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政府開発援助に関する人材の育成

ドキュメント内 参議院委託調査 (ページ 155-178)

長 有 紀 枝

主要先進国の政府開発援助に関する人材育成の制度や動向をみる本章では、ま ずはじめに、(1)現在日本で実施されている開発援助人材の育成のための研修制 度やキャリアパス制度を確認する。次で、とくに課題となっている(2)国際平 和協力活動や平和構築要員養成のための研修および訓練制度、(3)国連職員養成 のための制度、の2点に焦点を絞った現状の報告を行い、それぞれの項目の最後 に提言を行いたい。

1.開発援助人材の育成のための研修制度

(1) 国際協力機構(JICA)国際協力総合研修所による人材育成

日本の政府開発援助(ODA)に係る人材育成の中心的役割を担っているのは、

JICA国際協力総合研修所(国総研)である。JICA国総研は、1983年に設立され、

援助事業の戦略や援助手法に関する調査研究とこれらに関する情報発信、および 開発援助人材の育成を事業としている。担当は人材養成グループの援助人材育成 チームおよび能力開発支援チームである。

国総研の人材育成関連事業の関係費は、JICA予算の人材養成確保事業費の一部 をなすが、2007 年度予算で15-16億円弱であり、3.2%の予算の一律カットの対 象になっている。

JICA は 2008 年 10 月に国際協力銀行(JBIC)との統合を控えているが、JBIC には JICA 国総研と競合する人材育成機関や制度がないため、統合後も国総研の 人材養成グループが引き続き日本の ODA にかかる人材育成を一義的に行うこと になる。

① 3つの人材育成事業

JICA国総研の邦人向け事業の内容は、専門家などの能力強化、援助人材の養成、

国際協力を担う人材の裾野拡大の3事業に分かれている。

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(ア)専門家などの能力強化

専門家の派遣前研修、現地語学研修、能力強化研修(旧技術専門家養成研 修)からなる(邦人以外を対象としたものとしては、ほかに海外開発専門家 招聘事業がある)。

【専門家の派遣前研修】:赴任直前の専門家を対象とする研修で、全専門家に 必須の共通研修(5日間)、専門家の業務タイプごとに行うタイプ別研修(10 日間)、語学研修(1週間)からなる。JICA は、国際協力人材に求められる 6つの能力・資質として(a)分野・課題専門力、(b)総合マネジメント力、

(c)問題発見・調査分析力、(d)コミュニケーション力、(e)援助関連知識・

経験、(f)地域関連知識・経験の6分野を挙げ、これを専門家の派遣前研修 に生かしている。(2006年度実績:339名)

【現地語学研修】:技術協力の円滑かつ効果的な実施のために、現地語の語学 力向上が必要と認められる長期派遣専門家に対し、赴任国で現地語(英語は 対象外)の研修を行う制度である。(同122名)

【能力強化研修(旧技術専門家養成研修)】:将来、JICA専門家として活躍が 見込まれる人材を対象とした短期研修で、平和構築・復興支援、HIV/エイズ 対策、教育、実務者・コンサルタントのための環境社会配慮、保健と開発(プ ロジェクト発掘・形成の能力強化)、村落開発のためのエネルギー供給とジェ ンダー、実務者(自治体職員等)のための国際協力基礎コース等がある。内 容や期間は、国内のみの2日間から海外を含む4週間コースまで対象者別に 弾力的に設定されており、各コース8-20名程度を公募により選考している。

(同104名)

(イ)援助人材の養成

ジュニア専門員、海外長期研修/国内長期研修、専門家養成個人研修の3 部門からなる。

【ジュニア専門員】:青年海外協力隊(JOCV)、ジュニア・プロフェッショ ナル・オフィサー(JPO)制度、非政府組織(NGO)などで海外における国 際協力の実務経験を有し、将来にわたり国際協力の分野で活動することを志 す若手人材を対象に、分野ごとに JICA での実務研修の期間を提供する制度 である。現在、とくに人材が不足しているとして重点的に募集しているのは、

行政、経済政策・貿易・投資、環境管理、自然環境、教育、水資源・防災対 策、農業開発/農村開発、中小企業振興、資源・エネルギー、保健医療の10

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分野であるが、さらにJICAが重視するイシュー/アプローチとして、評価、

