第 6 章 市街地更新に伴う課題抽出と新たな社会制度の構築に関する考察
6.6 新たな社会制度設計に向けた考察(その 2)
6.6.3 検証
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151 表6‐3 有識者からの示唆(発言要旨)
(2)防災に関するアンケート調査結果に基づく検証
本社会制度の基幹には、「土地利用制限を課す(「一代限り」)ことの実現可能性」及び「行政 等の公的主体が関与することへの受忍意識」がある。
第4章のアンケート調査の結果では、土地利用規制については、福岡市及び東京都区部ともに、
行政が規制や制限を行うことに対して、市民に一定程度の理解、受容意識があることが明らかに なった。リスク情報に基づく規制内容では、居住禁止という強い規制について東京都区部は福岡 市の約2倍(東京都区部20.2%)の回答があった。
行政に求める防災施策では、両都市で「公共事業の実施」が多数を占めた。一方、東京都区部 では、自己責任を第一義とする意見が、福岡市の約3倍あった。また、防災対策を行うべき主体 では、両都市とも「行政主導」の割合が高い。一方、「地域主導」での防災対策も一定の賛同を 得ていることが明らかになった。
以上から、「土地利用制限を課す(「一代限り」)ことの実現可能性」及び「行政等の公的主体 が関与することへの受忍意識」に関して一定の理解があることから、当該社会制度の成立性はあ ると考えらえる。また、リスク情報の公表・充実が進む東京都区の方が、より受容意識が高いこ とから、当該社会制度の実効性を高めるためには、リスク情報の公表・充実を進めることが重要 と考えられる。
回答者 発言要旨
・防災意識を高めることは当該社会制度の実現にとって重要と思われる。
・福岡市での木造密集市街地対策は住宅福祉政策と関連が深い。当該社会制度は資金的弱者に対する防災対策の支援とい う福祉的な側面も有しているため、福岡市を対象とした取組として許容できると思われる。
・エリアを設定し権利に「一代限り」の制限を加えることに対しては、「補償」に見合う措置が必要である。市民が「融資」をその「代 償」として認識するかがカギと思われる。受け取り方は、「融資条件」の手厚さ又は市民の防災に関する認識(熟度)によると思わ れる。
・市場メカニズムとの連携を意識するのあれば、バイアス排除が必要であり、情報公開の推進は重要と思われる。ただし、防災に よる個人の不動産の選好性は、現時点ではそれほど高くない。制度の実現には行政や個人の防災に関する取組みに対する相 当のレベルアップが必要と思われる。
・当該社会制度が、制度として確立されたものであれば、土地取引もその制限(一代限り)に従うはず。そして、その制約はいずれ 市場価値(地価)に反映されることになる。
・防災意識を高めることは本社会制度の実現にとって重要と思われる。
・天神・博多等の都心部に規制をかけることは慎重にすべき。建築禁止というより、設計強度強化等が現実的。その施策に対す る理解と推進が重要と思われる。
・民間主導の開発の場合、短期での資金投下と回収が必須であり、公的主体が関与することは有用である。ただし、実行可能性 を高めるためには、公的主体といえども、保有コスト等をカバーするために国や地方自治体による出資金の投入が必要である。
・エリアを定め、集中的に関与することは合理的な施策である。
・地域力の活用は今後重要な視点であることは言うまでもない。ただし、ある程度の骨格となる社会基盤(道路、公園)の整備は 並行して進めておくことが重要であり、行政側の基本方針も「中期」の段階から「見定め」をする必要があるのではないか。
・防災意識を高めることは本社会制度の実現にとって重要と思われる。
・天神・博多等の都心部に規制をかけることは慎重にすべき。断層直下での居住禁止等はあるかもしれない。一般的には、建築 禁止というより、設計強度強化等が現実的である。
・事業として枠組みが整えば、実現可能と思われる。
・長期間での施策展開となるので、その間の地域マネジメントが必要となる。暫定的な土地利用や地域による運営を検討・実施 することが必要ではないか。
不動産鑑定士 福岡県地価公示代表幹事
不動産鑑定士 東京都在籍 国土交通省土地評価員
(独)都市再生機構 九州支社都市整備部次長
九州都市センター 常務取締役
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(3)因果構造図からの検証
福岡市及び東京都区部において、「情報公表・充実」を起点に防災行動の醸成及び行政施策に 対する受容意識を高め、更に土地利用規制への受容意識を高める効果を示す因果構造が成立する ことが明らかになった。また、因果構造図全体の係数は、リスク情報の充実が進む東京都区部の 方が全般的に高い係数値であった。つまり、耐震改修、行政関与の必要性をより認識しているこ とが係数の高さから把握できる。
このことから、本社会制度の実行性を高めるためには、(2)の結果と同様、リスク情報の充 実の進展等を行うことが必要と考えらえる。
(4)社会制度の検証総括
福岡市及び東京都区部の市民は防災施策の実施に対して潜在的な受容意識を内包していること から、有識者から示唆のあった制度化や財源確保を前提に、当該社会制度が成立する可能性はあ ると考えられる。しかし、現状において、福岡市民の多くは土地利用規制に対する意識が希薄で ある。当該社会制度の実現性を高めるためには、行政等はリスク情報の充実や防災意識の醸成の ための関連施策を並行して実施する必要がある。
検証結果に照らすと、市民の防災意識や行政側の防災施策実施の熟度に高い東京都区部での適 用の方が実現可能性は高いと考えられる。しかし、本章の考察では、単純化のため共有名義の取 扱いや抵当権者との関係等は無視しており、東京都区部では、福岡市以上に、権利輻輳が障壁と なることが推測される。
そのため、実地の導入に向けては、即地的なモデル地区を選定し社会実験等を行い、実現可能 性やその効果検証等を行うことが必要と考えられる。
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