Study of project based learning from learning style approach
研究グループ代表者
明神 実枝(MYOJIN MIE)流通科学部・准教授
共同研究者
大川 洋史(OKAWA HIROFUMI)流通科学部・講師
坂本 健成(SAKAMOTO KENSEI)流通科学部・助教
研究協力者
浅岡 由美(ASAOKA YUMI)流通科学部・教授(平成 26 年度)
片山 富弘(KATAYAMA TOMIHIRO)流通科学部・教授(平成 26 年度)
※単年度のみの参加者については、括弧内に参加年度を示す。
研究成果の概要
本研究は「就業力養成を視野に入れた実践型教育のあり方」を検討するという目的のもと、実践型授業における復習 教材の再検討・開発を行い、学生の復習速度・理解度の向上を狙った。具体的には、流通科学部の実践型授業の一つで ある総合演習Ⅱを一例として注目し、そのための教材開発を学習スタイルモデルにもとづいて行った。
研究分野:組織論、マーケティング、教育工学 キーワード:実践型教育
1.研究開始当初の背景
今日では、消費者の声を製品化するマーケティング活 動は企業の現場のみならず、実学志向の大学教育におい ても実践されている。そのような場において「創造性は いかにして喚起し得るか」という問いに対して、企業や 教育の現場においてもマーケティング研究においてもさ まざまに模索される一方で、課題も残されている。
総合演習Ⅱはその課題解決の一可能性を探る試みであ る。つまり、学生はマーケティング企画を実践的に作成 するだけではなく、その前段階として、まず対象となる 企業組織と業務について学習する社会化のプロセスを踏 む。
社会化とは、組織外部にいる人間が組織内部へ参入し た後にその組織特有の思考原理や行動原理(すなわち文 化)を学習すること、もしくはそのプロセスをいう。総 合演習Ⅱでは、株式会社ふくやの全面的なご協力を得て、
この社会化を間接的に学生に経験させるような効率的な プログラムを提供している。学生は、こうした社会化の プロセスを経てふくやの社員の立場に立って考え、行動 し、企画を作成するという課題に取り組む。このプロセ スにより、より現実に即した企画作成が可能だと考える。
企業の実践においても実学教育においても意義がある点 である。
ただし、これまでの授業内容では学生に対して社会化 を生じさせることのみに注目してきたが、様々な条件(た とえばグループ活動時のグループの人数)の変更によっ て学生からのアウトプットの出方に変化があることが分 かりつつあった。そこで、学習者の視点に立ち、学習パ ターンと提供されるコンテンツとの整合性についても検 討する必要が生じていると考えられた。
2.研究目的
本研究では上記の背景のもと、社会化を背景とした授 業内容にさらなる検討を加えるというこれまでの研究の 流れを踏襲しながら、学習スタイルの分析という新しい 観点を導入して実践型教育を舞台にした研究を推進する ものである。具体的には、受講者の学習スタイルを分析 し、それに基づいて授業内容を見直し、提供する教材を 改善する。
学習スタイルの研究は、学び方の個人差に着目し、学 習者側の視点に立って教育のあり方を再検討するという 目的のもと進められてきた。画一的な教育の限界が指摘
プロジェクト研究 研究成果報告書 第4号
され、学習者が主体的に学ぶ教育のあり方、アクティブ ラーニングが求められる今日において、学習スタイルに 着目することは学習のあり方を見直す契機をもたらし得 る点で意義がある。
学習スタイルについての研究は 1970 年代からアメリ カやイギリスで行われ、多くの学習スタイル理論やモデ ルが提唱されている。学習スタイルに関する学術論文の 数は多く、英国の学習スキル研究センター(LSRC)に よると、その数は 3,800 以上に及び、その中で、71 も の異なる学習スタイル理論・モデルが提唱されてきたと いう。これらの研究すべてを検討することは本研究の力 量を超えるため、関心の範囲で理解する。
多種多様の学習スタイルの理論・モデルが提唱されて いるが、Felder の学習スタイルモデルは、外部環境要 因の影響が少ない「認知・人格スタイル」を分析するモ デルに分類されるモデルである。つまり、特に外部環境 要因の影響よりも個人の認知・人格に起因する学習スタ イルを分析する目的のモデルである。このことから、外 部要因より個人要因によって左右されやすいと思われる e-Learning の教材作成のために、Felder の学習スタイ ルモデル分析が多くの研究で用いられている。また、こ のモデル用の質問項目は日本語に訳され、その妥当性が 確認されているという点やインターネットから無償でダ ウンロードできるという点もこのモデルが採用される理 由である。