参加型開発、貧困削減、ジェンダー、平和構築の5分野が挙げられている。

委嘱期間は国内実地研修(約1年)と海外実地研修(約2年)を合わせ計3 年以内で、年2回の公募(37歳以下)により、各回 20名程度を採用してい る。(2006年度実績:新規30名、継続106名)

【海外長期研修/国内長期研修】:将来、国際協力分野で活躍する人材を要請 するために、専門分野の研鑽を目的として国内・海外の大学院(修士レベル)

等教育機関で実施する研修制度である。研修期間は原則1年、最長2年間で 毎年30名程度の内、約半数を公募(35歳以下)し、残り半数をJICA内部で 職員を対象に選考している(同新規22名、内公募11名)。

【専門家養成個人研修】:各分野での実務経験(5年以上)を有し、開発途上 国の現場で即戦力の専門家として活躍が期待される人材を対象とした実務・

技術研修制度で研修期間は6カ月である。対象は JICA 専門家および企画調 整員経験者、JICA事業未経験者、具体的な派遣候補案件を有する専門家等経 験者および地方自治体職員等である(同新規8名)。

(ウ)国際協力を担う人材の裾野拡大

国際協力を担う人材の裾野の拡大を目的としたインターンシップ・プログ ラム研修がある。これは、国際協力や開発学等を研究している本邦および海 外留学中の大学院生を対象に、国内外のJICA機関での実習を通じJICA事業 を理解し、将来の国際協力人材を育成する事業である(2006 年度実績:49 名)。

② JICA国際協力総合研修所による人材育成後のキャリアパス

(ア)国際協力専門員へ

JICAでは、国総研設立と同時に、国際協力専門員制度を設けており、専門 員あるいは専門家になることが JICA の人材育成事業の一つのキャリアパス と位置付けられている。国際協力専門員とは、国際協力業務をライフワーク として志向し、技術協力の総合的プロとして、また各分野のスペシャリスト として JICA の国際協力事業の中核を担う開発援助のプロ集団とされ、JICA 事業の質の向上を担う役割が課されている。海外では主に JICA 専門家、在 外事務所アドバイザー、各種調査団団長/団員として活動し、国内ではJICA のインハウス・コンサルタントとして、講師をつとめたり、JICA各事業部に 対する技術的・専門的見地からの助言等を行っている。

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たとえば青年海外協力隊から国際協力専門員までのキャリアパスモデルで は、大学等を卒業し実務経験を積み、あるいは修士号を取得したあと、青年 海外協力隊員へ(2年)、その後海外・国内長期研修(1-2年)を受け、ジ ュニア専門員(3年)へ、その後専門家養成個人研修(6カ月)を経て派遣 専門家・企画調整員を経験(2年程度)、その後国際協力専門員という経路が 示されている。なお、このモデルを用い、国際協力専門員ではなく、国際機 関や研究機関への就職の道も同時に示されている。

(イ)ジュニア専門員のフォローアップ

援助人材養成事業の中で、3年間の研修を行うジュニア専門員制度は、実 務研修の場として貴重な機会となっている。このフォローアップ調査(2005 年10月実施)によれば、終了者の66.2%が国際協力関連業務についており、

一定の成果をみせている。

③ 平和構築との関係

今後の国際協力において重点課題の一つである平和構築分野では、JICA開発機 関として地域開発や法制度構築支援に力を入れている。国総研が行う人材育成事 業の中で、平和構築そのものに関連しているのは、専門家を対象にした能力強化 研修プログラムと、ジュニア専門員制度の2つである。

能力強化研修では、2004年より「平和構築・復興支援」コースを設け、平和構 築に資する開発援助の役割とは何かを明確にすることを目的に、国内研修(1週 間)と海外研修(2週間)からなる約3週間の研修コースを年1回実施している

(募集人員8名程度)。人材を何時でも現場に派遣できるように備えるためのもの であるが、修了後のキャリア保証がなかったことが大きな問題となった経緯を教 訓として、2006年度からは、既に仕事や専門性を持っている人々を対象に、追加 的に平和構築の研修を行うなどの措置が取られている。

ジュニア専門員制度では、JICAが重視するアプローチ/イシューの一つとして、

平和構築がある。平和構築は2001年度からジュニア専門員制度の分野に入れられ たが、2001年度以降 07年度までのジュニア専門員委嘱者総数247名のうち、平 和構築分野に応募し採用されたものは 14 名で、全体の 5.6%にとどまっている

(2008年2月1日現在のジュニア専門員総数88名のうち、平和構築分野は4名 で、全体の4.5%である)。

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