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1 海洋の二酸化炭素蓄積量の知識

第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化 1.4 海洋の温室効果ガス

1.4.3 海洋の二酸化炭素蓄積量

海洋の二酸化炭素蓄積量

診断概要

診断内容

地球温暖化の進行により、海洋の二酸化炭素吸収能力が変化することが予測される。大 気中の二酸化炭素濃度を左右する海洋の二酸化炭素吸収能力を監視するためには、二酸化 炭素の交換量だけではなく、海洋に蓄積された二酸化炭素量を把握することも重要である。

そこで、気象庁の東経137度線と東経165度線に沿った観測定線において取得したデータを 用いて、2012年と1990年代の海洋中に蓄積された二酸化炭素量の差を見積もることにより、

人間活動により排出された二酸化炭素の影響で変化した海洋中の二酸化炭素量について診 断する。

診断結果

東経137度の北緯10度から30度の海域では1994年と2012年の18年間の差が約120トン炭素 /km2(面積1平方キロメートルの海域あたりに蓄積した炭素の重量に換算)、東経165度の 北緯 10度か ら32度 の海 域で は1992年と 2012年 の20年 間の 差が 約120トン 炭 素/km2だ った 。 それぞれ1年あたり に 換算する と 東経137度 では約7ト ン炭素/km2、東経165度では約6トン 炭素/km2であった。東経137度及び東経165度の観測線ともに、海洋中の二酸化炭素蓄積量 は増加しており、その増加速度は1990年代の全海洋の吸収速度の平均(1年あたり約6トン 炭素/km2)とほぼ同程度であった。

第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化 海洋の二酸化炭素蓄積量 Khatiwala et al. (2009) は、最近の数十年では

二酸化炭素濃度の増加の割合に比べて海洋内 部の増加の割合が小さくなっていると報告し ている。それに対して、近年大気中の二酸化 炭素濃度の増加速度が速くなっていることが 報告されている(Canadell et al., 2007)。世 界 気 象 機 関 (WMO) 温 室 効 果 ガ ス 世 界 資 料 セ ン タ ー (WDCGG) の 解 析 で は 、 大 気 中 の 二酸化炭素 濃度の増加 速度は、1990年代にお

ける1年あたり約1.5 ppmと比較し て2000年代

で は1年 あ た り 約2.0 ppmと 見 積 も っ て い る

(WDCGG, 2012)。

大 気 中 の 二 酸 化 炭 素 濃 度 を 左 右 す る 海 洋 の 二酸化炭素吸収能力を監視するためには、二 酸化炭素の交換量だけではなく、海洋に蓄積 された二酸化炭素量を把握することも重要と なる。

(2)海洋中の二酸化炭素蓄積量

海 洋 内 部 に 存 在 す る 二 酸 化 炭 素 量 の う ち 、 産業革命以降における大気中の二酸化炭素量 の増加の影響による海洋内部の二酸化炭素の 増加量を人為起源の二酸化炭素量として間接

的 に 見 積 も る 方 法 が 提 案 さ れ て い る 。Sabine et al. (2004) は 、1990年 代 に 実 施 さ れ た 世 界 海 洋 循 環 実 験 計 画 (WOCE) 測 線 に お け る 観 測データを もとに、1994年までに 全海洋に蓄 え ら れ た 人 為 起 源 の 炭 素 量 を1180±190億 ト ン 炭 素 で あ る と 見 積 も っ た 。Waugh et al.

(2006) は、1994年までに縁辺海を除いた海洋

に蓄えられ た人為起源 の炭素量を940~1210億 ト ン 炭 素 で あ る と 報 告 し て い る 。 ま た 、 Khatiwala et al. (2009) は、海洋内部の人為起 源の二酸化炭素量を長期間にわたり見積もっ た 結 果 、1994年 で は1140±220億 ト ン 炭 素 、 2008年 に は1400±250億 ト ン 炭 素 で あ っ た と 報告している。

(3)海洋中の二酸化炭素蓄積量の分布

Sabine et al. (2004) で見積もられた、海洋 中 の 人 為 起 源 炭 素 量 の 分 布 を 図1.4.3-1及 び 図 1.4.3-2に 示 す 。 海 洋 で の 分 布 は 一 様 で は な く 、 北大西洋や南半球の中緯度域を中心とした海 域で二酸化炭素蓄積量が多い。大洋別にみる と 太 平 洋 で 約440億 ト ン 炭 素 、 大 西 洋 で は 約

