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楽曲と色彩の間接的な対応関係に関する研究

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第 3 章 楽曲検索における感性情報としての色 彩情報の利用可能性彩情報の利用可能性

3.3 楽曲と色彩の間接的な対応関係に関する研究

ている被験者が多かったと報告していることは,非常に興味深い.

長田ら(2003)の研究結果を考慮すると,楽曲検索における感性情報として,色 聴保持者に関する研究から得られた知見を応用することは,現状において困難であ ると考えられる.第1に,楽曲検索システムの普及を考慮した場合,共感覚保持者 は数万人に1人という極めて稀な存在であり[4, 39],一般のユーザ層としては,非 共感覚保持者が圧倒的に多い.第2に,楽曲検索としての利用を考慮した場合,そ の検索パフォーマンスには安定性が求められる.すなわち,ある色彩をクエリとし て入力した場合,多くのユーザが共通して満足できるような検索結果を出力しなけ ればならない.長田ら(2003)の研究結果から,色聴保持者個人内においては,調 と色彩の対応関係に極めて強い相関と高い再現性が確認されたものの,色聴保持者 の間には共通性が見られていない.このことは,同一の色彩をクエリとして入力し ても,その出力結果に満足できるユーザと満足できないユーザがいることを示唆す る.したがって,このような楽曲システムが多くのユーザに受け入れられることは 期待できない.第3に,色聴保持者の音と色彩の対応規則に基づいて,非色聴保持 者が訓練を受けることによって,ある程度の音と色彩の対応関係を認識できるよう になると述べられているが,楽曲検索のためにわざわざ訓練を受けなければならな いということは明らかに非現実的である.

以上から,楽曲検索における感性情報として色彩を利用するための手がかりを得 るには,共感覚(i.e., 色聴)保持者のように,音刺激と色彩印象を直接的に対応付 けるという認知的メカニズムに焦点を当てた研究とは別の視点から,楽曲と色彩の 結びつきを検討する必要があると考えられる.

3.2: 山脇・椎塚(2005)で使用されたカラーイメージスケール(山脇・椎塚,2005より 転載)

楽的な訓練を受けている被験者を対象として実験が行われ,山脇・椎塚(2005)で は,音楽的な訓練を受けている被験者と,音楽的な訓練を受けていない被験者の両 方に対して実験が行われている.

彼らは,カラーイメージスケールと呼ばれる,図3.2に示すような,横軸を

Warm-Cool,縦軸をSoft-Hardに関する尺度とした2次元座標上に形容詞を配置した図を

用いて,被験者の回答が,このカラーイメージスケール上のどこに集中するのかを 調査することによって被験者の回答を分析している.すなわち,形容詞の回答に関 しては,回答された形容詞のカラーイメージスケール上の座標を求め,色彩の回答 に関しては,カラーイメージ事典によって,その色彩に対応する形容詞を求め,求 められた形容詞のカラーイメージスケール上の座標を求めることで,2種類の回答 が一致するかどうかを分析している.

この実験の結果,山脇・椎塚(2002)では,回答された形容詞と色彩の間に明確 な対応関係は見られなかったと報告している.また,山脇・椎塚(2005)では,音 楽的な訓練を受けている被験者に関しては,回答された形容詞と色彩の間に対応関 係が見られたが,音楽的な訓練を受けていない被験者に関しては,回答された形容 詞と色彩の間に明確な対応関係は見られなかったと報告している.

山脇・椎塚(2005,2002)を考慮すれば,楽曲検索における感性情報として,形容 詞を介した楽曲と色彩の結びつきの可能性を検討するのは,現実的ではないと考え られる.第1に,山脇・椎塚(2005)では,音楽的な訓練を受けている被験者に関し ては,回答された形容詞と色彩の間に対応関係が見られたと報告されているものの,

音楽的な訓練を受けていない被験者に関しては,回答された形容詞と色彩の間に明 確な対応関係は見られなかったと報告されている点が挙げられる.3.2.2節でも述べ たように,一般のユーザ層としては,非共感覚保持者や音楽的な訓練を受けていな

