査対象が地方国立大学の大学生であるという条件が大きく関わっていると考えられる。

表補-1 職業クラスタの選好度ランキング 平均値 標準偏差 度数

公務員系 2.375 0.699 264

教育系 1.934 0.699 264

研究系 1.867 0.806 263

建築系 1.798 0.762 263

芸術系 1.764 0.683 263

技術系 1.724 0.612 262

警察系 1.705 0.773 264

農業系 1.648 0.751 264

プロフェッション系 1.648 0.634 264

事務系 1.580 0.463 261

製造・販売・

サービス系 1.555 0.417 262

現場系 1.401 0.429 261

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