オ ホ ー ツ ク 海 の 海 氷 は 、 太 陽 放 射 の 反 射 、 海 洋 か ら 大 気 へ の 熱 ・ 水 蒸 気 輸 送 の 遮 断 に よ り 、 北 海 道 オ ホ ー ツ ク 海 沿 岸 の 気 候 に 影 響 を 与 え て い る 。 例 え ば 、 海 面 が 流 氷 に 覆 わ れ て く る と 、 海 面 か ら の 水 蒸 気 の 補 給 が な く な る た め 雲 が 発 生 し に く く な っ た り 、 海 水 の 熱 が 大 気 に 伝 わ ら な く な る た め 気 温 が 低 く な る と い っ た 影 響 が あ る 。
海 氷 の 影 響 は 気 候 だ け で は な い 。 海 氷 の 底 面 で プ ラ ン ク ト ン が 繁 殖 し 、 流 氷 と と も に 南 下 す る こ と で 豊 か な 漁 場 を 形 成 し て い る こ と や 、 海 氷 が 波 浪 の 発 達 を 抑 え て 塩 害 を 少 な く し て い る こ と 、 更 に 近 年 盛 ん に な っ た 流 氷 観 光 な ど 、 海 氷 は 北 海 道 の オ ホ ー ツ ク 海 沿 岸 の 各 種 産 業 や 生 活 に 深 く 関 わ っ て い る 。
ま た 、 結 氷 時 に 生 成 さ れ る 低 温 で 高 塩 分 の 重 い 海 水 は 、 オ ホ ー ツ ク 海 の 中 層 か ら 千 島 列 島 の 海 峡 を 抜 け て 北 太 平 洋 の 中 層 全 域 に 広 が り 、 北 太 平 洋 亜 熱 帯 域 に 広 く 分 布 す る 北 太 平 洋 中 層 水 の 起 源 と な っ て い る と い わ れ て い る 。
2 オホーツク海の海氷の監視
( 1 ) 診 断 に 用 い る デ ー タ
気 象 庁 で は1970年 か ら 、 毎 年12月 か ら 翌 年
5月 ま で 、 沿 岸 の 観 測 地 点 や 船 舶 及 び 航 空 機 に よ る 目 視 観 測 の 結 果 と 、 人 工 衛 星 に よ る 観 測 結 果 を も と に 、 オ ホ ー ツ ク 海 の 海 氷 域 を 解 析 し て い る 。 解 析 で は 、5日 ご と の 海 氷 の 有 無 及 び 密 接 度 ( あ る 海 域 に お け る 海 氷 の 占 め る 面 積 の 割 合 ) を 求 め て い る 。 本 診 断 で は 1970年12月 か ら2013年5月 ま で の デ ー タ を 使 用 す る 。
( 2 ) オ ホ ー ツ ク 海 の 海 氷 の 長 期 変 化 傾 向
図1.3.2-2は 、 積 算 海 氷 域 面 積 ( 前 年12月 か ら5月 ま で の オ ホ ー ツ ク 海 全 域 の5日 ご と の 海 氷 域 面 積 を 積 算 し た 面 積 ) と 、 各 年 ( 前 年12 月 か ら5月 ) の 年 最 大 海 氷 域 面 積 を1971年 か ら 時 系 列 で 示 し た も の で あ る 。 積 算 海 氷 域 面 積 は 、 各 年 の 海 氷 勢 力 の 指 標 と な る 。
積 算 海 氷 域 面 積 は1979年 に 最 大 値 を 記 録 し た 後 、 増 減 を 繰 り 返 し な が ら 減 少 し 、1996年 に 極 小 と な っ た 。 そ の 後 、 増 加 に 転 じ て1998 年 か ら2003年 ま で6年 連 続 で 平 年 を 上 回 り 、 2001年 の 積 算 海 氷 域 面 積 は1979年 と1980年 に 次 ぐ 第3位 の 大 き さ で あ っ た 。 そ の 後5年 連 続 し て 減 少 し 、2004年 か ら2013年 ま で は2012年 を 除 き 平 年 を 下 回 っ て い る 。2006年 に は 最 小 値 を 記 録 し 、2009年 は 第2位 の 小 さ さ と な っ た 。1971年 か ら の 傾 向 を み る と 、10年 で 平 年 値 の7.2% 程 度 の 割 合 で 緩 や か に 減 少 し て い る が 、 年 々 の 変 動 の 振 幅 の 方 が 大 き く 、 北 極 域 の 海 氷 域 面 積 ( 「1.3.1 全 球 の 海 氷 」 参 照 ) ほ ど 減 少 傾 向 は 明 瞭 で は な い 。
年 最 大 海 氷 域 面 積 も 積 算 海 氷 域 面 積 と ほ ぼ 同 様 に 推 移 し て お り 、1978年 に 観 測 開 始 か ら の 最 大 ( オ ホ ー ツ ク 海 の98% ) 、1984年 に 最 小 ( オ ホ ー ツ ク 海 の55% ) を 記 録 し 、2001年 は1978年 に 次 ぐ 第2位 の 大 き さ と な っ た 。 1971年 か ら の 傾 向 を み る と 、10年 で 平 年 値 の 3.7% 程 度 の 割 合 で 緩 や か に 減 少 し て い る 。
