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海 面 の 高 さ を あ る 基 準 面 か ら 測 っ た 値 を

「潮位」と呼ぶ。潮位はおおむね1日に2回の 満干潮や1か月に2回の大潮・小潮等、様々な 時間スケー ルで変動す るため、長 期変化傾向 を 知 る た め に は 、 季 節 変 動 よ り 短 い 時 間 ス ケールの潮 位変動を除 去する必要 がある。こ こでは、季 節以上の時 間スケール の変動を対 象として考 える場合の 海面の高さ として年平 均潮位を使 用し、それ を「海面水 位」と呼ぶ こ と に す る 。 ( 求 め 方 の 詳 細 は 、 本 項 「 2 日本沿岸の海面水位の監視」参照)

(1)海面水位上昇の社会への影響

地球温暖化は海面水位の上昇を引き起こす。

海面水位が 上昇する原 因は、主に 水温の上昇

に 伴 う 海 水 の 膨 張 や 、 山 岳 氷 河 ・ 南 極 ・ グ リーンラン ドの氷床の 融解に伴う 海水の増加 と考えられている。

海 面 水 位 の 上 昇 に よ っ て 、 海 岸 侵 食 、 高 潮・高波・ 異常潮位な どの沿岸災 害の激化、

沿岸湿地喪 失などによ る沿岸生態 系・淡水生 態系への影 響などが予 想される。 海面水位上 昇は、特に 、海抜の低 い珊瑚礁の 島々からな る国などにとっては深刻な脅威となる。

環境 省の 地 球環 境研 究 総合 推進 費 戦略 的研 究 プ ロ ジ ェ ク ト 「 温 暖 化 影 響 総 合 予 測 プ ロ ジェ クト 」 (2008) は 、海 面水 位 上昇 の我 が 国への影響 として下記 に挙げる社 会基盤施設 と社会経済への影響を指摘している。

・温暖化に よる海面の 上昇と高潮 の増大で、

高潮による 浸水面積と 浸水人口が 増加する。

そ れ ら の 面 積 と 人 口 は 温 暖 化 の 進 行 に 伴 い 徐々に増加する。

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・西日本で は、温暖化 により高潮 で浸水する 面積や人口 は、瀬戸内 海などの閉 鎖性海域や 入り江などで大きい。

・温暖化が進んだとき、三大湾(東京湾、伊 勢湾、大阪 湾)奥部で は、古くに 開発された 埋立地とそ の周辺で高 潮による浸 水の危険性 が高い。

・温暖化に よる海面上 昇によって 河川汽水域

が拡大し、堤防の強度が低下する。

・ 砂 浜 の 経 済 価 値 は1m2あ た り 約12,000 円 。 30cm の 海 面 上 昇 に よ っ て 失 わ れ る 砂 浜 の 価 値は1兆3千億円に達する。

・ 干 潟 の 経 済 価 値 は1m2あ た り 約10,000 円 。 海面上昇に よって全国 の干潟に影 響が及ぶと するとその経済的損害は最大約5兆円に達する。

