• 検索結果がありません。

滞納の強制執行と執行停止の関係

ドキュメント内 わが国の税務行政の機能とその展開 (ページ 85-96)

1 . 滞納処分の執行停止の厳格性

税務当局は、滞納者の財産調査などを行った上で財産がないと判断された場合、滞納処 分の執行停止を行うことができる。滞納に対して法規定は差押などの滞納処分を行うこと が原則であるが、納税者の経済的環境の変化などに考慮し、その執行を停止することがで きるとよみとれる。その行使は差押などの強制処分を行うために必要な納税者保護制度で あるといえ、徴収業務の中で重要なものとなっている。国税庁も「滞納処分の執行停止に 該当する事由がある場合、納税緩和措置の趣旨からも、事務の効率化の観点からも遅滞な

く執行停止を行うことに努めるJという指針を出している660

後にみるように納税者保護制度としては、その適用件数などから滞納処分の執行停止が 主なものであるが、独自の条例による減免・猶予を行っている団体も散見される。地方税 法上の厳格な要件にしばられない分、柔軟な納税者保護を行えるメリットがある。

滞納処分の執行停止の判断基準は以下の 3点である。

①無財産(地方税法第 15条7第 1項第 l号)

②生活困窮(同第 2号)

64 p.9参 照

65 p.9参照、

66平成 12年度国税庁事務運営指針による。

85 

③所在不明(同第3号)

滞納処分の執行停止の最大の特徴は、滞納処分の執行停止をうけた滞納者の経済状況が 3 年間継続することにより、自動的に不納欠損処分とすることができる(地方税法第 15条 7 第 4項)ことである。不納欠損処分は本来望ましいものではないが、問項目による処分は 厳格な財産調査を経たものとして考えられ、徴収努力を尽くした後のやむを得ない処分で

あると解されている。

そのように徴収業務のフローで考えると、滞納処分の執行停止は大変重い判断というべ きであり、その執行には規定に適合するための客観的証明が必要であり、また不納欠損処 分の要件である 3年継続も、本来は再度の財産調査が必要である。もちろん個別案件がこ の規定に適合するかは税務情報の守秘義務が絡み67、議会に詳細が報告されるわけで、はなく、

各団体内部の基準と判断によるしかないのが現状である680そこで本報告では徴収業務とし て滞納処分の執行停止の量のみならず、法根拠別に分類することなどにより適切な執行が 行われているかを考察することとする。

2 . 調査の概要

徴収業務として重要な差押などの滞納処分、滞納処分の執行停止について量的または適 切さの考察を行うため、国体ごとの違いなどをみるため、近畿圏2府4県の人口 15万人以 上市 32市の数値を収集した。本来は規模の大小にかかわらず市町村の数値を分析すべきで あるが、これまでの研究の中で小規模団体は徴収業務が比較的行えていないと推測されて いたため、今回はこれまで研究がなされてこなかった納税者保護制度の実態をみることを 主眼としたため大規模団体に絞って調査することとした。近畿歯2府4県に絞った理由は、

徴収業務に関する資料は不存在あるいは開示不可となる可能性も大きく69 諌査の趣旨説明 を十分行った上で、資料提供の形式を取らねばならないことも考えられたためである。

調査した項目等は以下のとおりである。

‑ 調 査 時 期 平 成21年 11月"‑'12月

・調査対象 近畿圏 2府 4県内 32市(人口 15万人以上)

・調査手法 条例に基づく情報開示請求または資料提供依頼(直接訪問、郵送依頼)

・調査項目 ①滞納処分の執行停止額(地方税法第 15条の 7)

②滞納処分の執行停止の地方税法根拠別額(地方税法第 15条の 7第 ト3号)

③徴収猶予額(地方税法第 15条)

④上記以外の分納・延納額(納付誓約書を取っているものと定義)

67税務情報は地方公務員法第34条 1項、地方税法第22条により二重の守秘義務が課され ていると解されている。

68要綱として基準を定めてある団体としては、盛岡市の「滞納処分執行停止に関する要綱j

(平成 19年 U月25日)などがある。

的情報開示請求制度は、存在する資料を公開するということであり、新たに文書を作成す るといった場合には適用されない。

⑤滞納処分実施状況(差押・参加差押・交付要求)