400億トン炭素、イン ド洋では約220億トン炭

図1.4.3-1 海洋中の人為起源炭素量(IPCC, 2007)

産業革命以降1994年まで間に蓄積した人為起源炭素の鉛直積算量(mol/m2)。

およそ12倍するとトン炭素/km2となる。海洋全体では1180±190億トン炭素を蓄積していると推定される。

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素の人為起源の二酸化炭素を蓄積していると 見積もられている。

太 平 洋 は 大 西 洋 に 比 べ て 単 位 面 積 あ た り の 蓄積量としては少ないものの、面積が広いた め総量としては大西洋とほぼ同量であり、海 洋 全 体 の 約40%を 蓄 積 し て い る 。 北 太 平 洋 の 分布の特徴として、東側より西側で多く、ま た赤道付近より高緯度側で多くなっている。

大 洋 別 の 平 均 断 面 を み る と 、 数 百mか ら お お

むね1,000mの深さで人 為的な二酸 化炭素量が

増加しており、特に海面から深さ400m程度ま で に 増 加 し た 量 の 約50%が 存 在 し て い る 。 北 大西洋では 深さ3,000m付近まで人 為的な二酸 化炭素量の増加がみられるが、これは大西洋 の高緯度域では海洋表層の沈み込み(冬季の 混合や深層水の形成等)により、表層で二酸 化炭素を吸収した海水が海洋の深層まで運ば れることによる。

(4)太平洋の二酸化炭素蓄積量の最近の特 徴

最 近 の 二 酸 化 炭 素 蓄 積 量 の 動 向 を 詳 細 に 把 握 す る た め 、 各 国 の 研 究 機 関 等 に よ るWOCE 測線の再観測の結果から蓄積量の見積もりが 行われてい る。太平洋 においては 、1990年代 か ら2000年 代 に か け て 北 太 平 洋 で は1年 あ た り3~6ト ン 炭 素/km2、 南 太 平 洋 で は1年 あ た り5~12ト ン 炭 素/km2の 二 酸 化 炭 素 が 蓄 積 し て い る こ と が 報 告 さ れ て い る ( 表1.4.3-1) 。 1990年代の 海洋全体の 二酸化炭素 の吸収量は 1年 あ た り22億 ト ン 炭 素 と 見 積 も ら れ て お り

(IPCC, 2007)、1平方キロメートルあたりに 換 算 す ると1年 あ た り 約6ト ン 炭 素/km2で あ る 。 北太平洋で は、1990年代の全海洋 の吸収速度 の平均とほぼ同程度の速度で二酸化炭素を蓄 図 1.4.3-2 海 洋 ご と の 人 為 起 源 炭 素 の 平 均 濃 度

(IPCC, 2007)

1994年 に お け る 緯 度 方 向 に 平 均 し た 人 為 起 源 の 炭 素 量 の 断 面 図 (µmol/kg) 。 縦 軸 は 深 さ(m)、 横 軸 は緯度。

(a) 太平洋とインド洋の平均、(b) 大西洋の平均

表 1.4.3-1 南北太平洋の二酸化炭素蓄積速度

北太平洋 期間 増加速度(mol/m2/yr) 出典

165゚E, 40゚N-21゚N 1971-1992 0.83±0.19

Tsunogai et al. ( 1993) (180±41 gC/m2)

152W, 56N-20N 1973-1991 1.3±0.5 Peng et al. (2003)

30゚N 1994-2004 0.43 Sabine et al. (2008)

152゚W 1991/92-2006 0.25 Sabine et al. (2008) 149゚E 1993-2005 0.5±0.1 Murata et al. (2009)

南太平洋 期間 増加速度(mol/m2/yr) 出典

170゚E, 170゚W 1974-1996 0.9±0.3 Peng et al. (2003) 32S 1992-2003 1.0±0.4 Murata et al. (2007) 152W 1991-2005 0.41 Sabine et al. (2008) 110゚W 1994-2007/08 0.46±0.2 Waters et al. (2011) 32S 1992-2009/10 0.72±0.2

Waters et al. (2011) 0.79±0.2

第1章 地球温暖化に関わる海洋の長期変化 海洋の二酸化炭素蓄積量 積していると考えられる。