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年
図 1.3.2-2 オ ホ ー ツ ク 海 の 海 氷 域 面 積 の 経 年 変 動 ( 1971~ 2013年 )
積 算 海 氷 域 面 積 は 前 年12月 か ら5月 ま で の5日 ご と の 海 氷 域 面 積 の 合 計 値 。 最 大 海 氷 域 面 積 は 前 年12 月 か ら5月 ま で の5日 ご と の 海 氷 域 面 積 の う ち の 最 大 値 。 水 色 の 線 は 積 算 海 氷 域 面 積 の 変 化 傾 向 、 橙 色 の 線 は 最 大 海 氷 域 面 積 の 変 化 傾 向 を 示 す 。 平 年 値 は1981~2010年 の30年 平 均 値 。
図 1.3.2-3 月 別 積 算 海 氷 域 面 積 の 平 年 差 を 標 準 偏 差 で 割 っ た ( 規 格 化 し た ) 値 の 経 年 変 化 ( 1971 ~
2013年 )破 線 は 各 月 の 変 化 傾 向 を 示 す 。
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第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化 オホーツク海の海氷
図1.3.2-3は 、 月 別 積 算 海 氷 域 面 積 ( オ ホ ー ツ ク 海 全 域 の5日 ご と の 海 氷 域 面 積 を 月 ご と に 足 し 合 わ せ た 面 積 ) の 平 年 差 を 標 準 偏 差 で 割 っ た ( 規 格 化 し た ) 値 を 示 し た も の で あ る 。 1971年 以 降 の 傾 向 を み る と 、 す べ て の 月 に 減 少 傾 向 が み ら れ る が 、12月 ~2月 の 減 少 の 割 合 が3~5月 と 比 べ 大 き く 、1月 の 減 少 の 割 合 が 最 も 大 き い 。 こ れ ら は 、 オ ホ ー ツ ク 海 が 結 氷 す る 時 期 (11月 ~2月 頃 ) に 海 氷 の 生 成 や 広 が り が 遅 れ る 傾 向 が 顕 著 で あ る こ と を 示 し て い る 。
次 に 、 北 海 道 の オ ホ ー ツ ク 海 沿 岸 に あ る 網 走 で の 流 氷 の 推 移 を み る 。 こ こ で い う 流 氷 と は オ ホ ー ツ ク 海 中 ・ 北 部 か ら 北 海 道 沿 岸 に 南 下 し て く る 海 氷 を 指 し て い る 。網 走 で は 沿 岸 の 海 水 が 凍 結 し て で き る 海 氷 は わ ず か で あ り 、 観 測 さ れ る 海 氷 の 大 部 分 は 流 氷 で あ る 。
図1.3.2-4は 網 走 の 流 氷 期 間 ( 流 氷 初 日 ( 初 め て 流 氷 が 観 測 さ れ た 日 ) か ら 流 氷 終 日 ( 最 後 に 流 氷 が 観 測 さ れ た 日 ) ま で の 日 数 ) と 流
氷 初 日 ・ 終 日 の 平 年 差 を 示 し た も の で あ る 。 流 氷 期 間 は 少 し ず つ 短 く な っ て い る (10年 あ た り7日 程 度 ) が 、 長 期 的 な 変 化 に 比 較 し て 年 々 の 変 動 の 振 幅 が 大 き い 。 流 氷 初 日 と 流 氷 終 日 の 推 移 を み る と 、 オ ホ ー ツ ク 海 全 体 で は 海 氷 の 拡 大 が 遅 く な る 傾 向 が あ る も の の 、 流 氷 初 日 は ほ と ん ど 変 わ っ て い な い 。 一 方 、 流 氷 終 日 は 早 く な っ て い る (10年 あ た り4日 程 度 ) 。
オ ホ ー ツ ク 海 の 海 氷 域 面 積 と 網 走 沿 岸 の 流 氷 の 関 係 を み る と 、 積 算 海 氷 域 面 積 (12月 ~ 5月 ) と 流 氷 期 間 の 相 関 係 数 は0.61で あ る 。 ま た 、1月 の 月 別 積 算 海 氷 域 面 積 と 流 氷 初 日 の 相 関 係 数 は0.35、4月 の 月 別 積 算 海 氷 域 面 積 と 流 氷 終 日 の 相 関 係 数 は0.34、 と な っ て お り い ず れ も 相 関 関 係 は は っ き り し な い 。
3 診断
1970年 代 の 観 測 開 始 以 降 、 オ ホ ー ツ ク 海 の 図 1.3.2-4 網 走 の 流 氷 期 間 ・ 流 氷 初 日 ・ 流 氷 終 日 の 経 年 変 化 ( 1971~ 2013年 )
流 氷 初 日 ・ 流 氷 終 日 の 平 年 差 が 正 の 値 の と き は 平 年 よ り 遅 い こ と を 、 負 の 値 の と き は 平 年 よ り 早 い こ と を 表 す 。
