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主要先進国の動向(1)

ドキュメント内 参議院委託調査 (ページ 33-55)

イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン

松 隈 潤

1. 概観

(1)はじめに――DACメンバーによる政府開発援助の動向

本章においては主要先進国の政府開発援助(ODA)の動向を分析するにあたり、

ヨーロッパの4つの国を事例として検討する。具体的にはイギリス、フランス、

ドイツ、スウェーデンを対象とするが、まずそれらの国々のすべてがメンバーと な っ て い る 大 き な 枞 組 み と し て の 経 済 協 力 開 発 機 構 ・ 開 発 援 助 委 員 会

(OECD/DAC)からの視点で近年の世界の政府開発援助の動向について簡単に概 観してみたい。

2005年度にはほとんどのDACメンバーが政府開発援助を増額する内容の中期 計画を発表した。これは DACメンバーによるODA総額が2004年度の800億ド ル程度から2010年度には1,300億ドル程度に増加する予定であることを意味して いる。

2005年度にはDACメンバーによるODA総額は1,068億ドルに達した。しかし、

これには例外的な側面がある。すなわち、この中の180億ドルは2004年度のイラ ク、2005年度のナイジェリアに対する債務免除に関する国際的合意に基づくもの であったからである。また、アフガニスタンとイラクに対する開発プログラムの 顕著な増加により、これ以外の国々を対象とする援助の増加は大きなものではな かった。そのため、非政府組織(NGO)の中にはDACによるODAの定義を変更 するように求める声もあった。すなわち、債務免除は ODA に対して追加的に計 上すべきものであり、「実際の援助」のみをODAとして計上すべきであるとする 見解である。

2006年度にはDACの23のメンバーは1,000億ドル規模の公的資金を政府開発 援助として支出した計算になる。これは世界の政府開発援助総額の実に90%を占

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またDACメンバーの最近の傾向として、NGOへのODA委託額は大きくなっ てきていること、EC の多数国間チャネルとしての位置づけが大きくなってきて いること、地域的にみると中東へ向けられた援助の額が大きくなってきているこ と、最貧国に向けられる援助の割合が高まってきていること等を指摘することが できるであろう。

2005年に採択された「援助効果に関するパリ宣言」は、ドナーとパートナー国 の間のより成熟した関係を推進することによって、開発に対する援助の効果を増 大させることを目的とするものである。そこで用いられている指標はオーナーシ ップ(パートナー国は開発政策、戦略、調和のとれた開発行動につき効果的なリ ーダーシップを発揮する)、アラインメント(ドナーはすべての支援をパートナー 国の国家開発戦略、制度、手続きの上に実施する)、調和化(ドナーの行動をより 調和化された透明性の高い、集合的に効果的なものとする)、援助のアンタイド化、

開発成果マネージメント、相互説明責任等である。

さて、DAC事務局はDACメンバーの政府開発援助の動向について定期的に評 価を行い、「戦略」、「組織のマネージメント」、「実施のマネージメント」といった 諸側面に対して提言を行ってきている。DAC による開発協力報告書においては、

これまでの検討と評価をふまえて提言すべき内容として12の「教訓」がまとめら れている。それらを要約すると以下の通りである。

①立法によるものであれ、そうではないかたちであれ、幅広いオーナーシップ を有し、十分に長い期間、適切性を有することができる「開発協力の目的に 関する明確なトップレベルの文書」をもつことが重要である。

この点については、本章において後に検討するイギリスの事例は模範的である とされる。すなわち、2002年に制定された国際開発法と単一の援助官庁であるイ ギリス国際開発省(DFID)の存在が重要であると看做されている。

また、今日、DACメンバーのうち3分の1強のメンバーが、包括的な開発法制 を有していることは特筆すべきことであろう。

②競合する国益の調整という文脈においては、短期的な圧力が効果的開発とい う長期的な共通利益を損なってしまうことがないようにすることが重要であ る。

すなわち、短期的には国益は多様であったとしても、長期的にみた場合にはす べてのDACメンバーが(そしてすべての国家が)「開発途上諸国が持続可能かつ

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幅広い基礎を有した発展を達成すること」に共通の利益を有しているということ を認識すべきであり、これはミレニアム宣言においても確認されていることであ る。