・海面上昇と異常降雨が地下水位を上昇させ、

地震時の液 状化による 地盤災害を 受ける地域 の面積を大きくする。

汽 水 域 : 海 水 と 淡 水 と が 混 じ り 合 っ た 低 塩 分 の 水

(2)世界平均海面水位の長期変化

IPCC第4次 評 価 報 告 書 (2007) で は 、 過 去 及び将来の 海面水位変 化について 下記のとお り結論づけている(図1.2-1)。

・ 世 界平 均 の 海 面水 位 は1961年 か ら2003年 に かけて年 あ たり1.8±0.5mmの 割 合 で上昇し た 。

・1993年 か ら2003年 に か け ての 上 昇 率 は更 に 大きく、 年 あたり3.1±0.7mmの 割 合であっ た 。

・1993年 か ら2003年 に か け ての 海 面 水 位上 昇 率の増加が10年規模の 変動なのか 、より長期 的な上昇傾向の加速なのかは不明である。

・観測され た海面水位 上昇率が19世紀から20 世紀にかけて増加したことの確信度は高い。

・20世 紀 を 通 じ た 海 面 水 位 の 上 昇 量 は0.17±

0.05mと見積もられる。

・ 世 界 平 均 の 海 面 水 位 は21世 紀 末 (2090~ 2099年 ) に は 、1980~1999年 の 平 均 海 面 水 位

に対して0.18~0.59m上昇すると予測される。

図1.2-1 世界平均の海面水位の過去及び将来予測における時系列(1980-1999年平均を基準とする) IPCC(2007)より引用

灰色の陰影:海面水位の長期的な推定上昇率の不確実性を示す。

赤色 :赤線は潮位計による世界平均の海面水位を再構成したもので、赤い陰影は変動範囲を示す。

緑色 :人工衛星の高度計によって観測された世界平均の海面水位を示す。

青色の陰影:SRES A1Bシナリオ注)に対する21世紀の予測範囲を示す。

注)SRESは 、IPCC「排出 シナリオ に関 する特別 報告 書」(2000)を指す。 今後 の世界の 社会 ・経済動 向に 関 する想定から算出した温室効果ガス排出量の将来変化シナリオを規定したもので、A1Bシナリオは「すべての エネルギー源のバランスを重視して高い経済成長を実現する社会」とされている。

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第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化 海面水位

(3)世界平均の海面水位の近年の変化

人工 衛星 に 搭載 され た 高度 計に よ る観 測が 行われるよ うになり、 世界平均の 海面水位は 現場だけの 観測データ を用いてい たときに比 べ正確に見積もることができるようになった。

気 象 庁で1993年 から2010年 まで の 衛 星 海面 高 度計による 測定データ を解析した 結果、世界

(北緯66度から南緯66度)の平均 海面水位の

上昇率は2.95±0.12mm/年となった(図1.2-2)。

また、海面 水位の変化 率は海域に よって異な り、西太平 洋では低緯 度を中心に 大きく上昇 しており、 東太平洋で は逆にほと んど上昇し ていない海 域がみられ る。大西洋 では、湾流 の周辺を除 き、全般に 海面水位が 上昇してい る。

(4)日本沿岸の海面水位の長期変化

岩 崎ほ か (2002) は 、日 本沿 岸 の海 面水 位 の長期変化 傾向を検出 するために 、まず、国 土地理院の 水準測量デ ータから、 各検潮所の 基準面がど の程度地盤 変動の影響 を受けてい たのか見積 もった。こ の結果を使 って、地盤 変 動 の 影 響 を 除 去 し た30年 間 (1969~1998 年)の各検 潮所におけ る年平均海 面水位(各 年の日本水 準原点に相 対的な値) を求め、東 経137度を境に西日本では年あたり2.4mmで上 昇 、 東 日 本 で は 年 あ た り3.1mmで 下 降 し て い ることを示した。また、Senjyu et al.(1999)

は、日本沿 岸の海面水 位変動の特 性を調べ、

日本の沿岸 全体に20年程度の周期 をもつ変動 があることを見出した。

図1.2-2 人工衛星搭載の高度計から求めた世界平均海面水位偏差(北緯66度-南緯66度)の推移(上)

人工衛星搭載の高度計から求めた1993~2010年の海面水位変化率(mm/年)(下)

上 の グ ラ フ の 赤 線 は 半 旬 平 均 値 、 青 線 は 年 平 均 値 を 示 す 。1996年 ~2002年 の 半 ば ま で はTOPEX/Poseidon、2002 年 半 ば ~2009年 半 ば ま で はJason1、2009年 半 ば 以 降 はJason2搭 載 の 高 度 計 に よ る 観 測 デ ー タ を 基 に 解 析 し て い る。1996年~2006年の平均値を0としている。