※① ⑤とも平成 16'"'"'平成 20年度数値を誇求

その公開状況は以下のとおりである。

近畿圏内 32市(人口 15万人以上)中

・税務課などの HPで公表 4団体

・「市税概要J

r

税務統計jなどで公表 3団体

‑情報開示議求により公開 .資料提供による公開

17団体 8団体

‑情報開示請求不可、資料不存車、公表不可など 0団体

※数値の平準化のため、過去5年間分を請求したが、過去の一部分が存在しない団体で も一部分でもあれば資料存在とみなしている。

同時に国税庁へも同項目の情報開示請求を行った。国税徴収法は徴収業務についての規 定が地方税法とほぼ同ーであるため、指標として活用する意図である。ただし税目や申告 制・賦課制の違いもあるため、あくまでも参考値であることに注意が必要である口例えば 今回の調査項目においては、分納・延納について地方税法の規定にはないが、相続税法な どには延納の規定があるため、国税においては法規定に従った手続きということができる。

また今回は税目別の考察は行わず、団体が徴収すべき税すべてを対象にした。ただし道 府県民税など市町村が徴収を嘱託されているものや国民健康保険税など税として徴収して いる保険料は除いた。団体を比較検討するに当たって、各団体の税収構造または経済状況 を考慮、し、税目別に検討することが本来であるが、地方税法上の規定や徴収の現場におい てその区分けは特に意識されていないと思われることから、あえて考慮は行わず市町村税 全体として調査を行った。

差押などの滞納処分は徴収業務において、直接徴収率と収納額につながる重要な徴収業 務である。しかし実際にどの程度行われていのかは国税・地方税ともに一般に広く公表さ れていないことが現状である。滞納処分とは差押・参加差押・交付要求を含む。参加差押・

交付要求とは滞納者の財産をすでに先取差押されていた場合に行うもので、先取差押者が 他の地方自治体または国税の場合を参加差押、それ以外の場合を交付要求という。滞納処 分は差押をはじめ全額が収納につながるわけではない。むしろ参加差押・交付要求などで 収納されるものはごく少額であるとされているが70、それを行うことにより時効の中断や滞 納処分の執行停止の客観資料ともなるため、徴収業務の中では重要なものであると考えら れ、団体の徴収努力をはかる指標として有効であると判断したため、今回の調査では差押・

70今回の調査で実際にどの程度収納できるものかを調査するで、交付要求でも 30%収納で きている団体も存在することがわかった。ほとんど収納できないとは一概にはいえない。

87 

参加差押・交付要求の区別なく、広義の滞納処分として調査を行った710

3 . 滞納処分の状況

納税者保護制度として滞納処分の執行停止の運用実態をみる前に、滞納に対する強制執 行などの滞納処分の状況を考察する。滞納処分の執行停止は、徴収業務において厳格な対 応が必要である。つまり一方で、滞納に対して強制執行を適正に行っていることが大前提で あり、どちらか一方に偏ることは適正な徴収業務とはいえなし、からである。滞納処分の状 況を滞納処分率(差押・参加差押・交付要求/調定額)で示したものが図表51である。

関表5‑1近畿圏大規模間体の滞納処分率〈平成16‑20年度平均値〉

LO%

3.5 3.0{

2St

融問明市

臨調高槻市

圃圃八尾市 西 盤麗醤羅茨木市

瞳器量醒扇伊丹市

躍瞳聾麗圃圃尼崎市

鐘聾田鹿聾聾回寝屋川市

西

膳撞量盟麗置贋和京市

臨瞳園田盟国蔵和歌山市

鶴麗

E E E

謹襲極極量橿冨躍吹田市

E E

E

蝿瞳腫橿園田園田平治市

E

E E

鶴輯盟置置瞳置躍躍曹明一台市

大津市枚方市

加市川市

2.00/0  1.うちら

0.0

1.0

5 %

出所)筆者調査成

この指標の国税庁の数値は 0.33%である。まず、今回調査した大規模団体においても最 大 5倍程度の差があり、徴収努力において相当な差異が認められる。数値が高い団体は、

財産調査の質と量が多いことが挙げられる。その上で滞納処分を執行できるだけの人員・

能力・ノウハウがト分備わっているものと考えられる。逆に数値が低い団体は、まず財産 調査が低調で、あること、もしくは執行するだ、けの人員等が備わっていないと考えられる。

また伝統的に何かの要因で執行への鶴跨がある団体も現実にはあり、そのような原因も大 きいのではないかと推測する。

またほとんどの団体で国税より高い数値を示している。一般に地方税務行政は国税より も能力・人員面等で劣るといわれてきたが、大規模団体に限ってみればそうとはいえない

71差押と参加差押を同ーとして集計するなど、統計上、団体問で、ぱらつきがあったことも その一因である

ドキュメント内 わが国の税務行政の機能とその展開 (ページ 85-96)