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不納欠損処分と税務行政の現実と問題点

ドキュメント内 わが国の税務行政の機能とその展開 (ページ 42-45)

第 1章 地方税徴収の現状と執行実態ー不納欠損処分にみる徴収業務の義異ー

第 6 節 不納欠損処分と税務行政の現実と問題点

理論上はこのような考察が可能で、あるが、現実の例に当てはめると、不納欠損処分など の徴収業務と徴収率の関係はどうなるかを考察する。消滅時効による不納欠損処分比率は、

徴収業務を十分行っていれば極力避けることができるものであり、徴収率にも本来影響を 与 え る も の で あ る が 図 表 1‑6では、不納欠損処分のうち、消滅時効比率が低い団体は全般 に徴収率が高いという傾向にある。

これは徴収業務を行えていれば、実収入の増加とともに、不納欠損処分が正当なものと して、適正に処理できることが理由として挙げられる。しかし例外は多々あるということ は、徴収業務を適正に行っていたとしても、消滅時効により不納欠損処分としている団体 が多々見受けられることと、不納欠損処分の絶対額との関連が必要であることを示してい る。

図表 1‑9により、執行停止・強制処分などの徴収業務指標が上位にある団体は、不納欠損 処分率も平均以上行っており、当然実収入も多いと推測されるため、徴収率は平均を大き く超える実績を挙げている。これは不納欠損処分を過剰に行った結果ではなく、徴収業務 を適正に行えているため、相乗の効果により徴収率がよくなっていることを示していると みるべきである。

反対に徴収業務指標が惑い団体は、不納欠損処分率が低く、徴収率が平均を下回る傾向 が顕著である。これは実収入の低迷はもちろんであるが、定められた徴収業務を行えてい ないため、不納欠損処分を行いにくいためということが考えられる。今回調査した徴収業 務指標においても、下位には決まった団体が出てくる傾向が顕著である。そのため滞納繰 越分調定額が累積してしまい、徴収率が慢性的に低迷していることがうかがえる。このよ うな事態は、税務行政としては最も避けなければならないことで、住民の納税意欲の低下 にもつながってしまい、ますます徴収が困難になっている可能性が大きい

しかし、これらの傾向の例外にある団体も多々ある。これは冒頭に述べたとおり、徴収 に係る税務行政の唯一の公表指標である徴収率以外は、積極的には公表されてこなかった ため、徴収手続きの処理に団体の意識差があること、例えば消滅時効による不納欠損処分 が、よくないことであるという意識がないため、または古くからの慣習によって処分され ていることなどから、理論上とは違った関連が出てきていると考えられる。また徴収業務 指標以外の要因、例えば経済状況・税収構造の違い、または一時的な特殊要因による影響 度の方がより大きいとも考えられる。

今回の調査で、大阪府内市町村のように徴収率水準が全国中位にあり、ある程度の規模 の自治体が多い中でも、徴収業務に対する団体聞の取り組みに大きな差異があることが浮

き彫りになった。中でも懸念されることは、徴収手続きが行えていない同体は、徴収率に おいても滞納繰越の累積により慢性的に低迷するという悪循環に焔ってしまうということ である。大阪府内市町村は、徴収率が全国平均値付近であることから、このような団体は 少ないものの、徴収率下位の団体では、そのような恐れがあることがわかる。

今回取り上げた不納欠損処分とそれに係る徴収業務は、公表されることが少なく、研究 の対象となってこなかった。そのため自治体内でも重要視されてこなかった面もあるので はなし、かと推測される。しかし今後、地方分権に伴い税源移譲が進展していくと、移譲さ れた税は自力で徴収しなければならないため、徴収業務も充実させることが急務である。

そのためには、本文中でも指摘してきているように、徴収業務に関する情報を積極的に 公開しなければならない。今回調査先の某団体で、「不納欠損処分とその根拠の公開は、滞 納者に逃げ得(消滅時効理由に場合)の道があることを示唆してしまうため、積極的に公 表することには臆賭するJというお話を伺った。一見もっともな理由のようだが、定めら れた徴収業務を適正に行い、消滅時効による不納欠損処分を減らす努力を行い、強制執行 率を上げれば、むしろ積極的に公表する方が 納税者間の公平が保たれ 納税意欲の向上 になるのであり、徴収業務を行えていなし、から公表しないという考えには問題があると思 われる。

