• 検索結果がありません。

第 4 章 クリマアトラスと「パッシブポテンシャル」のみなおし 51

V.3 新しいクリマアトラスの視点

日本列島 4 島のクリマアトラスを描くにあたり、暖房度日が最も多かったのは、

AMeDAS 113の北海道・糠平、5324度日、最も少なかったのは、AMeDAS 369の東京 都・父島で、64.6度日。図4.18は、このデータを0〜6,000度日の1,000度日刻みで描 いた。同様に東北地域の最大は、AMeDAS 178の八甲田・酸ヶ湯の4,897度日、最小は

AMeDAS 308の福島県・小名浜の2,035度日であった。前述のように、東北地域は「省

エネルギー基準による地域区分」のII地域〜IVa地域に属し、その範囲は暖房度日数で、

2,0005,000度日に及ぶが、主要都市は、2,0003,500度日の範囲に位置している。図 4.19、図4.20は、暖房度日DD18-18のクリマアトラスの尺度を2,0006,000度日の範 囲に500度日毎に分類したものである。このように東北地域だけに範囲を絞って相対的 な比較を行うと、東北地域では比較的温暖な、イチゴ栽培で知られる山元町や、福島県で 最も人口の集中する温暖な小名浜、青森県でも温暖だとされている八戸、日本海側の沿岸 地域のおだやかな気候の印象をきめ細やかに表現することができる。暖房度日数は、暖房 が必要となる時間長さを表し、冬の厳しさの目安を示すことができる。本論ではその暖房

4.18 年間暖房度日によるクリマアトラスDD18-18 (0-5600度日@700度日)

期間における「パッシブソーラーヒーティング」のポテンシャル評価を検討している。第 4I節で既往研究におけるポテンシャル評価の実例を紹介した。また、東北地域では、

未だ暖房が必要な春先に、南鉛直面日射量よりも南傾斜屋根面日射量のほうがはるかに大 きく、この時期の太陽熱集熱を暖房に使うことによって、春の訪れを早くする「パッシブ ソーラーヒーティング」の可能性に触れた。実際に南面開口部からのダイレクトゲインを 期待しても、都市部の住宅系用途地域では、建築基準法の集合規定を順守しても、太陽 高度角の低くなる冬季には、1階の南面の日射が隣家に遮られてしまう例が多く散見され る。しかし、そのような状況でも南傾斜屋根面での日射取得は十分に可能である。

図 4.19 は 、3 月 の 南 鉛 直 面 日 射 量 (kcal/month) と 南 4 寸 傾 斜 屋 根 面 日 射 量 (kcal/month) を500〜1,400kcalの同一のスケールで比較したものである。3月には太

平洋側で700(kcal/month)を超える南鉛直面日射量が見られるが、南4寸傾斜屋根面日

射量に着目すると、太平洋側では、1,100(kcal/month)を超えるところがあることが解 る。また、4月になると南鉛直面日射量は、青森県では3月よりもごくわずかに増大する が、太平洋側では、ほとんどの地域で3月よりも日射量が少なくなる傾向がみられること がわかる。南4寸傾斜屋根面日射量については、3月次よりも4月に増大する傾向が東北 地域全域に見られ、青森県の下北半島や津軽半島に、東北地域では温暖なことで知られる

4.19 南鉛直面日射量3月(左南4寸傾斜屋根面日射量3月(右)

4.20 南鉛直面日射量4()4傾斜屋根面日射量4月(右))

いわき市よりも南4寸傾斜屋根面日射量の多い地域があることが解る。

小玉、武政らが、「暖房度日に対する南鉛直面全天日射量(1月)の比」として定義した PSPPassive Solar Potential/パッシブ地域係数)は、全国規模で太陽熱利用のパッシ ブソーラーシステムの普及に一定の役割を果たしてきたと言えるが、地域がイニシアティ ブをとって、地域政策により国の政策に協力する時代にあっては、地域毎にきめ細やかな ポテンシャルを分析してその有効活用を図る方策を模索することで、かつてマイクロクラ イメイトの差異が、地域の民家の個性的でヴァナキュラー(土着的・自然発生的)な集景 を創りえたように、全国に蔓延する個性のない画一的統一的デザインではなく「地域らし さ」をもった豊かな景観を作り出すことにつながろう。