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実態面における違い

ドキュメント内 学位授与機関 同志社大学 (ページ 92-96)

第Ⅱ部 職業における「自由」の新たな可能性

4 フリーターおよび正社員の内部構成

4.3 実態面における違い

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が強く個人の生活を重視する傾向にあることをふまえれば、正社員よりもフリーターのほ うが政治に関して消極的であると予想される。だが、先に示された解釈を前提とすれば、

フリーターのなかでも逃避にあたる人びとは、その他の人びとよりも政治に関して何らか の行動をとっている可能性が考えられる。ここでは「友人と政治の話をするかどうか」と いう変数をとりあげ、そうした傾向が見られるかどうかを検討してみることにする8。調査 では「友人とよく政治の話をする」という項目ついて、あてはまるかどうかが5段階で訊 ねられている。この質問に対する回答をもとに、「あてはまる」である場合は5点…「あて はまらない」場合は1点という具合に点数を与えてスコア化したものを分析に用いる。

表 5.11 従業上の地位別にみた社会的ネットワーク・政治に関する行動の違い

(素点)

全体平均

(標準得点)

正社員 平均

(標準得点)

フリーター 平均

ネットワーク異質性:性別 0.686 0.007 -0.017 -0.149 ネットワーク異質性:地域 3.925 -0.034 0.081 0.614 ネットワーク異質性:職業 1.419 -0.210 0.507 4.451**

友人と政治の話 2.580 0.100 -0.242 -2.157*

N 189 134 55

** p<0.01 *p<0.05 † p<0.10

t

表 5.12 類型別にみた社会的ネットワーク・政治に関する行動の違い9

【同調】地位・定職 -0.138 -0.183 -0.311 0.061 0.318 -0.260 0.241 -0.357

【革新】地位・非定職 0.157 -0.357 -0.084 0.056 -0.514 -0.188 0.306 -0.533

【儀礼】非地位・定職 0.030 0.142 -0.084 0.181 0.050 0.307 0.871 -0.207

【逃避】非地位・非定職 0.226 0.010 -0.300 0.033 0.433 0.800 0.566 0.772

合計 0.007 -0.034 -0.210 0.100 -0.017 0.081 0.507 -0.242

F 0.724 1.612 0.487 0.173 2.143 1.520 1.452 2.378

** p<0.01 *p<0.05 † p<0.10 ネットワーク

異質性:

地域

友人と 政治の話 ネットワーク

異質性:

職業

ネットワーク 異質性:

職業

正社員 フリーター

ネットワーク 異質性:

性別

ネットワーク 異質性:

地域

友人と 政治の話

ネットワーク 異質性:

性別

上記4変数について、従業上の地位による違いみたものが表 5.11、正社員、フリーター のそれぞれで類型間での違い確認したものが表 5.12である。このうち表 5.11では、ネッ トワークにおける職業的な異質性について、正社員とフリーターで違いのあることが示さ

8政治に関する行動をあらわすものとしては、投票行動や政治活動の頻度のほうがよく用いられていると思わ れる。ただし、若年層はほかの年代よりもこうした行動をとる者の割合が低いのも周知の事実である。この点 を鑑み、本章では「友人との政治の話」をとりあげることにした。

9なお、表中に示されている平均値は、これまでの分析と同様に標準得点の値である。

れている10。また、政治に関する話題をするかどうかについても正社員とフリーターで違 いがみられており、フリーターよりも正社員のほうが政治に関する話をしているようであ る。

表 5.12では、注目すべき傾向が示されている。ネットワークに関する変数は、正社員、

フリーターのいずれも内部の類型間で有意な差は見られない。だが、その平均値について みてみると、フリーターのうち逃避にあたる人びとのネットワーク異質性の値は、その他 の類型に比べ目立って低いというよりも、むしろ高い傾向があるとわかる。特に性別的異 質性や地域的異質性の値が他のどの類型よりも高い(それぞれ 0.433、0.800)という点は 無視できない。