地方分権による税源移譲がされてから、自治体問の徴収率格差が注目されている。今後 は、徴収業務の内容、不納欠損処分、並びに強制執行をどの程度行っているかについて、

関心を集める可能性が高い。現にある県では、県内市町村の不納欠損処分値を公表するよ うにマスコミに要請されていると開く。繰り返すが、不納欠損処分は地方税法上認められ たものであり、適正に処分されていれば問題はない。しかし見方を変えれば税債権の放棄 であるから、決して良いこととも言えない。徴収努力を尽したやむを得ない結果であるこ とを示すことが必要となる。単に不納欠損処分額としヴ数値が一人歩きすることにより、

徴収業務が困難になるのでないかという懸念、がある。あくまで個別業務ではなく、徴収業 務全体を術搬することに念頭を置き、論じなければならない。

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章 国 民 健 康 保 険 f料j

r

jの徴収力格差

一制度が徴収に与える影響一

地方税務行政の徴収現場では、税よりむしろ国民健康保険税の効率的な徴収が喫近の課 題であることを開く 国民健康保険は保険者である市町村によって徴収されるが29、一般に 地方税と比較して徴収率が低く、徴収が困難であることが知られている。国民健康保険の 特徴は、地方税と比較して負担率が高い点や、所得がない被保険者においても均等割・

等割がかかってくるため、逆進的であるということである。国民健康保険の徴収を考える 前に、地方税とは異なった負担の重さについて理解しておく必要がある。また保険料は保 険者の財政状況により保険料が決定されるため、高齢化が進んだ小規模団体、経済情勢悪 い団体は、保険料負担がより重くなる。図表21は国民健康保険の保険料がどの程度かを示

したものである。

図表会

1

国民健康保険の保険料〈平成

2 1

年度分奈良市の例〉

医端会付費分榔斜(年齢 後期高齢者支援金分僻鯨ヰ(年齢

所得剖 所得審i脂器樽搾額X8.ν100 説得審!II試課標準鶴x2/100

士事詩草(被備金者T人当り) 26

400 7

200

平等部(1世帯当り} 24

600 6

000

櫛鋭ヰ 課税所得3∞万円の場合 297

000 課税所得3∞万円の場合 73

200 限度額 470

000 120

000

出所)奈良市「平成20年度国民健療保険事業状況報告書jより筆者作成

備考)あくまで保険料の目安であり、実際には個人の事情に応じた減額等がなされる場合がある。図表内 以外に 40~65 歳未満には、介護保験給付金分保険料が同時に賦課徴収される。

このように国民健康保険の特徴を理解した上で、保険者とっても、徴収に力を入れなけ ればならない状況がある。第一に、保険者は国民健康保険特別会計により、独立して保険 財政をまかなわなければならない。そのため未収金は保険財政の悪化をもたらし、翌年の 保険料の増大に直接つながるためである。

第二に、保険財政の運営には、調整交付金が交付されているが、保険者の徴収努力を損 なわないために、低徴収率の保険者には調整交付金の減額が規定されるため30、これも直接 保険財政の悪化を通じて、被保険者の負担につながってしまうためである。

羽田民健康保険料は f収納J、国民健康保険税は「徴収j と呼ぶことが一般的であるが、実 質的な差異はないため、本論では f徴収Jで統一することとする。

30調整交付金は由民健康保険法第72条(国財政調整交付金)、 72条の 2(都道府県財政調 整交付金)による。低徴収率ペナルティーは、被保険者 1 万人未満の保険者は 93% 、 1~5 万人が 92%、 5~10 万人が 91%、 10 万人以上が 90% である(国民健康保険の調整交付金の 交付金の交付額算定に関する省令第7条)。

このように市町村にとって、国民健康保険の徴収は、税以上に重要かっ喫緊の課題であ る。しかし適正な徴収業務および徴収方法の実態についての研究はほとんどなされていな い。奈良市を例にとると、負担率は単純に課税所得300万円で 12%以上になり、限度額は あるものの、課税所得が上がると負担率は高くなることがわかる。

例えば国民健康保険の徴収は、「料J と f税Jが市町村によって選択できる制度となって いる。もちろん根拠法が異なるので31、法的な特性があることは当然であるが、実態として 徴収業務にどのような影響があり、どちらの制度が実質上有効か、といった議論は、

のみでなく市町村議会においてもほとんどなされていないものと思われる。そのため一部 の市町村では、国民健康保険の徴収において、滞納処分など手間がかかるものを放棄して

しまっている状況も見受けられる。

ここでは上記のような国民健康保険の特徴を理解した上で、現制度において行わなけれ ばならない徴収業務を挙げ、実態調査を通じて f料jと f税jの制度上の違いのみならず、

行われている徴収業務を明らかにすることにより、どちらの制度を活用する方が有効かに ついて一定の示唆を与えることを目的とする。

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