③明確な任務を設定し、政策が「その貧困国に対する影響」によって評価され ることを確保するメカニズムを樹立することが重要である。

この点では開発に関し、政策の一貫性を実現することが重要となる。本章にお いて後に詳細に検討するスウェーデンの事例は国際社会において積極的に評価さ れている。スウェーデンは国家政策が国境を超えた問題に取り組む必要性がある こと、また、国家の決定は国際的影響を有するということを認識してきた。国内 政策のレベルにおいては2003年に「全地球的発展のためのスウェーデンの政策」

を国会承認した。これは全地球的発展という目的を達成するために、各分野の政 策における一貫性を確保することを強調したものである。その実施について政府 は議会に対して年次報告書を提出することを要求されている。この報告書は政策 の一貫性を検討するにあたってその基礎となり得るものである。

④援助によって資金を提供された活動の結果について、情報を伝え、評価する ことに力を注ぐことが重要である。

これは開発援助に対し国民の意識を高めることが戦略的にも重要であるという 視点からの提言であり、国際社会においては開発教育等の面でアイルランドの事 例が積極的に評価されている。

⑤十分に高いレベルにある、国民に責任を有する者に対して、効果的な開発協 力の実施について、政治レベルで明確な責任を負わせることが重要である。

これは組織のマネージメントに関する提言である。DACメンバーの中で開発に 特化した省庁を有する国は2カ国に過ぎないが、開発に関する政治的リーダーシ ップの構造がより良く機能するものとなるように工夫することが重要である。

⑥国家レベルで一貫性のある活動を助長するように二国間援助の構造を合理化 することは重要である。

二国間援助の政策立案とその実施について、イギリス、フランス、ドイツ、ス ウェーデンは異なったシステムを有している。政策立案と実施が単一の機関に委 ねられているのはイギリスであり、国際開発省(DFID)という単一の援助官庁を 有している。フランス、ドイツ、スウェーデンの場合は政策立案とその実施に関 する主要な責任が別々の機関に委ねられている。スウェーデンの場合、政策立案 は外務省が行い、実施は国際開発庁(Sida)である。ドイツの場合は連邦開発協

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力省(BMZ)という特別の官庁が政策立案を行い、実施機関としては技術協力公 社(GTZ)と復興金融公庫(KfW)等がある。フランスの場合、政策立案は、無 償資金協力、技術協力を外務省が、有償資金協力を経済財政産業省が担当し、実 施機関としては開発庁(AFD)等を有している。

⑦多数国間援助の異なった側面に責任を有する機関の間でさらなる一貫性を促 進することが重要である。

DACメンバーはODAの大きな割合を多数国間援助に向けている。2005年度の 統計によれば債務免除を除くと DAC メンバーの平均値としては ODA 予算の約 30%を多数国間援助に割り当てている計算になる。よってその調整は重要なテー マとなる。国際開発銀行を通じての援助に責任を有している官庁は、フランスは 経済財政産業省であるが、イギリスは国際開発省、ドイツは連邦開発協力省、ス ウェーデンは外務省である。

⑧フィールドへ責任を委譲していくことは有益となり得るが、無駄のない、質 の高い支援システムを必要とする。

ローカル・オーナーシップの重要性は DAC メンバーに広く共有されている。

このことは二国間援助において、ドナーの間で戦略、実施、評価等の面で協力や 分業を進めていくにあたって有益であると言うことができる。EC による援助に おいてもフィールドへの権限委譲が進められてきている。

⑨ドナーが、援助の効率性を高めつつ、他方で援助に携わっている人員数との 割合では今後、より大きな援助を実施することが要求されている場合には、

援助の実施に関する根本的な改革が必要不可欠である。

ODA総額はDACメンバーにおいて近年増加している傾向にあるが、これは債 務免除によるところが大きいので、実際にプロジェクト・ベースでの援助を増加 させていくにあたっては今後、援助実施組織の能力についてさらなる検討が必要 となってくるであろう。

⑩ほとんどの DAC メンバーについては、その活動をより尐ない国家、より尐 ない分野、とくにより尐ない活動に集中していくべきであると言うことがで きる。

この点で 2007年に欧州連合(EU)理事会が合意した開発援助の分業に関する 行動規範は欧州委員会および EU加盟諸国間における援助の効率性を高める試み として注目されている。

⑪成果マネージメントについて、いっそう強い文化を発展させ、それに応じて

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