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第 3 章 省エネ住宅に求められる性能 40

II.1 スイス「ミネルギー」

スイスには「ミネルギー」という住宅性能のラベリングシステムがある。省エネ性能を 数値化してラベリングをしたうえで、その性能が一般に公開されている。スイスのミネル ギーにはさまざまな仕様が許されており、共通して求められていることは従来の家に比べ て、最大で60%までエネルギーを節約(40%減)することである。ミネルギーのラベリ ングは、Minergie、Minergie-P、Minergie-Aの3つのカテゴリーに大きく分かれており 2002年に基準化されたMinergie-P はドイツの「パッシブハウス」3-4)クラスの建物で、

さらに、Minergie-P ECOMinergie-Pの性能に加えてエコロジカルな建材を使用する ことになっている。Minergieの建設基準は、品質、快適さ、エネルギーの面で平均以上の 要件を持つビルダーとデザイナーを対象とし、MoPEC 20143-5)の要件と比較して、エネ ルギーバランスは20%より優れている。Minergie-Pは、並外れた建物のエンベロープと 最適な快適さを特徴とする低エネルギーの建物を示している。Minergie-Aの建物は、消 費するよりも多くのエネルギーを生成するため、快適な生活と最大限のエネルギーの独立 性を兼ね備えている3-6)。ミネルギー規格には、特別な建材や技術の使用が定められてい るわけではなく、冬に温めた室内の空気が失われないための断熱強化と夏に十分な温度調 節ができるよう適当な換気設備の設置が求められているだけである。スイスは内陸国でも 日本と同様に、化石燃料資源に恵まれない国で、石油など一次エネルギーの60%は輸入 に依存している。石油は、スイスの最も重要なエネルギー源である。政府は、2020年ま でに化石燃料の消費を20%削減し、再生可能エネルギーの割合を50%まで引き上げる 目標を立てている。水と木材以外、スイスには天然のエネルギー資源がない。そのため、

石油、天然ガス、石炭、核燃料など80%のエネルギー資源を輸入している。2015年、水 力発電の割合は59.9%を占め、国内に5つある原子力発電所による発電が33.5%を占め ていた。代替エネルギー(風力、太陽、ゴミ焼却、バイオガス)の割合は、約6.6%であ る。1950年代からスイスのエネルギー消費量は、5倍以上に増加した。最も多くのエネ ルギーを使っているのは、全体の 3分の1以上を占める交通である。原油は、最も重要 なエネルギー源(41.9%)であり、原子力エネルギー(22.3%)、水力(13.1%)、ガス

(11.0%)がこれに続く。スイスのエネルギー政策は、低価格で環境に優しいエネルギー を保証し、安定供給を確保することを目標としている。この目標を達成するため、特に 1990年の憲法条項、1998年に可決されたエネルギー法、2001年に公表されたプログラム エネルギー・スイス がある。 エネルギー・スイス は、2002年までにCO2の排出と エネルギー消費を1990年の状態から20%削減することを目標としている。加えて、再 生可能エネルギーの割合を20102020年の間に50%増やすことも目指している。2008 年から化石燃料(石油、ガス、石炭)によるCO2 排出量は増加している。2011年に福島 で起きた原子力発電所の事故を受けて、スイスでは、 エネルギー戦略2050 の名の下に 原子力によるエネルギーを徐々に減らしていくことを目指したエネルギー転換が進められ ている。世界経済フォーラム(WEF)が2019325日に発表した2019年の「エネ ルギー移行指数」で、スイスは115カ国中第2位に浮上した。エネルギー効率の投資額で は首位に立った3-7)。指数は各国のエネルギー転換の効率性や、持続可能で手ごろな価格 の電力システムに移行する準備状況などを評価した。1位はスウェーデンで、スイスは前 年2位だったノルウェーを抜いた。4位にフィンランド、5位にデンマークが続き、欧州 諸国が上位10カ国を独占した。欧州以外ではウルグアイが11位、日本は18位だった。

ジンバブエ、南アフリカ、ハイチが下位3カ国となった。主な二つの評価軸のうち、スイ スは電力システムの効率で第3位、エネルギー移行の準備状況では第4位だった。電化率 や国内総生産(GDP)におけるエネルギー関連補助金比率など、エネルギー効率化への投 資では第1位だった。

スイスの家庭用暖房から発生する化石由来のCO2 排出量は、家庭のエネルギー効率が 改善したことから、その期間に人口が 13%増加し、かつ一人あたりの平均居住面積も増 えているにも関わらず、20002013年にかけて減少している。もし一般家庭における省 エネ対策が進んでいなかったとしたら、調査対象期間中に各家庭から排出されるCO2 の 量は、実際の排出量を20%近く上回っていたはずである。ミネルギーは「ミニマル・エ ネルギー消費 ( Minimaler Energieverbrauch ) 」から生まれた言葉で、光熱費を従来の 半分以下に抑える省エネ建築用スタンダードである。「今の住宅はエネルギーを使い過ぎ。

エネルギーはもっと節約できるはず」としてチューリヒ州建設省のエネルギー部門を率い ていたルエディ・クリージ氏が、およそ10年前「ミネルギー( Minergie ) 」コンセプト を考案した。当時のスイスでは、消費エネルギー全体の1/3以上を住宅の暖房・給湯エネ ルギーが占めていたといわれる。ミネルギー政策は、スイス国内で使われる総エネルギー の約1/3 を占める暖房・給湯エネルギー量を40%削減することができる。つまり、スイ ス国にとっては、総エネルギーの13%削減を可能とする省エネ政策であったと評価でき る。続けて国策としての省エネ政策については、カナダの R2000政策についても触れて おきたい。

3.1 各国のエネルギー転換効率指数(2019)3-7)

3.2 玄関に掲げられた MINERGIE-Pのエンブレム(左)

建設中のMINERGIE-P住宅(著者撮影 2011.6