本研究で得られた成果をまとめて以下に示す。
(1) 比抵抗法における逆問題は、不完全、かつ、ノイズを含むデータ空間から、全モデル 空間を推定しようという問題であることから、解析の安定性、効率性および解像度を 向上させるためには、次の3点が重要である。
a. 地下情報を多く含むデータ群が取得されていること。
b. データに含まれるノイズを正しく軽減・除去すること。
c. 与えられたデータから推定可能な、モデル空間範囲を正しく制限すること。
(2) これらの目標を達成するために、地下空間の最適な離散化の方法を検討し、比抵抗法 における最適な計算空間理論を導いた。最適な計算空間は、比抵抗法の支配方程式お よび境界条件を最も単純に表現できる曲線座標空間であり、基本計量テンソルの選定 と地表平坦条件の設定により定義され、物理空間と一対一の座標対応関係を有する。
(3) 計算空間の座標変数の、幾何的な意味と物理的な意味を明確にした。すなわち、計算 空間での線要素は、物理空間での対応する線要素と比例関係にあり、その比例係数は 導電率であり、等方性の直交座標空間である。計算空間の座標変数は、同じ地形と比 抵抗分布を有し、電流ソースが無限遠にある電位に相当する。
(4) 比抵抗法数値解析において、この最適な計算空間の最も重要な特徴は、計算空間での 電位分布と感度分布とに解析式が存在し、物理空間でのそれらと同値であることであ る。このような特徴から、比抵抗法における順問題ならびに逆問題は、数値座標変換 の問題に転換して解けばよいことを明らかにした。
(5) 必要となる両空間の間の座標変換方程式と境界条件を、選定した計算空間基本計量テ ンソルと地形平坦条件により導出した。双曲型変換システムは物理空間の初期グリッ ド系の形成に用いられ、楕円型変換システムは両空間のグリッドを精確に修正するた めに用いられる。
(6) これらの変換方程式を用いて両方向の座標変換を精確に行うために、媒介空間を導入 した。媒介空間は、物理空間と計算空間の両空間に対して一対一の座標対応関係を有 する。この媒介空間が実質的な計算空間となることから、各変換方程式および境界条 件の引数をすべて媒介空間座標で表現できるようにした。
(7) 数値座標変換の精度と安定性を向上させるために、双曲型変換システムでは因子化と 分散項の追加を行い、楕円型変換システムでは有限体積法による Picard 反復法の適用 可能な差分方程式を導出した。
(8) 数値モデルを用いて数値座標変換の実例を示し、システムの安定性を確認した。
(9) 座標変換問題と比抵抗法順問題とは等価であることを、境界値問題の理論から証明し、
数値座標変換による比抵抗法順解析のアルゴリズムを構築した。
(10) このアルゴリズムを用いて、理論解の存在するモデルについて精度検証を行った。そ
の結果、数値座標変換による順解析の優れた特徴が明らかになった。すなわち、
a. 特異点となる電流ソース付近においても、数値解析精度は非常に高い。
b. 電流ソースの位置を変えた場合でも、新たに微分方程式の数値解を解く必要がない ため、高密度3次元比抵抗法におけるデータ解析は、非常に効率的に行われる。
c. 地下空間離散化の最適化を解析過程の中で自動的に行うため、有限なグリッド規模 での解析において生じる総合的な離散化誤差は、最小に抑えられる。
(11) 地形を含むモデルおよび比抵抗コントラストの大きいモデルを用いた計算例を示し、
数値座標変換による順解析アルゴリズムの安定性と効率性を明らかにした。
(12) 計算空間で導かれた感度の解析式を用いて計算例を示し、感度分布が容易に求められ
ることを明らかにした。また、3 次元的な地形や地下異常体が感度分布に与える影響 を示し、従来の近似的な感度計算法を用いると、解析における解像度の低下をまねく ことを指摘した。
(13) 数値座標変換の特徴を利用して、比抵抗法における新たな逆解析法を提案した。この
逆解析法は、実測データから計算空間地表グリッド系が生成されることを利用して、
数値モデルによる計算空間地表グリッド系を実測データによる計算空間グリッド系に 適合させる逆解析法である。また、計算空間理論をもとに、比抵抗法における逆問題 は、計算空間での境界値問題であることを明らかにした。
(14) この逆解析法のアルゴリズムを用いて、6 つのモデルについて数値実験を行い、さら
に、データに含まれるノイズの影響と、その除去法について検討を加えた。その結果、
次の諸点が明らかになった。
a. 計算空間地表グリッド系を適合に利用するため、与えられた電極系から地下比抵抗 分布に関する情報量を最大限に引き出すことができ、解像度が向上する。
b. データに含まれるノイズの影響は、線形最小2乗法を用いて計算空間地表グリッド 系を生成することで軽減され、逆解析の主体と分離できる。