友人との政治の話については、正社員の場合は類型間の差がみられないが、フリーター においては差がみられる。フリーターのなかでも逃避にあたる人びとはその他の人びとよ りも値が高い。しかもその数値(0.772)は、正社員における各類型よりも高いものとなっ ている。表 5.11の結果をあわせて考えると、この傾向は興味深い。全体で見た場合、フリ ーターは正社員よりも政治の話をしていない。しかし、フリーターのなかでも逃避にあた る人びとは、正社員を含めた他の誰よりも友人と政治に関する話をしているのである。

5 おわりに

まとめよう。第4章では、フリーターの内部が一枚岩ではなく、その内部には大きな違 いのある可能性が示されていた。第4章で明らかになったのはあくまでも就職を控えた大 学生における傾向であったが、本章の分析によって、現実のフリーターにおいても似たよ うな傾向のあることが示された。現実に正社員として働く者やフリーターとなっている者 もまた一枚岩としてみなすことはできず、むしろそれぞれの内部には性質を大きく異にす る人びとが存在していると考えられるのである。こうした点から、第4章でおこなわれた 議論が、実際のフリーターについてもある程度有効であると考えることができよう。

さらに、フリーターのなかでも逃避にあたる人びとが示す傾向は重要な意味をもつこと

10 ただし、職業的異質性の結果に関しては注意が必要である。先に述べたとおり職業的異質性は、サポートネ ットワークに自分と異なる従業上の地位の者を多く挙げるほど、具体的には正社員の場合はフリーターを、フ リーターの場合は正社員を挙げているほど値が高くなるように設定されている(注7参照)。ただ、この方法で 異質性を測った場合、フリーターの方が正社員よりも高い数値が出やすい可能性も考えられる。現在の日本に おいてはフリーターよりも正社員の方が数は圧倒的に多い。このため、仮に個人が付き合う相手をランダムに 選んだとして、その相手は正社員であることのほうが多くなる。つまり、サポートネットワークにはそもそも 正社員が挙げられる可能性の方が高い、と考えることもできるからである。

この点を鑑み、ここではネットワークの職業的異質性がフリーターと正社員の間で異なる可能性のあること を指摘するにとどめ、より詳細な分析は別稿に譲ることにする。

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が明らかになった。彼らは、「世間一般の常識的な目」からすれば消極的な態度をとってい るように見える。だが、彼らはそうした「世間一般の常識」、すなわち現代の産業社会的価 値観に対しても懐疑的なのであり、それが中心となっている世界に対する「反抗」として 反競争主義的、反物質主義的、反都市主義的な価値観を志向しているともいえるのである。

その志向性は、意識の面だけではなく実態面にも垣間見える。彼らは閉鎖的で同質的なネ ットワークに埋もれているわけではなく、むしろさまざまな人びとに囲まれつつ、その人 びとと政治に関する議論を交わしている。彼らは社会に背を向けているように思われるか もしれないが、彼らが背を向けているのはあくまでも「現代」社会であり、彼らは自らが 望んでいる社会に対しては積極的な姿勢を示すとも考えられるのである。

第2章でも指摘したとおり、苦しい社会状況のなかで人びとが働かざるを得ない現在で は、特定の「望ましい姿」のみが過度に強調されてしまうことも少なくない。そのような 状況では、人びとがさまざまな可能性に対して寛容であることは難しく、その非寛容さは 時に「逃避」的な人びとに対する冷たい態度としてあらわれることにもなる。だが、本章 の分析結果をふまえれば、むしろ問題とすべきは人びとをして冷たい態度をとらしめる現 代社会の狭小なモノサシのほうかもしれない。このような視点の転換、それこそが労働世 界をとりまく人びとやフリーター問題を考えるわれわれに今求められていることなのでは ないかと筆者は考える。

第4章、第5章を通して、現代のフリーター問題に焦点をおきつつ、職業における「自 由」について考えてきた。次章以降では、本研究のもうひとつの重要課題である職業にお ける連帯について考察していくことにしよう。

[付記]

本章は、「若年層における典型職・フリーターの内部の差異」(『同志社社会学研究』14,1-15,

2010)に大幅な加筆修正をほどこしたものである。

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