栄養士養成課程における献立作成能力向上に関する研究
The study on ability for the improvement of making menu in the dietician training course
研究グループ代表者
寺澤 洋子(TERAZAWA YOKO)短期大学部食物栄養学科・教授
共同研究者
吉田 弘子(YOSIDA HIROKO)短期大学部食物栄養学科・准教授
安田 奈央(YASUDA NAO)短期大学部食物栄養学科・助手
福松 亜希(FUKUMATSU AKI)短期大学部食物栄養学科・助手
研究成果の概要
献立作成能力の向上を目指した基礎的取り組みとして、適正な「食品重量感覚」を体得させるために「重量記録ノー ト」の導入と、校外実習施設において現場が望む学生指導で強化すべき事項について調査することを目的とした。
①「重量記録ノート」の作成およびその導入
「記録ノート」使用後には実重量に近い値を認識できた。
② 実習受け入れ施設へのアンケート調査の実施
現場からの課題は、基本的態度としては積極性・コミュニケーション能力が、調理面では衛生管理や作業の効率、
対象者に合わせた食材量の選択が上位にあげられた。
研究分野:教育
キーワード:栄養士養成・大量調理・食事摂取基準・献立作成・重量把握・調理技術・安全性
1.研究開始当初の背景
栄養士養成施設においては「給食の運営」、すなわち、
大量調理における食事計画・調理・提供に関し、基礎的 知識および技術を修得させ、現場における実践力・応用 力のある栄養士を育成することは極めて重要な課題であ る。
しかしながら、今どきの多様な価値観をもつ実習生を 引き受けるに当たり、実習現場からは本学実習生に限ら ず、以前と比べ「調理ができない」、「旬の食材が把握で きていない」、「献立が立てられない」、「積極性に欠ける」、
「コミュニケーション力の不足」などの学生が増加して いるという声が聞こえてくる現状がある。
これらのことを鑑み、「献立作成」業務を行う上での 基本として、食材の重量における乖離現象(実重量と感 覚の誤差)の是正への取り組み、および、校外実習(現 場)での学生の状況を客観的に把握するために、校外実 習施設を対象に、実習の受け入れ側から望む学生指導上 の強化すべき内容についてアンケート調査を実施した。
2.研究目的
⑴ 栄養士は特定給食施設において主として給食管理業 務に携わることから、献立作成・調理技術はすべての 業務の基本であると考えられる。先に実施した本学科 の 2 年生を対象とした校外実習後のアンケート調査 結果(平成 23 年度:147 名、24 年度:158 名)より、
今後の課題として調理技術・献立作成能力の向上が挙 げられた。これより、本プロジェクト研究では、献立 作成能力の向上を目指した基礎的取り組みとして、重 量把握能力の向上に着目し「重量記録ノート」の作成
(図 -1)およびその導入を試みた。
プロジェクト研究 研究成果報告書 第4号
⑵ 校外実習(現場)での学生の状況を客観的に把握す るために、実習の受け入れ側から望む学生指導上の強 化すべき内容について、校外実習施設を対象にアン ケート調査を実施した。
3.研究実施計画・方法
⑴ 食物栄養学科1年生(160 名)および 2 年生(160 名)
を対象に、「記録ノート」を使用前(4月)・使用後(7 月)の期間で 20 品目について重量把握テストを行っ た。有効回答数は 1 年生(156 名)および 2 年生(155 名)であった。なお、20 品目の食材については、集 団給食施設において比較的頻繁に使用される食材を選 定した。(表 -1)
「記録ノート」の記録および活用については、栄養 学実習Ⅰおよび臨床栄養学実習の授業の中で課題とし て実施した。
統計解析は、重量把握テストで得られた 20 品目に おける見積もり誤差値の平均を求め、「記録ノート」
使用前後を要因とする対応のあるt検定を行った。ま た、自己評価における割合の差についてはχ² 検定を 行った。
た ん ぱ く 源
(肉類) 若とりもも肉(皮付き)、豚もも薄切り
(脂身なし)、
た ん ぱ く 源
(魚介類) さば、 さけ(生)、ししゃも た ん ぱ く 源
(加工品) ロースハム、もめん豆腐、油揚げ ビタミン・ミ
ネラル・食物 繊維源 (野菜 類)
大根、にんじん、かぼちゃ、きゅうり、
きゅうり(薄切り)、ブロッコリー(ゆ で)、トマト(1/8 くし形 2 切れ)、キャ ベツ(せん切り)、グリンピース(水煮)
ビタミン・ミ ネラル・食物 繊維源(果実 類)
みかん(可食量)、りんご(1/4 切れ)(可 食量)、バナナ(可食量)