いユーザが圧倒的に多く,山脇・椎塚(2005,2002)の報告を考慮すれば,形容詞を 介した楽曲と色彩の結びつきというアプローチによる楽曲検索手法は,多くのユー ザを満足させることができないことは明らかである.仮に,音楽的な訓練を受けて いる被験者に関して,回答された形容詞と色彩の間に対応関係が見られていたとし ても,楽曲検索のためにわざわざ音楽的な訓練を受けなければならないということ は明らかに非現実的である.第2に,音楽的な訓練を受けている被験者に関しても,

山脇・椎塚(2005)では,回答された形容詞と色彩の間に対応関係が見られたと報 告されているが,山脇・椎塚(2002)では,回答された形容詞と色彩の間に明確な対 応関係は見られなかったと報告されている点が挙げられる.長田ら(2003)の報告 にもあるように,色聴保持者が音刺激から想起する色彩に関しては,個人の間で共 通性が見られないと言われている.したがって,音楽的な訓練を受けている被験者 が回答した形容詞と色彩の間に対応関係が見られたという報告は,より大規模な心 理実験によって検証すべきであると言える.第3に,仮に,音楽的な訓練を受けて いる被験者に関して,回答された形容詞と色彩の間に対応関係が見られたとしても,

山脇・椎塚(2005,2002)では,具体的に楽曲を構成するどの要素が色彩,あるい は,形容詞と結びついているのかという点に関して,全く考察されていない点が挙 げられる.当然であるが,楽曲検索において感性情報を利用する場合,楽曲を構成 するどの要素が感性情報とどのような結びつきをしているのか,という点に関する 情報がなければならない.例えば,2章で紹介した楽曲検索手法においても,楽曲 の音響的特徴量と感性情報の対応を取ることで,楽曲の構成要素と感性情報を結び 付けている.これに対して,山脇・椎塚(2005,2002)のアプローチでは,登録楽 曲全てに対して,形容詞あるいは色彩の情報を人手で付与しなければならず,デー タベース更新の度に,そのような作業をすることは,非現実的であると言える.

以上から,楽曲検索における感性情報として色彩を利用するための手がかりを得 るには,さらに別の視点から,楽曲と色彩の結びつきを検討する必要があると考え られる.山脇・椎塚(2005)の報告にあるように,一般的な被験者が形容詞を介し て楽曲と色彩を結びつけていないのだとすれば,彼らが楽曲と色彩を結びつけてい る認知メカニズムは一体何であろうか.

3.3.2 シーン想起による楽曲と色彩の結びつきの可能性

坂本・鎌田(2007)[45]は,音楽や色彩に関する特別な訓練を受けていない被験 者を対象として,楽曲と色彩の結びつきに関する認知的特性を調査している.彼女 らは,被験者に対して,楽曲の試聴後に楽曲の印象を回答する課題を3種類行って いる.

第1の課題は,カラーイメージ事典[22]から図3.3に示す6種類の配色パターンを 用意し,楽曲の試聴後に,これらの配色パターンのうち,楽曲の印象を表すパター ンを選択するという課題である.

第2の課題は,試聴した楽曲の印象を,同カラーイメージ事典において,図3.3に 示した6種類の配色パターンの特徴を表すものとして使用されている34種類の形容

3.3: 坂本・鎌田(2007)で使用された配色パターン(坂本・鎌田,2007より転載)

3.2: 坂本・鎌田(2007)で使用された形容詞 かわいい 渋い 華やかな 清らかな 子供らしい 地味な にぎやかな シンプルな あまい 重圧な 活動的な 洗練された みずみずしい 精密な 大胆な 都会的な シンプルな 冷たい 情熱的な 細かい 洗練された 冷静な ダイナミックな おだやかな 自然的な メカニックな 激しい 軽い 繊細な すっきりした 荒削りの 暖かい やわらかい かたい

詞に関する7段階SD法によって評価するという課題である.このとき使用された 34種類の形容詞は,表3.2に示す通りである.

第3の課題は,試聴した楽曲から連想される特徴を自由記述によって,表3.3に示 す6項目に関して回答するという課題である.

第1の課題(i.e,配色パターンの選択課題)の結果に関しては,被験者が選択した 配色パターンに偏りがあったことから,音楽や色彩に関する特別な訓練を受けてい ない一般的な被験者に関して,何らかの形で楽曲の印象と色彩が結びついていると 報告されている.第2の課題(i.e., 形容詞に関するSD法評定)の結果に関しては,

SD法評定結果を主成分分析し,第1の課題で選択された配色パターンの特徴とし

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