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海 氷 域 面 積 に は 緩 や か な 減 少 傾 向 が あ り 、 ま た 、 網 走 の 流 氷 期 間 に は 短 く な る と い う 傾 向 が あ る 。 し か し 、 こ れ ら の 長 期 的 な 変 化 よ り も 、 海 氷 域 面 積 に つ い て は10年 程 度 の 周 期 の 変 動 の 振 幅 の ほ う が 、 ま た 網 走 の 流 氷 期 間 に つ い て は 年 々 変 動 の 振 幅 の ほ う が 大 き く 、 北 極 域 の 海 氷 域 面 積 の よ う な 明 確 な 減 少 傾 向 で は な い 。 こ の た め 、 現 段 階 で は 地 球 温 暖 化 の 影 響 の 度 合 い を 評 価 す る こ と は 難 し い 。
オ ホ ー ツ ク 海 と 北 極 域 の 海 氷 域 面 積 の 変 化 傾 向 の 違 い は 、 オ ホ ー ツ ク 海 の 海 氷 の 大 部 分 が オ ホ ー ツ ク 海 北 部 で 生 成 さ れ 、 そ れ が 風 や 海 流 に 流 さ れ て 南 下 す る 流 氷 で あ る こ と に よ る 。 オ ホ ー ツ ク 海 の 海 氷 の 分 布 は 、 気 温 だ け で な く 、 風 の 状 況 に 大 き く 左 右 さ れ る と 考 え ら れ て い る (Kimura and Wakatsuchi,1999,
2004) 。 実 際 、 厳 冬 の 海 氷 拡 大 期 で あ っ て も 、 発 達 し た 低 気 圧 の 東 側 で 吹 く 強 い 南 東 風 に よ っ て 海 氷 が 押 し 戻 さ れ て 海 氷 域 面 積 が 減 少 す る こ と が し ば し ば あ る 。ま た 、 流 氷 の 南 下 は サ ハ リ ン の 東 を 南 下 す る 東 樺 太 海 流 に よ る と こ ろ が 大 き く 、 オ ホ ー ツ ク 海 全 体 の 海 氷 域 が か な り 狭 く て も 北 海 道 沿 岸 の 流 氷 域 は 平 年 並 で あ る こ と も あ る 。
オ ホ ー ツ ク 海 の 海 氷 の 総 量 が ど の よ う に 変 動 し て い る か を 把 握 す る た め に は 、 氷 厚 の デ ー タ が 必 要 で あ る 。 Tateyama et al.
(2002) に よ り 、 人 工 衛 星 の マ イ ク ロ 波 放 射 計 の 観 測 値 か ら 氷 厚 を 推 定 す る 技 術 が 開 発 さ れ て い る が 、 そ の 検 証 の た め に 必 要 な 氷 厚 の 現 場 観 測 は 特 定 の 期 間 ・ 場 所 で 得 ら れ て い る だ け で あ り 、 オ ホ ー ツ ク 海 全 体 の 海 氷 の 総 量 が ど う 変 動 し て い る か に つ い て の 共 通 認 識 は 現 段 階 で は 得 ら れ て い な い 。
参考文献
Kimura, N. and M. Wakatsuchi, 1999: Processes
controlling the advance and retreat of sea ice in the Sea of Okhotsk. J. Geophys. Res., 104, 11137-11150.
Kimura, N. and M. Wakatsuchi, 2004: Increase and decrease of ice area in the Sea of Okhotsk: Ice production in coastal polynyas and dynamic thickening in convergence zones.
J. Geophys. Res., 109. C09S03, doi:10.1029/2003 JC001901.
Tateyama, K., H. Enomoto, Y. Toyota and S.
Uto, 2002: Sea ice thickness estimated from passive microwave radiometers. Polar meteorology and Glaciology, 16, 15-31.
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第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化 海洋の温室効果ガス
第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化 1.4 海洋の温室効果ガス