-「スタディ・スキル」「スチューデント・スキル」「基礎学力」を視点として-
A Study of First Year Education for the Career Development Division: Focusing on Study Skills, Student Skills, and Basic Scholastic Ability
研究グループ代表者
岩田 京子(IWATA KYOKO)短期大学部キャリア開発学科・准教授
共同研究者
酒見 康廣(SAKEMI YASUHIRO)短期大学部キャリア開発学科・教授
大塚 絵里子(OTSUKA ERIKO)短期大学部キャリア開発学科・常勤助手
研究協力者
浦川 安宏(URAKAWA YASUHIRO)短期大学部キャリア開発学科・特任教授
研究成果の概要
本研究は学生の実態や高大接続の観点から初年次教育を見直し、キャリア開発学科の新たな初年次教育プログラムの 構築を目指したものである。「プレカレッジ」「大学基礎演習」を通して、「スタディ・スキル」「スチューデント・スキ ル」「基礎学力」を育成することを目標とした。効果的な育成手段として「プレイスメントテスト」の導入、「キャリア デザインシート」の活用、宿泊研修の企画・運営などを含む「アクティブラーニング」を取り入れたプログラムへと改 定を行い、実績を上げた。
研究分野:岩田京子(教育学、英語教育)、酒見康廣(教育工学)、大塚絵里子(情報教育)、浦川安宏(社会政策)
キーワード:初年次教育、スタディ・スキル、スチューデント・スキル、基礎学力、アクティブラーニング
1.研究開始当初の背景
⑴ 高校から大学への学習面、生活面を含めての円滑な 移行を目指すための「初年次教育」が急速に広がって いる。それは、まじめに授業に出席するものの自主的 に学習することが困難な中学生や高校生のような「生 徒」と同じ態度が、「学生」たるべき大学生にも見ら れるようになり、大学教育における大きな問題点と指 摘されているからである。
⑵ キャリア開発学科の前身「家政科」「家政経済科」
の時代から、初年次教育の重要性を認識し、平成12 年度より一貫して初年次教育をカリキュラム化し、
「大学基礎ゼミ」「大学基礎演習」という科目名称で 初年次教育を実現してきた。
⑶ 高大接続の観点、2年間という限られた教育期間で の教育効果を補うために、平成21年度から入学前の 高校生を対象とした「ウォーミングアップスクーリン グ」(のちの「プレカレッジ」)を実施してきた。
⑷ 以上のように、本学科は初年次教育の重要性を比較
的早くから認識し、15年近い初年次教育と7年の入学 前教育の実績もあるが、学生の学力問題(低下と多様 化)・態度、社会・経済・雇用情勢の大きな変化もあ り、初年次教育も抜本的に見直しをすべき時期になっ ていると考えられた。
2.研究目的
⑴ 本学科の初年次教育を、入学前と入学後(1年生前 学期)を教育期間、「プレカレッジ」と「大学基礎演 習」を教育内容(科目)として、そのなかで高校生か ら大学生へ、高校から大学教育への速やかな移行を促 すために、「スタディ・スキル」「スチューデント・ス キル」「基礎学力」を視点として、どのような初年次 教育プログラムを構築・実施すべきかを研究すること を目的とする。
プロジェクト研究 研究成果報告書 第4号
3.研究実施計画・方法
⑴ 研究1年目(平成25年度)
① 「スタディ・スキル」「スチューデント・スキル」
「基礎学力」に着目しながら、現行の初年次教育
(「プレカレッジ」「大学基礎演習」)の現状を把握・
整理し、課題となることを明らかにする。
② 初年次教育についての先進的事例研究(文献調 査、実地調査)、及び関連学会に出席し知見を得る。
③ 「プレカレッジ」「大学基礎演習」を合わせた包 括的初年次教育プログラム(案)を策定する。「プ レカレッジ」は平成25年度中に実施、「大学基礎演 習」は平成26年度に実施する。
④ ①~③について平成25年度の研究としてまとめ、
研究紀要にて報告する。
⑵ 研究2年目(平成26年度)
① 初年次教育、「スタディ・スキル」「スチューデン ト・スキル」「基礎学力」についての研究(文献調 査、事例調査)、及び関連学会に出席し知見を得る。
② 平成25年度に実施した「プレカレッジ」の効果 の検証、改善点を探る。
