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第 4 章 クリマアトラスと「パッシブポテンシャル」のみなおし 51

IV.5 熱損失係数を比例定数とするポテンシャル

熱損失係数とは、住宅の断熱性能を数値的に表したもので、値が小さいほど断熱性能が 高いことを表し、一般的に「Q値」といわれている。熱損失係数は、外壁や天井・床など の各部位の熱の逃げる量(熱損失量)を計算し、各部位の熱損失量を合計したものを延床 面積で割って(4.2)式で計算する。熱損失係数を計算する場合、(財)建築・環境 省エネル ギー機構発行の「住宅の次世代省エネルギー基準と指針」4-17)という基準書に、詳しく計 算方法や規定などがかかれている、熱損失係数を計算する場合にはまずこの本を一読する 必要がある。この本は内容が専門的で、ページ数も多いため、ほとんどの専門家は熱損失 係数の計算をあきらめてしまっているというのが当時の状況であった。熱損失係数の計算 は、計算量が多いために時間がかかり、特に慣れない方が計算すると、省エネ基準の基準 書などを何度も読み直したり、計算を間違えて計算し直したりすることが多くなるため、

さらに時間がかかっていた。熱損失係数の場合、計算自体に時間がかかることもあるが、

計算量が多いため計算書などの書類の作成にも時間を要した。また、計算が間違っていな いかをチェックするにも多くの時間を必要とした。そのため、熱損失係数の計算は人件費 がかかるとして、熱損失係数の計算をしないという設計者が後を絶たなかった。また「熱 損失係数」の計算では、竣工後に測定でしか把握することができない建物の気密性能に関 わる自然換気回数について「住宅の種類に応じた自然換気回数」が計算に必要となり、そ の基準も示されていたが、気密性能を床面積1平方メートル当たりの相当隙間面積で表示 し、その値が1.0(cm2/m2)以下のものを気密住宅と定義していた。

[各部位の熱損失量] = [熱貫流率]×[面積]

[熱損失係数] = [各部位の熱損失量の合計] + [換気の熱損失量]/[延床面積] Q= (Σ(AiKiHi) + Σ(LfiKliHi+AfiKfi) + 0.35nB)/S

(4.2)

ここで、

Q : 熱損失係数

Ai : 外気または外気に通じる床裏・小屋裏もしくは天井裏に接する第i部位の面積 Ki : 第i部位の熱貫流率

Hi : 第i部位または第i土間床等の外周の接する外気等の区分に応じて掲げる係数 Lfi : i土間床等の外周の長さ

Afi : 第i土間床等の中央部の面積 Kfi : i土間床等の中央部の熱貫流率 n : 住宅の種類に応じた自然換気回数 B : 住宅の気積

S : 床面積の合計

「熱損失係数」は計算が複雑だが、断熱性能を住宅全体で判断することができ、熱貫流 率や熱抵抗値では判断できない各部位の断熱性能のバランスも把握することができる。

小玉らはパッシブヒーティングの導入しやすさの指標として南鉛直面全天日射量(1) を暖房デー(度日)で除した値を採用し、それに基づいて日本の地域区分をおこなった

4-3)。除数をラベリングに採用する事例は多く、図4.12は「CASBEE」の評価結果表示 シートであるがここに提示される建物の環境効率「BEE」は、(4.3)式で求められる。 

建物の環境効率(BEE)Q(建築物の環境品質)L(建築物の環境負荷)     (4.3) この「BEE」も、環境への負荷(Load)を分母として、環境建築としての質(Quality) 分子とした2次元マトリックスに結果がラベリングされる。「CASBEE」における「BEE」 の評価は、(Quality) のポイントが増えるとマトリックス上でY軸プラス方向に上がり

(Load)のポイントが増えるとマトリックス上でX軸プラス方向に移動する。評価はマト

リックス上に設定されていて最も高い評価は「S」ランク、以下「AB+BC」とな るが同じ環境品質を持っていても、環境負荷が大きいとマトリックスにおける評価が右に 移動して「BEE」が低くラベリングされる。この分子は、既往研究のPSP評価における

「1月の南鉛直日射量」に対応し、分母は暖房デグリーデーに対応する。既往研究のPSP によるラベリングでは、南鉛直面全天日射量(1月)が多ければ、マトリックス上で Y軸 プラス方向にポイントされ、Y軸上の同じレベルにあっても、暖房デグリーデーが多けれ ば、つまり気温が低ければX軸プラス方向に移動する結果、ラベリングは低く評価される ことになる。そもそも暖房デグリーデーが0(度日)つまり暖房を必要としないところに 豊富な南鉛直面全天日射量(1)が得られたとしてもそれは冷房負荷を大きくすること にしかならない。また暖房デグリーデーが多く寒いところであれば、日射量がごくわずか であってもそれを得ることは確実に暖房負荷を少なくすることにつながり、さらにそのこ とは環境負荷を少なくする方向に寄与する。

暖房デグリーデー(度日)については、DD18-18 を採用する文献4-18)と、DD14-14 採用するもの4-19)と、国内に統一された見解は見あたらない。小玉らが省エネ地域区分 図の作成に使用した気象データについては開示されていないため、本論では、AMeDAS 1980-2000データで、DD18-18DD14-14の双方を分析した。ただし、全地点の表示で

4.12 CASBEE評価結果2.1 建物の環境効率(BEEランク&チャート)

はデータが多すぎて判別が煩雑となるため、AMeDAS 842地点から、代表都市59地点

(東北6県の各3大都市(特に日射に恵まれない傾向の見られる山形県新庄市を含む))で 作成した図表を掲載する。気象分析を前提とした「代表都市」の選択については、鎌田の

「QPEX.ver.3.40」マニュアルの選定を参考とした。

V 東北地域のパッシブ気候図に向けた分析の視点