こうした先行研究における実践例を踏まえて検討し た結果、本研究でも総合演習Ⅱの復習教材として e - Learning コンテンツを開発する目的で学習スタイルを 分析するため、Felder の学習スタイルモデルを採用する ことが妥当だと考えた。
総合演習Ⅱの目的は、「思考力」を身につけることで ある。問題を発見し、その問題に関する情報を的確に収 集・分析し、論理的思考を通して、問題の解決を行う能 力である。この授業では、キャリアを形成するために必 要となる思考力を、プロジェクト演習を通して育成する。
プロジェクト演習とは、異なる経験や知識を持つ者が集 まり、ディスカッションすることで理解を深め、共同で 調査研究を行うことによって、1人では成し遂げられな い発想や能力に到達するための学習方法である。この目 的のもと本演習では、味の明太子 株式会社ふくや様の ご協力のもと、以下の2つの内容に取り組む。
〈内容〉
【段階 1:組織理解】受講者は企業の下位組織である 3 部門(製造部門、店舗営業部門、ダイレクトマーケティング部門)
に分かれ、各担当部門を訪問したり調査したりして業務 内容を理解する。
【段階2:企画作成】段階1の3部門から1名ずつが集まっ てミニ企業グループを結成し、企画案を作成する。テー マは「ふくやの明太子を同世代に売るにはどのようなア
プローチが考えられるか」である。
この演習の受講生は必ずしも企画作成についての知識 や経験を前提としていないため、15 回の授業内で、企 画のプロセスについての知識の復習をする、あるいは新 たに身につける必要がある。しかし、時間的な制約上、
多くの時間を復習に割くことはできない。そこで、復習 教材を作成して補う必要性があると考えられ、この復習 教材を学習スタイルに合わせた e-learning 教材に再作成 することを試みた。教材で復習する内容は、企画プロセ スについて初心者向けに解説された『1からの商品企画』
(西川英彦 , 廣田章光編著、碩学舎、2012 年)を元に、
主要なポイントを整理したものである。
3.研究実施計画・方法
Felder のモデルに基づいて学習スタイルを調査する目 的は、学習スタイルに基づいた教材を作成することであ り、学習効果を高める可能性を見いだすことである。そ のために、第1に、学生の学習スタイルに違いがあるか、
第2に、学習スタイルに基づいて作成した教材によって 学習効果は高まるか、に注目して調査することを計画し た。
平成 25 年度は、総合演習Ⅱの受講生 18 名を対象に、
学習スタイル調査を実施した。学生は 44 の質問項目に 回答し、その結果から4分野(活動 / 内省、感覚 / 直感、
視覚 / 言語、順次 / 全体)の傾向を調べた。結果の概要 は以下の通りである。
〈結果概要〉
*N=18
・どのタイプにも属さない学生 :1 名
* 属さない = 各分野の 2 タイプにおいて弱い傾向
「1~3aorb」
・1 分野でしかタイプ分類できない学生 :1 名
*「順次 / 全体」でしか特徴がなかった
・「視覚 / 言語」分野で「非常に強く好む」学生 :1 名
*「非常に強く好む」は、全体でこの学生・この分野 のみ
・4 つの各分野で傾向(特徴)が表れた学生の数 活動 / 内省 ...7 名 ( 活動 3、内省 4)
感覚 / 直感 ...10 名 ( 感覚 9、直感 1) 視覚 / 言語 ...13 名 ( 視覚 11、言語 2) 順次 / 全体 ...10 名 ( 順次 5、全体 5)
結果、18 名の学生のうち、学習スタイルの傾向に違 いが現れたのは「順次/全体」の分野であった。この結 果から、どの分野・タイプにも属さない学生がいる点を 踏まえつつ、また必要な教材の作成可能性と有用性を検 討し、「順次 / 全体」に配慮した教材を作成することに 決定した。
平成 26 年度も、総合演習Ⅱの受講生 37 名を対象に、
就業力養成を視野に入れた実践型授業のあり方に関する研究
学習スタイル調査を実施し、分析した。また、サンプル 数が少ないという前年度の反省を踏まえて、情報処理論
Ⅰの1年生受講生 238 名を対象に、同様の学習スタイ ル調査を実施した。両結果は以下の通りである。
結果、総合演習Ⅱ、情報処理論Ⅰの受講生間では、学 習スタイルの大きな傾向の違いは見られなかった。4 つ の各分野で傾向(特徴)が表れた学習スタイルの分野は
「視覚 / 言語」であり、「視覚」による認知の傾向(特徴)
が強いことが推測された。
この結果から、必要な教材の作成可能性と有用性を検 討しつつ、「視覚 / 言語」に配慮した教材を作成するこ とに決定した。
4.研究成果
成果は次の通りである。第1に、教材の開発について である。実践型教育のあり方を社会化、創発の分野から
3
3.研究実施計画・方法
)HOGHUのモデルに基づいて学習スタイルを調査する目的は、学習スタイルに基づいた教 材を作成することであり、学習効果を高める可能性を見いだすことである。そのために、
