第 6 章 固定資産評価における納税者の権利救済
第 3節 回定資産評価審査委員会の実態
1 . 固定資産評価審査委員会に関する総務省調査
平成 15年度に総務省が固定資産評価審査委員会に関する調査を行っている76、ここでは その結果に基づき、その問題点等を検討することとする。
①固定資産評価審査委員会事務局の担当部課の状況
審査委員会事務局が、固定資産税を評価・
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武課担当部課と向ーであるということは、納 税者からみて公平感を擦なうのみでなく、制度全体の信頼性にかかわる問題であり、審査 委員会の特徴である中立性に疑問を持たせるものである。その状況を示したものが図表 6・4 である。平成 15年度、同一部課で事務局を担当している市町村が61.9%であったが、平成 18年 度には 44.6%と改善傾向にある。しかしなお半数弱が同一部課で、事務局を行っている状況 である。特に総務省は平成 18年度調査より、同一部課が事務局である市町村のうち、事務 局を固定資産税の評価・賦課担当者が担当している市町村という項目を追加しており、こ の点を特に問題視していることがわかるのである。
②国定資産評価審査委員会委員の職業・経歴
これまで制度改正の動向として挙げたのが、専門性ある審理を行うための専門性ある委 員の割合を増やすことで、あった。それを不動産関連の専門性ある者が3.7%、学識経験者が 5.8%、元職員が 15.4%、合計で 24.9%となっている。審査委員会は地域の特性をよく知っ
76資産評価システムセンター (2004)、p.51
ている住民代表が、専門性抜きに審査するという考え方もあり、シャウプ勧告はその考え に立脚しているといわれるが、法改正の経緯からは専門性ある審理を行うべきとの考えに 立脚しているとみてよい。市町村が明確な選定基準を設けるなどして対策をとるべきであ る。
図 表 ふ4国定資産評価審査委員会事務局の担当部諜の状況〈総務省調査〉
平成 15年度調査
事務局担当課は評価・賦課担当課と男IJである 31.2%
行政委員会等、独立した事務局組織と設けている 6.1%
その他 0.9%
事務局担当課は評価・賦課担当課と同一である 61.9%
うち、事務局を評価・賦課担当者が担当している 出所)資産評価システム研究センター(2004)
2. 国定資産評価審査委員会運用の実際一筆者が実施した自治体アンケート調
査よりー
総務省調査により公表されている固定資産評価審査委員会の運営状況は限られた項目で あり、運用状況を調べるためにアンケート調査を実施した。内容は以下のとおりである。
‑調査名 固定資産評価審査委員会に関するアンケート
・目 的 自定資産評価審査委員会の運用状況を、各自治体へのアンケートにより把 握し、また総務省統計等では表れない運用の基準等を明らかにする
・調査時期 平成 19年4月 17'""'‑'30日
・調査方法 市町村全数、郵送調査
・調査対象 全市町村…市765(東京都特別区は除く)、町村 1 ,022 の計 1~1-B7 団体
・回収率 511団体 (28.3%)
・回収団体の属性 人口 10万人以上の市…314団体(回収率41.0%) 人口 10万人以下の市町村…197団体(回収率19.3%)
調査項自は、次に示す① ③である。
①過去 10年間の固定資産評価審査委員会の活動実績
(質問事項)固定資産評価審査委員会への審査申出件数、そのうち口頭審理が行われた
) ‑ G
3件数、実地調査が行われた件数、申出が容認された件数(実際の開催数ではなく申出件数 に対する件数)
図表6屯関定資産評価審査委員会の活動実績 審査申出数
3.687 平 成9年度
3,369 (91.4) 611 平 成10年度
473(77.4) 295 平 成11年度
236(80.0) 1,559 平 成12年度
1,287 (82.6) 422 平 成13年度
322(76.3) 529 平 成14年度
427(80.7) 1,385 平 成15年度
1045 (75.5) 439 平 成16年度
279(63.6) 410 平 成17年度
