第 4 章 クリマアトラスと「パッシブポテンシャル」のみなおし 51
IV.3 暖房期間の把握
本項では、「暖房期間」における「太陽熱利用」を論じる。ここで、「暖房期間」につい ては、以下のように定義した。一般に、日平均気温が15℃を超えると暖房を必要としな くなるとされている。しかし実際の気候は、線形に変化することはなく、春先に初めて平 均気温が15℃を上回る日が来ても、三寒四温、寒の戻りなどと言われるように、平均気 温が 15℃を下回らなくなるまでにはある程度の期間を要している、AMeDAS 176弘前 の標準気象データを参照すると、4月末に初めて平均気温が15℃を超えているが、再び 15℃を下回る日が続き平均気温が15℃を下回らなくなるのは6月に入ってからと、実に 1ヶ月以上の期間を要している。また、夏が過ぎて秋の終わりに初めて平均気温が15℃ 以下になる日が来るが春先と同様に15℃を上回らなくなるまで同様に1ヶ月近くかかっ ている。冬季の暖房期間の設定方法の説明のため、Exploratoryで読み込み、内包される
多項式(GAM)トレンドラインによって図4.4を作成した。
気象分析によって、東北地域全域についてその暖房期間を把握した。次に、当該期間内 における南傾斜屋根面(4寸勾配)日射量を算出して、利用可能な太陽熱を評価し、その ポテンシャルを可視化する。地域毎に、ビジュアルにパッシブソーラーポテンシャル(以 下PSPと記述)を把握できるよう、地域毎の気象概況分析に、南鉛直面日射量(小玉ら がPSP分析に採用)、水平面日射量(張晴原が中国における住宅のパッシブヒーティング
図4.3 弘前における鉛直面各方位の日射量と南傾斜屋根面 (3, 4, 5, 7, 10:10) 日射量 AMeDAS 176弘前 EA気象データ
ポテンシャルの地域性の検討に採用)、の二つに加えて、一般的な傾斜屋根面での太陽熱 集熱を想定して、南傾斜4寸勾配屋根面日射量の3つを表示し比較を行った。
AMeDAS 176弘前では、年間を通して5月の日照時間が最も多く、未だ暖房を必要と
するこの時期の太陽熱はとても貴重であり、南傾斜4 寸勾配屋根面日射量は、南鉛直面 日射量の2倍以上であることが確認できる。図4.5は、EA気象データ(1981〜2000)に 基づいて「気象概況」を把握するために作図したものである。ビジュアルに傾向を比較す る目的で、計算結果のbitmapグラフ表示に加えて以下のものを画像処理によって追加し た。○1 暖房期間について日平均気温15℃以下の範囲を赤で網掛けした。○2 冷房期間につ いて日最高気温が 25℃を超える範囲を青で網掛けした。計算結果については、太青線で 日平均気温、上下に細青線で日最高、最低気温、太茶色で土中温度(1 m)、細赤で月の日 照時間、太黄緑で月平均相対湿度、太緑で月平均風速を表示し、棒グラフについては、青 で降水量、ピンクで南鉛直面積算日射量、濃オレンジで水平面全日射量、淡オレンジで、
今回あたらしい指標として提案する「南傾斜4寸勾配屋根面全日射量」を表示した。分析 の結果、東北地域の各都市に共通して、3〜4月の、未だ暖房期間である春先に、全日射量
図4.4 AMeDAS 176弘前 暖房期間の把握 EXPLORATORY多項式(GAM) トレンドライン
図4.5 弘前における月次気象データ(AMeDAS 176 弘前EA気象データ) ピンク:垂直壁南日射量 濃オレンジ:平面日射量 淡オレンジ:南4寸傾斜日射量
図4.6 青森における月次気象データ(AMeDAS 171 青森EA気象データ) ピンク:垂直壁南日射量 濃オレンジ:平面日射量 淡オレンジ:南4寸傾斜日射量
図4.7 八戸における月次気象データ(AMeDAS 181 八戸EA気象データ) ピンク 垂直壁南日射量 濃オレンジ 水平面日射量 淡オレンジ 南4寸傾斜日射量