表 -1 重量把握テストに用いた 20 品目の食材
⑵ 平成 26 年度において校外実習を承諾していただい た 107 施設に対し、学生に望む基本的な知識や技術、
マナー等の面について質問紙法によるアンケート調査
(平成 26・12 月)を行った。回収率は 76.6 % であった。
4.研究成果
⑴ 重量把握能力の向上については、1・2年生ともに
「記録ノート」使用後には実重量に近い値を解答する ことができ、使用前に比し使用後では見積もり誤差値 は有意に低値を示した(p < 0.01)(図 -2)。また、「記 録ノート」使用後における実重量と見積もり誤差値 2
本プロジェクト研究では、献立作成能力の向上を目指した基礎的取り組みとして、重 量把握能力の向上に着目し「重量記録ノート」の作成(図)およびその導入を試み た。
図1 重量記録ノートの作成
(2)校外実習(現場)での学生の状況を客観的に把握するために、実習の受け入れ側か ら望む学生指導上の強化すべき内容について、校外実習施設を対象にアンケート調 査を実施した。
3.研究実施計画・方法
(1)食物栄養学科1年生(名)および年生(名)を対象に、「記録ノート」を 使用前(4月)・使用後(7月)の期間で品目について重量把握テストを行った。
有効回答数は年生(名)および年生(名)であった。なお、品目の 食材については、集団給食施設において比較的頻繁に使用される食材を選定した。
(表)
「記録ノート」の記録および活用については、栄養学実習Ⅰおよび臨床栄養学実習 の授業の中で課題として実施した。
統計解析は、重量把握テストで得られた品目における見積もり誤差値の平均を求 め、「記録ノート」使用前後を要因とする対応のあるt検定をおこなった。また、自 己評価における割合の差についてはχ検定を行った。
図 - 1 重量記録ノートの作成
栄養士養成に必要な基礎学力の向上の実践とその効果を検証する教育プログラムの開発
(平均)は、使用前においては 1 年生と 2 年生の差は 14.2g であったが、使用後においては 1.7g 程度にま で縮まった。さらに、重量把握における自己評価の結 果を図 -3 に示す。「食材の重量をどのくらいわかって いるか」の設問に対し「少しわかる」、「とてもよくわ かる」を「わかる」群とし、「全く分からない」、「わ からない」を「わからない」群としてχ² 検定を行っ
た結果、有意水準 1% で有意差がみられた。従って、
実重量の理解度と「記録ノート」の使用については 関連があることが窺えた。これより、学生の食材の重 量における乖離現象(実重量と感覚の誤差)の是正は、
「記録ノート」使用によって向上していることが明確 となった(表 -2)。
図-2 「重量記録ノート」使用前・後の見積もり誤差値の平均(学年別)
図-3 重量把握の理解度に関する自己評価 表-2 重量把握の理解度に関する自己評価
図 -2 「重量記録ノート」使用前・後の見積もり誤差値の平均(学年別)
図 -3 重量把握の理解度に関する自己評価
― 71 ―
プロジェクト研究 研究成果報告書 第4号
⑵ 校外実習施設からのアンケート調査より、受け入れ 現場において学生の今後に向けて課題と考えられる項 目は、基本的態度としては積極性(68.3%)・コミュ ニケーション能力(40.2%)が、現場での実践力の項 目としては衛生管理(46.3%)や作業の効率(42.7%)、
対象者に合わせた食材量の選択(42.7%)が上位に挙 げられた。さらに、今後、学生に対して特に強化した
方が良いと思われる内容については、栄養士としての 心構え(36.6%)、責任感(34.1%)、喫食者への配慮
(31.7%)であった(図 -4)。これらのことをふまえ、
実習・演習などの関連教科に関する内容の再検討と、
学生指導の充実・強化を図るための指導上の工夫が必 要であると考えられる。
(2)校外実習施設からのアンケート調査より、受け入れ現場において学生の今後に向け て課題と考えられる項目は、基本的態度としては積極性()・コミュニケーシ ョン能力()が、現場での実践力の項目としては衛生管理()や作業の 効率()、対象者に合わせた食材量の選択()が上位に挙げられた。さら に、今後、学生に対して特に強化した方が良いと思われる内容については、栄養士 としての心構え()、責任感()、喫食者への配慮()であった(図
)。これらのことをふまえ、実習・演習などの関連教科に関する内容の再検討と、
学生指導の充実・強化を図るための指導上の工夫が必要であると考えられる。
4
図-3 重量把握の理解度に関する自己評価 表-2 重量把握の理解度に関する自己評価 表 -2 重量把握の理解度に関するχ² 検定
p p
― 72 ―