279(68.0) 1004 平 成18年度
735(73.2) 出所)筆者調査・作成 備考)回答数511
口頭審理数 1,074(29.1%)
865 238(34.0覧)
179 93(31.5覧)
69 403(25.9拡)
257 74(17.5%)
39 76 (14.4弘)
41 350(25.3%)
194 86 (19.6覧)
47 74(18.1弛)
47 182 (18.1覧)
100
下段は人口 10万人以上の市の内数、太字は評価替え年度 ( )内は各年度の全体の審査申出数に対する割合(%)
実地調査数 885(24.3弘)
714 289(47.3弘)
180 114(38.6紛
81 733(47.0覧)
551 157 (37.2%)
106 176(33.3弘)
115 745(53.8弘)
530 245(55.8覧)
65 114(27.8%)
65 591 (58.9弛)
389
申出容認数 251 (6.8%)
207 35(5.7弘)
30 28(9.5覧)
21 164(10.5弘)
117 27 (6.4弘)
23 25(4.7弘)
18 191(13.8弘)
127 28 (6.4弘)
21 39(9.5弘)
21 127(12.7%)
99
合併等により古い資料が残っていないとの回答も多く、実際には平成9'""14年度の数はこれより多 いと推測できる。
これらの質問事項でわかったことは、第一に土地・家屋の評価替え年度(平成9・12・15・ 18年度)に審査申出が集中しているということである。しかし平成11年度以降、評価替え
以外の年度の審査申出数が増加傾向にあり、地価下落に伴う時点修正が活発に行われたこ と、また平成15年度より課税台帳の閲覧制度になったことからきていることが推測できる。
容認率は、評価替え以外年度は評価替え年度の半分程度である。
口頭審理数は、平成11年度地方税法改正から減少傾向にあり、納税者の立場からみると 権利が後退したと感じられるところである。逆に実地調査数は増加傾向にあり、特に評価 替え年度には半数以上で申出人立会いの実地調査が行われている。口頭審理、実地調査の 市町村の運用実態は、次の質問事項で詳しく述べる。
次に都市部とそれ以外の市町村の差異を、人口 10万人で区分し図表6晦5の下段部分にう ち数として示した。審査申出数は、平成14年度まで、は都市部が大多数で、あったが、それ以 降は特に都市部が多いということは読み取れず、小規模団体でも申出件数はそれなりにあ ることがわかった。都市部以外の団体の回答の中には農業団体等による集団的な審査申出 があったとするものもあった。
審査申出のうち、どの程度が容認(一部容認も含む)されているのか、ということは公 表されていないが、今回の調査でおおむね5'"'‑'13%程度ということが判明した。これは国税 不服審判所の容認率(一部容認を含む)とほぼ同一である。容認率は審査申出の内容にも よることであり 数字のみで判断することはできないが、今後の課題として申出内容別の 数字が出せれば何らかの認識が示される可能性がある。
②審査委員会の口頭審理、実地調査の運用状況
(質問事項)地方税法では、審査申出に対して口頭審理、実地調査は、委員会が必要に応 じて行うことができるとされていますが、運用上どのようにされておられますか(回答数 490)。
図表6‑6審査委員会のロ頭審理、実地調査の運用状況 口頭審哩 実地調査 必ず行う 29(5.9弘) 87 (17.8%) 基本的に行う 99(20.2弘) 131(26.7弘) 委員会の判断による 303 (61.8%) 266 (54.8%) 原則行わない 59 (12.0弘) 6 (1.2覧) 出所)筆者調査・作成
平成 11年度地方税法改正により、審査委員会の審理は原則書面審査になったことは、述 べた。では実際に市町村は、口頭審理または実地調査開催の要件として基準を置いている のであろうか。