c. 解析に用いるグリッド系規模の設定において、特異点となる電流電極位置を考慮し た密なグリッドを必要としないため、それによって費やされる余分な計算量が不要 となり、計算効率が大幅に向上する。
d. 感度行列を陽的に計算する必要がないため、計算効率が大幅に向上する。
e. 各グリッド節点で異なる比抵抗値を表現でき、グリッド節点の位置は、総合的な離 散化誤差が最小になるように解析中に自動的に移動することから、有限なグリッド 規模で、解析の精度と解像度が最大限に引き上げられる。
(15) 数値実験の結果をもとに、今後の課題として、さらに実用的なデータ測定法とそれに
対応する解析法の研究開発の必要性を指摘した。
以上のように、本研究では、比抵抗法 3 次元データ解析の実用化に向けて、比抵抗法に おける最適な計算空間の概念を提唱した。この最適な計算空間において核心となる部分は、
基本計量テンソルの選定と計算空間の地表平坦条件である。基本計量テンソルは、一組の 微分方程式であり、非線形方程式である。現段階では、それらを直接的に解くことは困難 であるが、それらを線形楕円型変換方程式や線形双曲型変換方程式に転換・近似すること によって、すべてのアルゴリズムが構成できることを明らかにした。
今後、数値計算理論と計算能力の更なる進歩により、基本計量テンソルのような非線形 方程式の直接的な数値解法が可能になれば、本研究で明らかにした数値座標変換法は、さ らに高精度の解析法へと発展することが期待される。
謝辞
本研究を遂行するにあたり、早稲田大学理工学部環境資源理工学科野口康二教授には、
研究の方向性から、研究の詳細な内容と構成、さらには論文作成における記述の詳細にい たるまで、終始懇切丁寧なご指導・ご鞭撻を賜った。また、早稲田大学理工学部環境資源 理工学科在原典男教授、毎熊輝記教授には、学位論文をまとめる上で、貴重なご指導・ご 助言を賜った。ここに記して心から感謝いたします。
有限会社探査環境技術事務所野口徹社長には、本研究の問題提起から完成にいたるまで、
経済的なご援助をいただき、絶えずご激励をいただいた。また、3次元測定法に関する数々 のご指摘から、比抵抗法の解析における最適な離散化を考える上で重要なヒントをいただ いた。ここに記して深謝いたします。
三井金属資源開発株式会社斎藤章博士には、等角写像についてご指導いただき、計算空 間の物理的な本質に関する啓発を受けた。記して感謝の意を表します。
早稲田大学理工学部環境資源工学科野口研究室の方々には、研究活動にご協力いただい たばかりでなく、研究室での日常の生活の中で、数多くの便宜をはかっていただいた。記 して謝意を表します
研究業績
種別 題目 発表・発行掲載誌名 発表・発行年月 連名者
○論文
○論文
○論文
○論文
論文
講演
講演
講演
数値座標変換に よ る 比 抵抗法の3次元解析
3-D data interpretation in resistivity method using numerical coordinate transformation
比 抵 抗 法 数 値 解 析にお ける最適な計算空間
Coordinate transformation for efficient data
interpretation in the resistivity method
電磁界解析に よ る地下 構造電磁探査法 システ ムに関する検討
座標変換による 比抵抗 法三次元数値解析
比 抵 抗 法 数 値 解 析にお ける最適な計 算 空 間 に ついて
座標変換による 比抵抗 法数値解析の効率化(3)
物 理 探 査, 第 56 巻 第 1 号 p23-37
Proceedings of The 6th SEGJ international Symposium
-Imaging Technology - p244-249
物 理 探 査 第 55 巻 第 3 号 p223-331
Proceedings of The 5th SEGJ international Symposium
-Imaging Technology - p195-200
電気学会論文誌A, 第120-A巻 第10号 p894-901
第105回物理探査学会学術講演 会講演論文集, p40-43
信 学 技 報 SANE 2001-64 (2001-10), p95-99
第104回物理探査学会学術講演 会講演論文集, p191-195
2003年2月
2003年1月
2002年6月
2001年1月
2000年10月
2001年10月
2001年11月
2001年5月
汪 振洋 野口 康二
Zhenyang Wang Koji Noguchi
汪 振洋 野口 康二
Zhenyang Wang Koji Noguchi
青木 広宙 汪 振洋 野口 康二 中島 真人
汪 振洋 野口 康二
汪 振洋 野口 康二
汪 振洋 野口 康二