• 検索結果がありません。

欧米の環境 ODA

ドキュメント内 参議院委託調査 (ページ 110-135)

ドイツ、スウェーデン、米国

太 田 宏

はじめに

本章では、気候変動問題に焦点を当てながら、ドイツ、スウェーデンそして米 国の環境関連の政府開発援助(ODA)を概観し、気候変動問題の緩和策とその影 響に対する適応策に関連して、日本の ODA のあり方について提言を試みる。ド イツを比較の対象として選択した理由は、日本と政治経済状況や近現代史の観点 から類似点が多いこと、また、国際的な環境問題に関してリーダー的な存在だか らである。スウェーデンの環境分野での開発協力を概観する理由は、ドイツとと もに国際的なリーダーシップを発揮している事実と、同国の ODA が国際公約で ある国民総所得(GNI)の0.7%を超えていることも重要な比較の要素だからであ る。米国の環境関連の国際開発協力を概観する意義は、同国は日本と同じように GNIに占めるODAの比率は非常に低いが、ODAの総額では世界一なので、その 環境面での国際開発協力のあり方をみることに意義があると考える。

以下では、ドイツ、スウェーデン、米国に関して、まず、経済協力開発機構

(OECD)による各国の環境政策レヴューを簡単に紹介する。そして、ドイツと スウェーデンに関しては、気候変動問題への国際開発協力のあり方について、や や詳細にみる。米国に関しては、気候変動政策の中身を概観せずに、環境関連の 開発援助体制の構造のみに着目して、その概略図を描いてみた。今後政権が交代 して現在の体制が十分に活用されることになれば、環境関連の開発援助分野でリ ーダー的な存在になる潜在能力を秘めているという印象を強く抱いたからである。

最後に、とくに、気候変動問題の緩和策と同問題の影響に対する適応策について、

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第二作業部会の第四次報告書の内容に 触れながら、日本の環境ODAのあり方について提言をまとめた。

105

1.ドイツの環境国際協力(OECDレヴュー、2001年)

ドイツは、OECDの開発援助委員会(Development Assistance Committee: DAC)

諸国の中で、ODAの絶対額が四番目に多く、1998年に米ドルで55億8,000万を 拠出した。しかし、国民総生産(GNP)に占める割合はDAC平均の0.24%をわず かに上回る程度であり、DACの他の15カ国より対GNP比は低い。ドイツの二国 間 ODA の主な被援助国は、中国、エジプト、ニカラグア、ボスニアそしてイン ドである。

経済開発省に採用された1996年の開発政策構想は、貧困の軽減、環境と資源の 保全そして教育及び訓練を、ドイツの開発協力の三つの優先政策領域にしている。

同省の規定によれば、尐なくとも、二国間 ODAの四分の一は環境と資源(森 林、エネルギー効率、再生可能なエネルギー、土壌)の保全に第一義的かつ直接 に貢献するプロジェクトのために使われるべきであるとされている。1990-96年 の援助額の30%がこうしたプロジェクトに使われ、同省の目標は達成された。以 下に、ドイツの環境関連のODAについて概観する。

(1)ドイツの環境関連の開発協力(Federal Ministry for Economic Cooperation and Development, The German Government’s 12th Development Policy Report, 2005, I-XX, pp. 50–64を参照)

最新のドイツの開発協力報告書では、ミレニアム開発目標(MDG)に即したド イツの取り組みの評価と今後の取り組みが検討されている。MDG の環境関連の 目標および指標は、下の表にまとめた。

ミレニアム開発目標(全体の8目標と49指標のうちの一部)

目標7: 環境の持続可能性の確保 指 標

ターゲット9

持続可能な開発の原則を各国の政策や戦略に 反映させ、環境資源の喪失を阻止し、回復を 図る。

25. 国土面積に対する森林面積の割合

26. 生物多様性の維持を目的とした保護区域の 面積

27. GDP1,000ドル(購買力平価値)当たりのエ

ネルギー消費量

28. 一人当たりの二酸化炭素排出量及びオゾン 層を減尐させるフロンの消費量

29. 固体燃料を使用する人々の割合 ターゲット10

2015年までに、安全な飲料水と基礎的な衛生 施設を継続的に利用できない人々の割合を半 減する。

30. 浄化された水源を継続して利用できる人口 の割合

31. 適切な衛生施設を利用できる人々の割合

106

ターゲット11

2020年までに最低1億人のスラム居住者の生 活を大幅に改善する。

32. 安定した土地及び住居へのアクセスがある 世帯の割合

(出所) 国連開発計画(UNDP)東京事務所ホームページ(HP

http://www.undp.or.jp/aboutundp/mdg/mdgs.shtml200829日検索)

