第 6 章 マシニングセンタの機上計測システムの
6.2 機上計測システムの提案および検証
6.2.2 機上計測システムの概要
6.2.2.3 機上計測システムで取得可能な AE 信号とシステムの応答性
図6.4にシステムを始動させて停止するまでに取得できるAE信号のイメージ を示す.図6.5に工具が被削材に接触して,AE信号を検出して停止するまでの 工具動作の模式図を示す.本機上計測システムでは,システム応答の遅れとAE 信号の関係を検証するために上述の 3 種類の信号を取得および記録できるよう にしている.接触により検出されるAE原波形は,AE計測装置により包絡線検 波処理され,エンベロープ信号に変換される.さらに,図2.6に示したようにエ ンベロープ信号は二つのしきい値を利用して,負論理を用いたイベント信号に 変換される.イベント信号は,エンベロープ信号が図 2.6 に示した VH(ハイレ ベルしきい値)を超えると0 V,VL(ローレベルしきい値)より小さくなると5 V で出力される.二つのしきい値のうちの VL値は,AE 計測装置の最小設定値 に設定する.VH値は,ノイズによる誤動作をなくすために,AE原波形を確認し,
ノイズレベルよりも大きい値に設定した.変換されたイベント信号はマシニン グセンタの割込み信号として使用する.
取得したAE信号とシステム応答の遅れの関係から図6.4のα, β, γ, δ の 領域に区分して考える.
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α:工具が被削材に接触してからAE 計測装置がイベント信号として認識するま での時間
β:エンベロープ信号がイベント信号に変換されてからマシニングセンタが割込 み信号と認識するまでの時間
γ:マシニングセンタが割込み信号を取得してから工具が停止するまでの時間 δ:工具が被削材に接触してから停止するまでの時間
ここで,δ = α + β + γの時間が本計測システムの遅れに相当する.すなわち図
6.5に示す被削材への接触深さQγmmになる.αとβは,計測システムが割込み 信号として検知するまでの遅れである.t1とt2はイベント信号の持続時間を示し ている.イベント信号がフォトカプラの応答時間の1 ms以上持続すると割込み 信号としてマシニングセンタに入力される.このフォトカプラにより,突発的な 持続時間の短いノイズの対策をしている.
γは,マシニングセンタの制御系応答の遅れに相当し,割込み信号を利用して,
マシニングセンタを停止させる時間となる.この遅れは,マシニングセンタの時 定数などの工作機械の制御系特性に依存し,マシニングセンタが安全に停止で きるように設定された時間である.図6.6は一般的なマシニングセンタにおける 制御系の応答遅れの模式図を示す.マシニングセンタの制御系応答遅れ時間は T1:制御装置の処理の遅れ,T2:減速に必要な距離(切削時定数),T3:サーボの 遅れにより動く距離(サーボ時定数)を加算することで求めることができる.し かしながら,この値は工作機械の制御装置特性や設定パラメータによって異な り,一般的には公開されていないものもある.本システムのマシニングセンタの 制御系の遅れは,図6.6の T1 + T2 + T3の斜線部の面積になる.この一般的に使 用されているマシニングセンタ制御系の遅れによる接触深さは,式(6.1)のよ うになる1).なお,接触深さをQγ mm,アプローチ速度Fap mm/min,切削時定 数Tc msec,サーボ時定数Ts msecとする.
Qγ= Fap × 1
60 ×( 20
1000+ Tc
1000+ Ts
1000) (6.1)
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これらのパラメータも一般的には公開されておらず,工作機械の進歩により式
(6.1)も変化を遂げているとされている.そこで,本実験においてマシニングセ ンタの制御応答の遅れによる接触深さ Qγは,図 6.5 の近似直線で囲まれる赤色 部の面積とし,式(6.2)を利用することとする.マシニングセンタ制御応答の 遅れによる時間T1 + T2 + T3は,図6.4のγに相当する.
Qγ= Fap × γ × 1
2 (6.2)
本機上計測システムにより,マシニングセンタの遅れをAE信号から解析する ことで,遅れ量を定量化でき,工具長および工具径の計測のときに遅れ量を補正 すれば,高精度な計測が実現できる.
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Interrupt signal Tool stop Tool decelerationTool approachTool contact
Interrupt signal undetected
Eventsignal AEsignal waveform
High threshold Low threshold Event signal undetected αβγ
Envelope signal waveform δ
5 0
Ev ent amp lit ud e, V
AE amp lit ud e, V
Time, ms
t1t2 (t1<1ms)(t2≧1ms) Fig. 6.4 AE signal detection image by on-machine measurement system.
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Z X
WorkpieceWorkpieceWorkpiece
Tool approach Interrupt signal detection position Tool stop position
:Qδ,Contact depth δContacttime
1. Contact between tool andworkpiece2. Interrupt signal detection3.Tool stop #① #② Delay time α,βDelay time γ
Tool Tool Tool
Constant velocityDeceleration Fig. 6.5Schematic diagram of the tool motion of on-machine measurement
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Fig. 6.6 Schematic diagram of the response delay of the control system of the machining center.