③ 平成26年度に実施した「大学基礎演習」の効果 の検証、改善点を探る。
④ ①~③について平成26年度の研究としてまとめ、
研究紀要にて報告する。
4.研究成果
⑴ スタディ・スキル
高校生までの学習は、学校指定の教科書に則した授業 を受け、その範囲内での事実をどれだけ理解し知識を深 めることができるかが評価の基準である。しかし、大学 では指定された文献を読み、理解するだけではなく、自 らの考えを広く極め、それを他者と議論し、さらに発展 させ、自分の言葉で発表していくことが必要である。そ のため、「聴く」「読む」「書く」「話す」という4技能が スタディ・スキルの本質となる。
① 「聴く」
スタディ・スキルとしての「聴く」とは、講義内 容に傾注し、自らの知識を増やすというだけではな い。自分の論理を展開する際の根拠としても活用で きなければならない。そのためには、「聴く前の準 備」「話者との距離」「ノート・メモの作成」「聴い た後の処理」の4点が必要である。
② 「読む」
雑誌、新聞、専門書など文章に触れて、筆者の主 張に同意するか否かは関係なく、内容を理解し、読 むことによって知識を広げ、教養を深め、楽しみを 見出すことができる。大学生としてはテーマに沿っ
た文献を探し、活用し、論文やレポートを作成しな ければならない。近年はインターネットによる検索 も有効である。読むことの目的は筆者の主張を理解 することであるが、盲目的に受け入れるのではな く、批判的に読み進めていくという作業も重要であ る。また、先人たちの主張や前代の理論を無視する のは好ましくなく、過去から学ぶために「読む」姿 勢も大学生には必須である。
③ 「書く」
大学では各科目でレポートや小論文の提出が求め られる。そこで必要とされるのが「書く力」であ る。「書く力」とは事象を理解し、そこから発展し、
自分の意見として学術的な文章の形をとって発表で きるものでなければならない。こうした「書く力」
は就職活動(履歴書やエントリーシート)や手紙な どの日常生活でも活かされることになる。何よりも
「書く力」は思考の力と言い換えが可能なほど重要 である。
④ 「話す」
「書く」と異なり、「話す」は常に双方向性で行わ れる。発言すれば、質問や感想という形で自分にも どってくる。相手の反応は自分と同じとは限らず、
自分の主張を論理的に説明することが必要になって くる。いわゆる議論は、相手の主張を受け入れるだ けではなく、自分の思考を深めるものであり、大学 での学びに欠くことはできない。近年では企業の就 職活動でもグループディスカッションとして、学生 に課せられることが多い。また、パワーポイント等 を活用したプレゼンテーションでも自分の考えを適 切に説明できるという「話す力」が必要になってく る。
⑵ スチューデント・スキル
スチューデント・スキルは、学修活動や学園生活に対 する心構え・意欲・態度・常識、さらには将来への進路 設計(キャリアガイダンス)など、広範囲な内容を有し ている。本研究では、スチューデント・スキルとして以 下を具体的な内容と考えた。
① 生徒としてではなく、学生としての自覚を持って 行動し責任を持つことができる。
② 本学科の教育目標を理解し、在学中の学修計画を 立てて、それを実行できる。
③ 主体的、積極的な行動・発言・態度を取ることが できる。
④ 継続的な学修習慣とそのための時間管理・健康管 理ができる。
⑤ 将来の自立化、および自律化に向けた設計ができ る。
⑥ 自らの状況や能力を客観的に自己分析・自己評価
でき、新たな達成目標を設定することができる。
⑦ 学修する場にふさわしいマナーに基づく行動と態 度を取ることができる。
⑧ 一般社会人とは違って、若さと時間的余裕を活か した行動・体験をして、それを将来へ生かすことが できる。
⑨ 自己の価値を高めるためのキャリア形成の努力を することができる。
⑩ チームワーク学修により協調性を発揮できる。
⑪ 物事の疑問点や問題点を発見し、その所在を明確 化することができる。
⑫ 答えが一つではない解決策や対応策を模索し提示 することができる。
⑬ 本学の建学の精神や学園の歴史への認識を持ち、
行動・態度へ反映することができる。
本学科は①~⑬の各項目については、初年次教育
(「プレカレッジ」「大学基礎演習」)だけではなく、