この国際的な目標である「環境の持続可能性の確保」に対して、ドイツは、と くに、将来世代の発展の機会を保障すべく、地方そしてグローバルな持続可能な 開発を支援している。事実、合計26カ国の開発途上国に対して環境と自然資源の 管理案件を支援している。その特徴は、貧困削減戦略に環境保全を取り入れた総 合的な視点である。なぜならば、途上国の貧困層が、砂漠化の拡大、海面上昇や 異常気象などの自然資源の搾取や環境破壊の深刻な影響を最も受けるからである。

ドイツ政府は、機能的な環境保護機関の設立や多様な利害関係団体と自然資源を どのように有効に利用するのかといった対話を支援している。

MDG の目標7に関しては、森林の保全と植林(とくに熱帯雤林)に力を注い でいて、二カ国援助プロジェクト(年間 1 億2,500万ユーロ)と生物多様性保全 条約の国際的な発展と政策の実施に積極的に取り組んでいる。現在までのところ、

生物多様性保全を進めるプロジェクトに対して、約 1億8,000 万ユーロの資金援 助をしている。ドイツは、地球環境ファシリティー(Global Environmental Facility:

GEF)への拠出に関して、世界で三番目に多く資金提供している国である。

環境に優しいエネルギー政策は経済発展を生態的に持続可能のものにしていく ことを保障する、というドイツの基本的なスタンスも同国の環境関連の開発援助 では顕著な特徴となっている。ドイツ政府は、2004年6月ボンで再生エネルギー のための国際会議(the International Conference for Renewable Energies)を開催し、

154 カ国の参加を得た。この会議を通して、ドイツ政府は、再生可能エネルギー が長期的に非常に重要で世界的に活用されるべきである、という将来展望を提示 した。同政府は、2015年までに、10億の人々が再生可能エネルギー資源からエネ ルギー供給を受けるべきだ、といった政策決定を行っている。2005年現在で、こ の目標を達成するために200の行動計画が採択されている。ドイツ政府は、省エ ネや再生可能エネルギーの利用を支援するために10億ユーロを提供し、5億ユー ロの基金も設立している。

こうしたドイツの再生可能エネルギー促進政策は、気候変動緩和策や適応策に 直接的に関連している。ドイツ政府は、京都議定書の第一約束期間(2008–12年)

107

内に温室効果ガス排出量1990年比21%削減を公約しており、2005年現在19%削 減を達成している。また、途上国に対して気候変動関連の開発援助を行っている

(次節で詳述)。

最後に、ドイツは国際的な水問題に関しても積極的に取り組んでいて、年間平

均 3億 5,000万ユーロを拠出する世界第二の資金提供国となっている。水供給と

衛生関連の開発援助の焦点は、総合的な水資源管理アプローチで、水の利用をめ ぐる紛争の回避を目的とした国際河川や地下水などの水資源管理などである。ま た、水資源分野での基盤整備を支援するアプローチとしては、新たな施設を建設 するというよりもむしろ、既存の水供給システムや下水道システムの修繕、再建、

効率性の改善などに重きをおいている。途上国の地方で求められているのは、適 正規模の分散型の供給と廃棄システムであり、水の利用者がそうしたシステムへ の投資と運営に関わったものであるのが望ましい。このようなアプローチは非常 に重要である。

( 2)ド イツの 気候変 動と開発 援助の 概要 (Federal Ministry for Economic Cooperation and Development (FMECD), ―Climate Change and Development,‖

October 2007, pp. 5–13)

ドイツの経済協力開発省によれば、開発協力は気候変動の緩和に役立つ。工業 国は、産業革命以来温室効果ガスを排出し続け、それ相応の排出削減の責任を負 う。しかし、途上国も気候の安定と持続可能な開発を追求する必要があり、ドイ ツの開発協力はその支援を目指している。

気候の安定策は生物の多様性の保全につながる。森林の伐採と火災は、世界の 運輸部門からの温室効果ガス排出より、気候変動に寄与する。たとえば、森林の 伐採は地球規模の温室効果ガス排出の五分の一に相当し、主な伐採は熱帯雤林で ある。ブラジルのみで、一日にサッカー・グランド 4,000 面ほどの森林面積が消 失しているといわれている。その主な原因は、バイオ燃料のためのアブラヤシや 大豆の栽培である。森林の保全は気候変動の緩和にとって極めて重要なので、ド イツは開発協力として、森林の保全と持続可能な管理支援プロセスとプロジェク トを援助する。たとえば、ブラジルの熱帯雤林を保全するためのパイロットプロ グラム(PPG7)やコンゴ盆地の川岸の州委員会(COMIFAC)の支援などがある。

森林の保全には十分な資金が必要で、長期的には地球規模の排出取引システム より捻出することが考えられる。森林保全のための財政的インセンティブが提供

ドキュメント内 参議院委託調査 (ページ 110-135)