○:正極性沿面放電
△:負極性沿面放電
30 40 50 60 70 80
印加電圧波高値Vm (kV)
図4−2
印加電圧波高値一沿面放電進展長特性(湿潤状態)
保ち、実験条件を統一した。
4.3 実験結果および考察
4.3.1 沿面放電の進展長
図4−2は、正極性、及び負極性沿面放電における印加電圧波高値
(以下、V。と略す)と沿面放電進展長Lの関係を示したものである。
横軸のV。の値は、絶対値を示している。各測定点は10回の測定の平均 値を表す。そのばらつきは、正極性、負極性沿面放電とも約±10%であ
った。同図より、正極性沿面放電の進展長は、V。の上昇とともに単調 に増加し、乾燥状態のときの進展長特性(第3章、図3−1)との差は ほとんど見られない。すなわち、正極性沿面放電の進展長は、電線表面 の乾燥、湿潤状態によって変化しないと言える。一方、負極性沿面放電 の進展長も正極性沿面放電と同様にV。の上昇とともに単調に増加して
、.、ノー
]
バインド線 1cm
]
1cm/ 絶縁電線
水滴 水滴
(a)バインド線先端の様相 (b)進展途中の様相
Vm=一80kV,L=50cm Vm=一80kV,L=48cm
図4−3 正極性沿面放電の進展様相(湿潤状態)
いる。この場合、電線表面が乾燥状態にあるときに見られるような進展
長の急変点(第3章、図3−1のB点)は存在しない。そのため、乾燥 状態(第3章、図3−1)と図4−1を比較すると、例えば、V・:80
kVのときの進展長では、電線表面が湿潤状態にあるときの方が、乾燥 状態にあるときよりも約2.8倍長くなっている。また、V。が低いときの 進展長は、乾燥状態のときの方が長くなっている。4.3.2 沿面放電の進展様相
(A)正極性沿面放電
図4−3は、正極性沿面放電の典型的な進展様相である。同図(a)
は、バインド線先端の様相を示したものである。乾燥状態のときと同様 に、電線表面からのジャンプ現象が認められる。また、放電は電線表面
N、 ○電子
一Vm ・・・・・・・・・・・・・・… 一一一・・・・・・・・・・・… 一・・・・… 一一・・・・・… 一一・・・・・・・・… 1 ..............................................。..................\
心線
水滴 絶縁電線 図4−4 正極性沿面放電の進展モデル(湿潤状態)
のみならず水滴表面にも進展する場合がある。 (b)は、バインド線先 端から30cm離れた位置における進展様相を示す。この場合も電線表面 からのジャンプ現象が認められる。図4−4は、湿潤状態における正極 性沿面放電の進展モデルを示す。正極性沿面放電の進展は、放電先端の 電界により空気中の電子が加速され、窒素分子などの中性分子に衝突し、
その際に生じる衝突電離によって起こる。このとき、発生した電子は、
放電先端に飛び込み、正イオンは心線の負電位に引かれ、電線表面に吸 着し正極性沿面放電を形成する。衝突電離により発生した電子は、任意 の方向から放電先端に飛び込むため、電線表面の水滴の有無により放電 の進展は、何ら影響を受けない。そのため、正極性沿面放電は、乾燥、
湿潤状態で進展様相が変化しないものと思われる。
(B)負極性沿面放電
図4−5は、負極性沿面放電の典型的な進展様相である。同図(a)
はバインド線先端の様相を示したものである。この場合の放電は電線表
]
バインド線 1cm
]
1cm/ 絶縁電線
水滴 水滴
(a)バインド線先端の様相 (b)進展途中の様相
V㎜=80kV,L=35cm Vm=80kV,L:38cm
図4−5 負極性沿面放電の進展様相(湿潤状態)
面だけではなく、水滴表面にも進展している。しかし、乾燥状態(第3 章、図3−4)で認められたような電線表面上の規則正しい筋状の放電 は見られない。 (b)は、バインド線先端から30cm離れた位置におけ る進展様相を示す。この場合も、電線表面には規則正しい筋状の放電は 見られない。また、乾燥状態で観測された放電先端のジャンプ現象も生 じない。図4−6に示されるように、電線下部に滴っている水滴は、付 着具合によって大きさは様々であるが、その高さは、平均約3〜5mm である。しかも、水の比誘電率は81であるため、水滴表面では、心線電 位による電界が電線表面よりも緩和される。負極性沿面放電の場合、放 電の幹を成すリーダは、電線下部に滴っている水滴表面に沿って進展す る傾向が強いため、電線表面電界の影響を受けにくく、ジャンプ現象が
/
絶縁電線心線
水滴 水滴
3〜5mm
\