第1に、学生の学習スタイルに違いがあるか、第2に、学習スタイルに基づいて作成した 教材によって学習効果は高まるか、に注目して調査することを計画した。
平成年度は、総合演習Ⅱの受講生名を対象に、学習スタイル調査を実施した。学 生はの質問項目に回答し、その結果から4分野(活動内省、感覚直感、視覚言語、
順次全体)の傾向を調べた。結果の概要は以下の通りである。
〈結果概要〉
1
・どのタイプにも属さない学生名
属さない 各分野のタイプにおいて弱い傾向「aDRUE」
・分野でしかタイプ分類できない学生名 「順次全体」でしか特徴がなかった
・「視覚言語」分野で「非常に強く好む」学生名
「非常に強く好む」は、全体でこの学生・この分野のみ
・つの各分野で傾向(特徴)が表れた学生の数 活動内省名活動、内省
感覚直感名感覚、直感 視覚言語名視覚、言語 順次全体名順次、全体
結果、名の学生のうち、学習スタイルの傾向に違いが現れたのは「順次/全体」の分 野であった。この結果から、どの分野・タイプにも属さない学生がいる点を踏まえつつ、
また必要な教材の作成可能性と有用性を検討し、「順次全体」に配慮した教材を作成する ことに決定した。
平成年度も、総合演習Ⅱの受講生名を対象に、学習スタイル調査を実施し、分析 した。また、サンプル数が少ないという前年度の反省を踏まえて、情報処理論Ⅰの1年生 受講生名を対象に、同様の学習スタイル調査を実施した。両結果は以下の通りである。
学習スタイル調査:総合演習Ⅱ、1 、※パラメータ>@以下は除外
D活動/E内省 D感覚/E直感 D視覚/E言語 D順次/E全体
D
E
学習スタイル調査:情報処理論Ⅰ、1 、※パラメータ>@以下は除外 D活動/E内省 D感覚/E直感 D視覚/E言語 D順次/E全体
D
E
結果、総合演習Ⅱ、情報処理論Ⅰの受講生間では、学習スタイルの大きな傾向の違いは 見られなかった。つの各分野で傾向(特徴)が表れた学習スタイルの分野は「視覚言語」
であり、「視覚」による認知の傾向(特徴)が強いことが推測された。
この結果から、必要な教材の作成可能性と有用性を検討しつつ、「視覚言語」に配慮し た教材を作成することに決定した。
4.研究成果
成果は次の通りである。第1に、教材の開発についてである。実践型教育のあり方を社 会化、創発の分野から検討し、実践に取り組むために必要な専門知識の教材を開発した。
特に、企画についての教材を開発した。第2に、学習スタイル分析を行った。流通科学部 1年生名、総合演習Ⅱの受講生名を対象に、学習スタイル調査の実施である。その 結果、学習スタイルの傾向に違いが現れ、その分析を行った。第3に、教材形式の開発に ついてである。学習スタイル分析の結果を踏まえ、視覚重視のHOHDUQLQJ教材を準備し、
それを使って学生に復習させ、小テストを受けさせ、その効果を測定した。
今回の成果には点の意義がある。第に、流通科学分野の実践型教育は他大学でも実 施例が多いが、成果の実現可能性が低く、また就業力養成に至るには課題が多い。その点 を、経営学分野の「社会化」という知見で補完させる仕組みを開発し、これに必要な教材 を開発している点である。特に、実践型教育に適した、企画作成の過程を復習する適当な 教材は多く見られないという点で意義がある。
第に、学生の学習スタイル調査の実施である。従来の教材開発は教員の判断によって 行なわれてきたが、本研究では学生の学習スタイルを調査することによって、学習スタイ ルや学習行動に適応した教材を再検討する契機が見出された。
第に、学習スタイルを踏まえたHOHDUQLQJ教材の開発である。従来の紙媒体のテキス トが重要であることは言うまでもないが、HOHDUQLQJ教材によって多様な学習スタイルに 適応することが可能であると考え、開発を試みた。改善の余地が残され、それは今後の課 題とする。
5.主な発表論文等
検討し、実践に取り組むために必要な専門知識の教材を 開発した。特に、企画についての教材を開発した。第2に、
学習スタイル分析を行った。流通科学部1年生 238 名、
総合演習Ⅱの受講生 37 名を対象に、学習スタイル調査 の実施である。その結果、学習スタイルの傾向に違いが 現れ、その分析を行った。第3に、教材形式の開発につ いてである。学習スタイル分析の結果を踏まえ、視覚重 視の e-learning 教材を準備し、それを使って学生に復習 させ、小テストを受けさせ、その効果を測定した。
今回の成果には 3 点の意義がある。第 1 に、流通科 学分野の実践型教育は他大学でも実施例が多いが、成果 の実現可能性が低く、また就業力養成に至るには課題が 多い。その点を、経営学分野の「社会化」という知見で
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