「キャリア形成演習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」、資格取得支援の
「キャリアサポート講座」、さらにその他の授業科 目でスチューデント・スキルの育成を図ってきた。
⑦の「学修する場にふさわしいマナーに基づく行 動と態度を取ることができる」は特に育成に力を注 いできたスキルである。他学科に先駆けて「学園 マナー」(後の「Manner Book Nakamura Style」の 原形)を制定し、挨拶を励行、マナーを厳しく指 導し、学内外での評価も高い。しかしながら、③、
⑩、⑪、⑫に見られる主体性、積極性の育成、深く 考え自由に発想する力、いわゆる「答えのない問 題」に挑む力などは、今後、育成に重点を置くべき であると考える。
⑶ 基礎学力
大学生の基礎学力の低下が言われて久しく、本学科も 例外ではない。まとまった文章が書けない、誤字が多 い、漢字が読めない、貧弱な語彙力、簡単な計算・文章 問題が解けない、中学1年生レベルの英単語がつづれな い、などの例が散見される。基礎学力は、上記の「スタ ディ・スキル」「スチューデント・スキル」のまさしく
「土台」となるだけではなく、大学での授業、検定試験、
就職活動にも大きく影響するものである。基礎学力なく して、実りある大学生活を送ることはできない。
そこで基礎学力を育成するために、①入学前(基礎 学力問題・一般常識問題、入学前準備講座)、②入学後
(プレイスメントテスト、基礎学力、フォローアップ講 座)を行った。それぞれについて説明を加える。
① 入学前(基礎学力問題・一般常識問題、入学前準 備講座)
平成23年度より本学科では入学予定者全員に学 科教員が作成した「基礎学力問題」を配布し、提出
を求めている。平成26年からは名称を「一般常識 問題」とし、基礎教育センターに作成を依頼した。
採点後に結果は学生にフィードバックしている。
解答および提出状況を見ていると、少し調べれば わかる問題に対して無解答で提出する者が多く見ら れた。教師に質問する、自分で辞書やインターネッ トを通して調べるという態度が身についていない。
また、提出日に提出しない学生も散見され、そのよ うな学生は入学後も提出物に関してルーズであるこ とがわかった。基礎学力とスタディ・スキル、ス チューデント・スキルの相関が推測できる。
「入学前準備講座」を5回実施した。参加は入学 予定者の任意とし、国語、数学、英語の3科目、講 師は基礎教育センター所属の先生にお願いした。平 成26年に実施した「入学前準備講座」は、第1回 61名、第2回123名、第3回91名、第4回80名、
第5回82名であった。遠方に住み通学が困難な入 学予定者もおり、全員は無理だとしても、もっと多 くの入学予定者に出席して欲しいと考えた。「プレ カレッジ」での呼びかけ、高等学校の先生からの積 極的な声かけが効果的だろう。「高大接続教育研究 会」や高等学校を定期的に訪問する入試課職員への 働きかけも必要である。
② 入学後(プレイスメントテスト、フォローアップ 講座、基礎学力テスト)
平成26年度に初めて「プレイスメントテスト」
を実施した。目的は (1) 学生の基礎学力の正確な 把握、(2) 基礎学力の著しく低い学生へのフォロー アップの実施、(3) 前述の入学前課題「一般常識問 題」の内容の検討に役立てる客観的データを収集す ることである。日本語、数学、英語の3科目、60 分の試験である。作問と採点は基礎教育センターに お願いした。各教科ともに最低点と最高点には開き が大きく、学力の多様化が明らかになる結果となっ た。またプレイスメントテストと、入学後の成績 (GPA) との相関は今後の課題である。
プレイスメントテストでの成績不振者には「フォ ローアップ講座」(日本語、数学、英語それぞれ2 回実施)への出席が義務づけられた。対象者は日本 語48名、数学46名、英語50名であった。欠席者が 半数以上の回もあったが、基礎教育センターでの個 別指導を受ける学生もいた。今後のフォローアップ 講座のあり方が課題となる。
上記以外にも学生全体の基礎学力の向上を目指し て、「大学基礎演習」で10分間の基礎学力テスト2 回と30分間の基礎学力テスト1回を実施した。就 職試験の問題集を範囲とした。基礎学力は就職活動 でも必要であることを認識し、学業への動機づけと