負極性沿面放電図4−6 水滴表面における負極性沿面放電の進展
抑制されることになる。このため、進展長は、図4−2のように、V。
の上昇とともに単調に増加することになる。
図4−7は、水滴表面を進展する負極性沿面放電のモデル図を示す。
負極性沿面放電が、水滴表面に沿って進展する理由は、以下のように考 えられる。負極性沿面放電の進展には、放電先端からの電子放出による 衝突電離が重要な役割を果たす。水滴内部のような液体中においては、
気体中よりも分子間距離が短く、また、水の分子は結合力が強く電離が 起きにくい。そのため、放電は水滴の中を通らず、電離が生じやすい空 気と水滴の境界面に沿って進展していくこととなる。
4.4 結 言
模擬誘導雷を絶縁電線の心線に印加し、電線表面を進展する沿面放電 の進展長及ぴ進展様相を詳細に調べ検討を加えた。本章では、電線表面
絶縁電線
/
負極性沿面放電
・⑤⑭⑬①一水滴
N2 + 窒素分子
回4−7 水滴表面を進展する負極性沿面放電のモデル図
が湿潤状態にある場合に着目して実験を行い、乾燥状態の場合と比較検 討した。その結果、次のような新しい知見を得た。
(1)正極性沿面放電には電線表面からのジャンプ現象が認められ、
電線表面のみならず水滴表面に沿っても進展する。その進展長はV。
の上昇とともに単調に増加し、乾燥状態の場合における特性との差 異はほとんど見られない。
(2)負極性沿面放電は、電線の下部に滴っている水滴表面に沿って 進展する傾向がある。また、乾燥状態の場合に存在する細い筋状の 放電は見られず、放電先端でのジャンプ現象も生じない。沿面放電 の進展長は、V、の上昇とともに単調に増加し、乾燥状態のときに 見られたような進展長の減少する領域は存在せず、正極性沿面放電 の進展長特性とほぼ同じ傾向を示す。
(3)以上より、電線表面が湿潤状態にある場合では、絶縁電線に高 い雷サージ電圧が侵入すると正、負いずれの極性の沿面放電が進展
しても電線溶断の危険性を増すことが指摘される。
策5章 架空絶縁電線表面の沿面放電
に及ぼす電線表面電界の影響(80・川
5.1 緒 言
電線表面の沿面放電現象を複雑にしている要因として、誘導電サージ が電線の心線に侵入するため、沿面放電にとって背後電極となる心線の 電位が、放電の進展とともに変化することが挙げられる。本章では、心 線電位とこの電位が作る電線表面電界の影響を明らかにするために、以 下の実験を行った。第1に、電線の心線にインパルス電圧を印加した場 合、及びその対比実験として、バインド線にインパルス電圧を印加し、
心線を接地してアース電位に固定した場合の、両者における沿面放電の 進展長と進展様相の相違を比較検討した。第2に、インパルス電圧の時 間変化に伴う電線表面電界の変化が沿面放電に及ぼす影響を明確にする ための実験を行った。電線の下方に下部電極として銅板を配置し、電線 の中心と下部電極間の距離hを種々変化させ、下部電極を接地し心線に 電圧を印加して、電線表面電界を増大させた場合、及び下部電極と心線 の両方に同一のインパルス電圧を同時に印加し、電線表面電界を減少さ せた場合の両者について、正極性、及び負極性沿面放電の進展長と進展 様相を詳細に観測した。
その結果、負極性沿面放電先端に現れる放電形態の変化は、電線の心 線にインパルス電圧を印加した場合に現れる特有の現象であることが明
らかになった。また、電線表面の電界変化による負極性沿面放電の進展 長、進展様相の変化過程がより詳細に判明した。すなわち、電線の心線
に誘導雷が侵入した場合に発生する電線表面の沿面放電と、背後電極が アース電位に固定された場合の沿面放電とは異なる特性を示す。このた め、雪害対策を検討する上で、このような特性の考慮が重要であること
が示唆される。
5.2 実験回路および実験方法
実験回路を図5−1(a)、 (b)、及び図5−2(a)・ (b)に 示す。それぞれの回路に印加する模擬誘導雷電圧は、インパルス電圧発 生器(IG)により発生させた標準雷インパルス電圧である。本章では、
以下の四つの実験を行った。
実験1:電線の心線に電圧を印加した場合(誘導電サージ電圧が心線
に侵入した場合を模擬)。図5−1の実験回路1(a)を使
用。誘導雷を模擬するため、電線の心線にインパルス電圧を 印加した。また、バインド線を放電電流観測用の抵抗(50Ω)を通して接地した。
実験2:電線の心線を放電電流観測用の抵抗(50Ω)を通して接地し、
バインド線に電圧を印加した場合(実験1との対比実験)。
図5−1の実験回路1(b)を使用・
実験3:電線表面電界を変化させる目的で、電線の下方hの距離に、