第 6 章 数値座標変換による 3 次元逆解析
6.2 測定データと計算空間地表グリッド系との関係
計算空間理論から、次の3つの重要な結論が導かれている。
結論①:計算空間は、等方性のある直交座標空間である。
この結論は、計算空間の、基本計量テンソル反変成分の定義式(3.15)と地表の平坦条件か ら直ちに明らかとなる。それにより、計算空間における 2点間の最短距離は、その 2点を 結ぶ直線であり、次式で表される。
3
1 2 1 2 2
1
(
i i)
i
s s
=
− = ∑ −
s s
(6.1)式(6.1)は、座標空間が、等方性と直交性の両方の性質を有する場合にのみ成立する。一般 的な曲線座標系はもちろん、直交性のみを有する座標系、例えば球座標空間、は等方性で はないため、式(6.1)は導かれない。
結論②:計算空間グリッドにおける 2 つの節点間の距離は、物理空間で対応する両点を 送受信電極位置としたときの受信電位により一意に決められる。すなわち、
0
1 2
I π U
− =
s s (6.2)
である。この結論は式(3.5)から明白であり、計算空間では、比抵抗法の測定データが、それ ぞれのデータに係わる送受信点間の距離に対応するという結論である。
結論③:地下の比抵抗分布にかかわらず、送受信電極の送受信関係を換えても受信電位 は変わらない。
距離には方向性がないため、この結論は明白であり、これはいわゆる相反定理である。
以上の結論から、比抵抗法による測定電位が与えられれば、計算空間地表グリッド系の 節点座標が得られ、地下の比抵抗分布は求められることになる。
6.2.2 測定データと計算空間地表グリッド系との関係
いま、物理空間地表の
x
A, x
B, x
cの3点について考える。この3 点の添字A、B、Cは、Fig.6.1に示すように、反時計回りとする。
x1 UCD xD xC
UA D UB D UB C
xB UA C UA B
xA
x2
Positions of electrodes in physical space
s1
sC dc sD
dAC da
dBC db
sA dA B sB s2
Correspondent positions in computational space
Fig.6.1 Determine electrode coordinates in computational space with measurements in physical space
この 3 点のうちの、任意の 2 つの電極を送受信ペアとして、それぞれ受信電位を
, ,
AB AC BC
U U U とする。座標変換理論から、地下比抵抗の連続性があれば、
x
A, x
B, x
cと一対 一の対応関係を有する計算空間での3点s
A, s
B, s
cが存在し、結論②から、次式が成立する。
=
−
=
=
−
=
=
−
=
BC BC
AC AC
AB AB
U d I
U d I
U d I
1 2
1 2
1 2
π π π
C B
C A
B A
s s
s s
s s
(6.3)
結論①により、計算空間は直交座標空間であり、計算空間での 3 点
s
A, s
B, s
cが非共線点 であれば、次の手順で座標系を構成することができる。手順①:3点
s
A, s
B, s
cの座標を次のように設定する。
=
=
=
=
=
=
) 0 , , ( ) , , (
) 0 , , 0 ( ) , , (
) 0 , 0 , 0 ( ) , , (
2 1 3 2 1
3 2 1
3 2 1
C C C C C
AB B
B B
A A A
s s s s s
d s
s s
s s s
C B A
s s
s (6.4)
手順②:次式により、
s
C1とs
C2を求める。
− +
=
−
−
− +
=
) 2 (
1
] ) (
][
) 2 [(
1
2 2 2 2
2 2
2 2 1
BC AC AB AB c
BC AB AC AC BC AB AB c
d d d d
s
d d d d d d d
s (6.5)
手順③:次式により、各座標軸の単位ベクトルを決定する。
s1軸: i = j×k s2軸:
B B
s j
=
ss3軸:
B c
B c
s s
s k s
×
= ×
このとき、物理空間地表に、前述の3点
x
A, x
B, x
cとは別の、任意の1点x
Dを設定し、, ,
A B c
x x x
のそれぞれから送信したときの、x
Dにおける電極の受信電位をUAB,UAC,UBCとす ると、x
Dに対応する計算空間での 1 点s
D= ( s
D1, s
D2,0)
の座標は、次式により求めること ができる。
+ − −
=
− +
=
2 2 2 2 2
1 1
2 2 2 2
2 1
) 2 (
1
D C c a AC C D
b a AB AB D
s d s d d s s
d d d d
s (6.6)
ただし、
=
−
=
=
−
=
=
−
=
CD c
BD b
AD a
U d I
U d I
U d I
1 2
1 2
1 2
π π π
C D
B D
A D
s s
s s
s s
(6.7)
以上の手順を踏めば、測定電位データから、物理空間地表電極系に対応する計算空間地 表グリッド系すべての節点座標を与えることができる。また、どのような電極配置のデー タが必要になるのかという問題は、計算空間で単純に幾何学的な検討をすればよいことが わかる。
6.2.3 比抵抗法3次元測定における基本データセット
6.2.2 の検討から、今まで検討困難とされてきた問題、すなわち、逆解析に必要となるデ
ータ群の取得法という問題に、容易に答えられるようになった。
従来の逆解析法において、測定データについて要求されてきたことは、求めるパラメー タの数よりも多数のデータを取得しなければならないということだけである。それは物理 的な本質とは関係なく、単なる数学上のUnder-determined problemを避けるためであった。
しかし、数値解を求める場合には、コンピュータの計算精度が有限であるため、数学的に 決定できる問題に対しても、結局、Under-determined problemに陥ってしまうことが多く、
それは悪条件の感度行列あるいは解析の不安定性をもたらしてきた。
また、多数のデータを取得してOver-determined problemに持ち込もうとしても、測定デー タの中に、ほとんど同じ程度の地下情報しか含まれていないデータが大量に存在するとす れば、3次元探査における測定および解析の効率を低下させるだけのことである。
これらの問題を解決するために、与えられた電極系で、測定可能なすべてのデータと同 等の地下情報を含む、最小のデータ群について検討を行った。
6.2.2 での検討から、物理空間電極系に対応する計算空間地表グリッド系を一意に決定す
るためには、次のデータ群が与えられればよいことがわかる。すなわち、物理空間地表に 多数配置された電極から 3 つの電極を電流電極として選び、それぞれから送信し、その送 信電極を除いた残りのすべての電極で受信された測定データ群である。ここで、この測定 データ群を比抵抗法の測定における基本データセット、その送受信の組み合わせを基本送 受信セットと呼ぶことにする。
計算空間地表グリッド系が決定されていれば、この電極系を用いた送受信のすべての組 み合わせから得られるデータ(3極法、4極法配置の場合も含む)は、式(3.5)および相加定理、
相反定理を併用して、その計算空間地表グリッド系の座標から算出することができる。し たがって、理論的には、基本データセットより多くのデータを取得しても、地下に関する 情報量はそれ以上増えることはない。
しかし、実際の測定データにはノイズが含まれているため、ノイズに関する情報量を増 大させてノイズをできるだけ除去し、データの質を向上させることも重要である。したが って、現実的には、このノイズ除去を目的として、基本データセットより多くのデータを 取得する必要があると考える。
以上の検討から、効率的な比抵抗 3 次元探査の測定方法ならびにデータの処理法につい
て、次のようにまとめられる。
① 理論上、基本データセットには、使われている電極系から引き出せる地下情報がすべ て含まれている。ノイズの影響を低減させることを目的として、さらに多くの測定が 必要である。
② 基本データセットから地下情報を引き出すためには、計算空間の地表グリッド系座標 への変換が必要である。