は最大となり、これに伴って「南傾斜4寸勾配屋根面全日射量」も年間の最大値を示すこ とがわかった。この日射量のポテンシャルについては、東北地域で1月の「南鉛直面日射 量」を指標とする限り見落としがちな気候因子である。
図4.5〜4.11は、青森の三大都市と、東北のほかの5県の県庁所在地の標準気象デー タに基づいて「気象概況」を把握するために作図したものである。ビジュアルに傾向を比
図4.8 秋田における月次気象データ(AMeDAS 136 秋田EA気象データ) ピンク 垂直壁南日射量 濃オレンジ 水平面日射量 淡オレンジ 南4寸傾斜日射量
図4.9 山形における月次気象データ(AMeDAS 274 山形EA気象データ) ピンク 垂直壁南日射量 濃オレンジ 水平面日射量 淡オレンジ 南4寸傾斜日射量
較する目的で、計算結果のbitmapグラフ表示に加えて以下のものを画像処理によって追 加した。○1 暖房期間について日平均気温15℃以下の範囲を赤で網掛けした。○2 冷房期間 について日最高気温が 25℃を超える範囲を青で網掛けした。計算結果については、太青 線で日平均気温、上下に細青線で日最高、最低気温、太茶色で土中温度(1m)、細赤で月 の日照時間、太黄緑で月平均相対湿度、太緑で月平均風速を表示し、棒グラフについて
図4.10 仙台における月次気象データ(AMeDAS 255 仙台EA気象データ) ピンク 垂直壁南日射量 濃オレンジ 水平面日射量 淡オレンジ 南4寸傾斜日射量
図4.11 福島における月次気象データ(AMeDAS 283 福島EA気象データ) ピンク 垂直壁南日射量 濃オレンジ 水平面日射量 淡オレンジ 南4寸傾斜日射量
は、青で降水量、桃色で南鉛直面積算日射量、濃オレンジで水平面全日射量、淡オレンジ で、今回パッシブソーラーヒーティングポテンシャルの分析にあたらしい指標として提案 する「南傾斜4寸勾配屋根面全日射量」を表示。分析の結果、各都市に共通して、3〜4 月の、未だ暖房期間である春先に、全日射量は最大となり、これに伴って「南傾斜4寸勾 配屋根面全日射量」も年間の最大値を示すことがわかる、この日射量のポテンシャルにつ いては、東北地域の日本海側で「南鉛直面日射量」(とくに1月)に着目する限り見落と しがちな気候因子である。一方、クリマアトラスでは、地域の全域を扱ってビジュアルな
示されることになる。東北森林管理局管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県及び山形県)
の土地面積に占める森林面積の割合は70%(全国平均66%)で、その内訳は民有林(私 有林及び公有林)207万3千ha、国有林164万haとなっている。また、管内土地面積に 占める国有林の割合は31%(全国平均20%)、管内の森林面積に占める国有林の割合は 44%(全国平均 30%)となっており、いずれも全国平均を上回っている。このように、
非居住地面積の広い東北地域にあって、本来居住のための用をなさない広大な面積にポテ ンシャルの低さが示されることは、ビジュアルな印象に負の効果をもたらすもので、住宅 の設計者、あるいはその居住者にその地域の利用可能な自然エネルギーのポテンシャルを 印象的に示す方法としては一考の余地がある。今回、ケーススタディとして分析に抽出し た各県の主要都市(県庁所在地)と、それを含む各県の3大都市の居住人口シェアについ ては以下のようになっている。
青森県、弘前市・青森市・八戸市の3都市で青森県の人口の52.8%4-15)
岩手県、盛岡市(岩手県の人口の22.9%) 一関市・奥州市の3都市で52.8%4-15) 秋田県、秋田市(秋田県の人口の30.6%) 横手市・大仙市の3都市で47.8%4-15) 宮城県、仙台市(宮城県の人口の45.9%) 石巻市・大崎市の3都市で57.9%4-16) 山形県、山形市(山形県の人口の22.4%) 鶴岡市・酒田市の3都市で43.4%4-16) 福島県、福島市(福島県の人口の17.0%) いわき市・郡山市の3都市で48.4%4-16)