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(5)海面水位変化の要因

IPCC第4次 評 価 報 告 書 で は 海 面 水 位 上 昇 に 大きな影響を与える要因として

・海水の熱膨張

・氷河・氷帽の融解

・グリーンランド氷床の融解

・南極氷床の融解

の4つを挙げ、それぞれの要因別に海面水位上 昇率を評価している(図1.2-3)。

1961年 か ら2003年 の 期 間 で は 海 水 の 熱 膨 張 と氷河・氷 帽の融解が 同じ程度海 面水位上昇 に寄与していると見積もられたが、4種類の要 因の合計は 観測によっ て得られた 海面水位上 昇より小さ く、海面水 位上昇の原 因となって いる様々な要因を十分に評価できていない。

1993年 か ら2003年 の 期 間 で は い ず れ の 要 因 も1961年 か ら2003年 の 期 間 より も 海 面 水位 上 昇への寄与 が大きくな り、特に海 水の熱膨張 の 寄 与 が 顕 著 に 大 き く な る 。4種 類 の 要 因 の 合計は観測によって得られた海面水位上昇に 近い値を示している。

こ れ ら4つ の 要 因 の う ち 海 水 の 熱 膨 張 に よ る寄与を、気象庁が作成している海面から深 さ700mまでの表層水温データ(「1.1.1世界の 海面水温・表層水温」参照)を使って評価し

た。図1.2-3-2に、人工衛星に搭載された海面

高度計のデータによる世界全体(北緯66度か ら南緯66度)の平均海面水位の1993年からの 変 化 量 ( 図1.2-2に 同 じ ) と 、 海 面 か ら 深 さ 700mま で の 海 水 の 熱 膨 張 の 寄 与 を 示 す 。

「(3)世界平均の海面水位の近年の変化」

に示したとおり、海面高度計によって観測さ れた世界の平均海面水位は、1993年から2010 年の間に、2.95±0.12mm/年の割合で上昇して いる。同じ期間に、表層水温の上昇に伴う熱 膨 張 に よ っ て0.88±0.19mm海 面 水 位 が 上 昇 し た と 推定 さ れ 、1993年 か ら2010年 の 世 界の 平 均海面水位 の上昇量の およそ3分 の1が表層 水温の上昇によるものだと考えられる。また、

海面高度計 によって観 測された世 界の平均海 面水 位は1993年 以降 上 昇し 続け て いる のに 対

し 、 表 層 水 温 の 上 昇 に よ る 熱 膨 張 の 寄 与 は 2003年以 降 上昇 傾向 が おさ まっ て いる 。こ の

ため、2003年以降は深さ700mよりも深いとこ

ろの海水の 上昇や、陸 氷の融解に よる寄与が 大 き く な っ て い る と 考 え ら れ る 。 た だ し 、 1950年以 降 、表 層水 温 は大 きく 上 昇す る期 間 図1.2-3 要因別の海面水位上昇率

上段の4項目:世界平均の海面水位の変化に影響を与 える要因の評価

中段の2項目:その合計と観測から得られた海面水位 上昇率

下 段 : 観 測 か ら 得 ら れ た 海 面 水 位 上 昇 率 と 要 因 の 評 価の合計との差

青 い 棒 は1961年 か ら2003年 の 上 昇 率 を 示 し 、 茶 色 の 棒 は1993年 か ら2003年 の 上 昇 率 を 示 し て い る 。 そ れ ぞ れ 棒 の 長 さ は 解 析 の 誤 差 を 評 価 し て い る 。IPCC

2007)より引用。

図1.2-3-2 世界平均(北緯66度から南緯66度)の海面 水位偏差と熱膨張成分

北 緯66度 か ら 南 緯66度 ま で の 海 面 水 位 を1993年 の 値 から の 変化 量 とし て 表す 。 紫は 衛 星に よ る観 測 値 、 オレンジは海面から深さ700mまでの水温から推定し た熱膨張による変動成分。

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