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まず口頭審理に関しては、図体聞で運用のばらつきが見られる。必ずまたは基本的に行 うといった運用方針が26%ある一方、原則行わない団体も 12%あるなど両極端で、ある。実 地調査に関しては、原良Ij行わないという方針は 1%に過ぎず、各団体とも実地調査は審理に 必要であるとの認識がみてとれる。
審査申出人の希望がありながら口頭審理または実地調査を行わないといった方針は、納 税者の立場から望ましくないことはいうまでもない。今後、納税者の権利保護を考えてい
く上で、この運営方針の動向には注意を払っていく必要がある。
③由定資産評価審査委員会の委員の選定基準
(質問事項)地方税法改正の経緯から、委員会を専門性ある審査を行う機関としづ位置づ けが成されています。委員の選定において、例えば不動産関連知識を有する者が何%という ような基準は置かれていますか。(回答数508)
図表6‑7審査委員会委員の選定基準 特に基準なし│大体の基準あり│ 内規あり
4削 8 .6弘)
I
56(11.0%)I
2(0.4覧)出所)筆者調査・作成
④委員の専門性について
(質問事項)基準があると回答された方にお筒きします。専門知識を有する者の割 合はどこに罷かれていますか(回答数412)770
図表6‑8審査委員会委員の専門性に関して 不動産関連 39.53%
学識経験者 40.82%
職員 OB 28.08%
出所)筆者調査・作成
委員の専門性は、委員会がより専門性ある審理を行えるかというキーポイントにもなり、
また課税側の恋意的な課税を防止するということから、納税者の利益を守るものであるこ とはいうまでもない。一方、納税者からみると職員 OBは課税側の主張に傾く可能性が大 きいと思われることが自然であるため、全く見IJの問題になることにも注意が必要である。
委員の選任は、地方税法第423条3によると f当該市町村の議会の同意を得て、市町村
77本来、回答数は前項の結果をふまえ 58以下であるべきだが、将来の方針として回答した 団体が多かったため、そのまま掲載した。
長が選任する。j とあり、委員の専門性に関しては規定がなく、各団体の判断に任されてい る状態である。市町村の方針をみてみると、委員の選定基準について明文化されている団 体はほとんどなかった。ただし図表6・8の回答および回答数にみられるように、専門知識を 持った者をある程度入れなければという意識は強し、ものと推澱できる。ただアンケートの 意見として多かったものは、特に都市部以外の市町村で、 f専門性ある委員の適任者が少な しリ「そもそも審査申出数が少なしリことから基準という形にはできない、というものがあ った。
⑤国定資産評価審査委員会事務局の担当課の状況
(質問事項)平成 18年4丹、総務事務次官通知で、審査委員会事務局は中立性の観点から 原則として固定資産の評価・員武課を担当する課以外の課等で行うように求めていますが、
現状はどうでしょうか。(回答数510)
図表6‑9審査委員会事務局の担当課の状況 固定資産評価審査委員会事務局の担当課は、
評価・賦課と同じ課等であるか 同一の課等で行っている 105(20.6%)
違う課等で行っている 405(79.4部) 出所)筆者調査・作成
⑥審査委員会の共同設置について
(質問事項)現在効率化の観点から審査委員会を周辺自治体との共同とする自治体が出 ています。共同設置に対してどのようにお考えでしょうか。(回答数485)
図表6‑10審査委員会の共同設置について
すでに共同設置 共同設置を具体的に 周辺自治体との関で気運 望ましいとは考 を行っている 検討している が高まれば検討すべき えない
1 1 371 112
(0.2%) (0.2%) (76.5%) (23.1%) 出所)筆者調査・作成
審査委員会事務局が、固定資産の評価・斌課担当の課等で運営されることは総務省調査 からも、納税者からみて公平としづ根本面での信頼が揺らぐことから、総務省も重要視し ていることを示した。平成 15年度の調査と比較してみると、今回の調査で審査委員会事務 局の担当課を違う課等で、行っているとの回答が 79.4%にもおよび、大きく違う結果となっ
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