第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化 海洋の温室効果ガス
第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化 1.4 海洋の温室効果ガス
海洋の温室効果ガス
土地利用変化による放出と陸上生物圏への吸 収 の 収 支 は9億 ト ン 炭 素 の 吸 収 ) 。 そ の 結 果 、 大気中への蓄積は年間41億トン炭素に増加し たと見積もられている(IPCC,2007)。
しかし、二 酸化炭素の 海洋や陸上 生物圏へ の吸収量の見積もりには、4~6億トン炭素の 不確実性がある。また、大気中の二酸化炭素 濃度には、大きな年々変動がみられることか ら、海洋や陸上生物圏の吸収量も大きく年々 変動していることが推測される。将来の大気 中の二酸化炭素濃度、ひいては地球温暖化に お け る 不 確 実 性 を 低 減 さ せ る た め に は 、 大 気・海洋・陸上生物圏における炭素蓄積量の 長期的な変化や、それら相互の二酸化炭素の 交換量を正確に評価する必要がある。また、
それらの年々変動の大きさや、これを引き起 こす原因を解明するなど、炭素循環に関する 理解を向上させる必要がある。このために組 織的で持続的な観測、気候モデルや気候の諸 過程に関する研究のいっそうの進展が望まれ る。ここでは温室効果ガスのなかでも地球温 暖化への影響が最も大きく、従来から多くの 観測や研究が行われてきた、海洋の二酸化炭 素について診断する。
図 1.4-1 過 去 10,000年 ( 大 き い 図 ) お よ び 1750年 以 降 ( 挿 入 さ れ た 図 ) の 二 酸 化 炭 素 、 メ タ ン お よび一酸化二窒素の大気中濃度(IPCC, 2007)
測 定 値 は 氷 床 コ ア ( 異 な る 色 の 印 は 異 な る 研 究 を 示 す ) と 大 気 中 の サ ン プ ル ( 線 ) に よ る も の 。 大 き い パ ネ ル の 右 軸 は 対 応 す る 放 射 強 制 力
( 大 気 中 の 温 室 効 果 ガ ス な ど に よ り 、 放 射 の や り 取 り の バ ラ ン ス を 変 え る 働 き を 表 す 量 ) 。 ppm(100万 分 の1) も し く はppb(10億 分 の1)
は 、 乾 燥 空 気 中 の 全 分 子 数 に 占 め る 温 室 効 果 ガ スの分子数の割合。
図1.4-2 地球温暖化への各温室効果ガスの寄与 二酸化炭 素、 メタン、 一酸 化二窒素 、ハ ロカーボン 類の放射強制力(IPCC, 2007)の割合。
第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化 海洋の温室効果ガス
参考文献
IPCC, 2007: Climate Change 2007: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Solomon, S., D. Qin, M. Manning, Z. Chen, M.
Marquis, K.B. Averyt, M. Tignor and H.L. Miller (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 996 pp
図1.4-3 炭素循環の模式図(1990年代)
IPCC(2007) を も と に 作 成 。 各 数 値 は 炭 素 重 量 に 換 算 し た も の で 、 蓄 積 量 ( 箱 の 中 の 数 値 、 億 ト ン 炭 素)あるいは 交換量(矢印 に添えられた 数値、億トン 炭素/年)を 表している。 黒は自然の循 環で収支 が ゼロであり、赤は人間活動により大気中へ放出された炭素の循環を表している。
83
第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化 1.4 海洋の温室効果ガス
1.4.1 海洋の二酸化炭素濃度の長期変化
海洋の二酸化炭素濃度の長期変化
診断概要
診断内容
二酸化炭素は、温室効果ガスのなかでも大量に存在するため、地球温暖化への影響が最 も大きいと考えられている。地球の表面積の7割を占める海洋は、人間活動により大気中 に放出された二酸化炭素を吸収する役割を担っている。ここでは、北西太平洋における表 面海水中の二酸化炭素濃度の観測データを解析し、海洋の二酸化炭素濃度の長期変化につ いて診断する。
診断結果
北 西 太 平 洋 ( 東 経 137度 線 上 の 北 緯 7~ 33度 平 均 ) に お け る 冬 季 の 二 酸 化 炭 素 濃 度 は 、 1984年以降表面海水中では約1.6ppm/年、大気中では約1.8ppm/年の割合で増加している。
この海域における二酸化炭素濃度は、全般に表面海水中よりも大気中の方が高く、全て の海域で表面海水が大気中の二酸化炭素を吸収していることを表している。表面海水中の 二酸化炭素濃度は、増減を繰り返しながら徐々に増加する傾向にある。
海洋の二酸化炭素濃度は、水温の変化や海水の鉛直混合などの比較的短い期間の変化に 影響されやすく、時間的・空間的に変動が大きいため、これからもその変化の様子を長期 にわたって引き続き注意深く監視する必要がある。