潅漑水 中の NaCl濃 度が生育量および根の呼吸速度 におよばす影響 について第 12表 に示す. 地上部生体重は OmM区 よ りも20mhl NaCIお よび 40mM NaCI溶 波 を潅水 した方が大きかった。地 上部乾物重は 20mM NaCl区で最 も大 きく,40mM NaCI区ではOnlM区 と差がなかった。地下部重 についてはOmM区 が最 も大 きく
,潅
漑水中の NaCl濃 度が高 くなるにつれて小さくなった.根
の 呼吸速度 については,潅
漑水 中の塩類濃度間に差は認め られなかった.考
察
20mM NaCl溶液を潅水することにより地上部の生育は促進されたが
,地
下部重については0耐│r ! ︱ ︱ ︱ ︱ ︱ ト ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ︲ ︲
第 12表 潅漑水 中のNaCI濃 度がホウレンソウ̀トライ'の生育量 および 根呼吸速度におよばす影響
項 目 NaCI濃贋(mM)
0 20 40 地上部生体重
地下部生体重 地上部乾物重 地下部乾物重 根呼吸速度
(g/株)
(g/株)
(g/株)
(g/株)
(mgCO/g/hr)
33.2 b 9.9 a 2.73b O,74a 2.05
37,7 a 7,l b 2,998 0.59b
2. 11
39,l a 6.6 L 2,67b
O,49b
2.16J4J1997年1月18日播種、調査は播種76日後に行つた.
アルフアベットはダンカンの多重検定による
5%水
準での有意差を示す40
L̲
区が最も大きく
,潅
漑水中の NaCI濃 度が高くなるにつれて小さくなった。このことよ り,ホ
ウ レンソウイこ2011M NaCI溶液を潅水 した場合,地
上部の生育は促進されるが地下部の生育は抑制 されるといえる.根の呼吸速度 について検討すると
,イ
ネでは根の呼吸速度 と飽差あた りの蒸散速度 との間に高い相関関係があり(津野・山口
,1987),ま
た,断
水処理をしたダイズでは根の呼吸速度 と光 合成速度 との間に高い相関がある(李ら,1994)と 報告されている,こ
のため,根
の呼吸速度が 地上部の光合成に影響をおよばしていることが考えられる。しかし,20nIM NaCI潅 水は,地
上菩卜の生育が旺盛であったにもかかわらず
,根
の呼吸速度はOIIIMと変わ りなかった。このことよ り,20mM NaCl潅
水による地上部の生育促進は,根
による積極的な吸水の影響を受けていない と考えられる。摘
要
淡水 と20mM,40mM NaCl溶液を潅水 して栽培 したホウレンソウについて
,生
育量および根の 呼吸速度 を測定 した。(1)生 育量について20mM NaCl潅水では
,OmM潅
水に対 して地上部重は大きくな り,地
下部は小 さくなった。(2)呼 吸速度 については
,潅
漑水中の NaCl濃 度間に差は認められなかった,41
r l l l l l
︲ ︲
︱
︲
第6節
潅 漑 水 中 の 塩 類 の 違 い が 生 育 量 お よ び 葉 内 カ チ オ ン含 量 に お よ ばす 影 響
ホウ レンソウに希釈海水やNaCI塩水 を潅水す ると
,生
育が促進 される。 しか し,Na塩
の種類 による影響や
Ca,Kの
影響 については明 らかにはされていない。そ こで,NaCl塩
水で生育が 促進 されるホウレンソウに,NaCl溶液 と等濃度 に調整 した Na2S04,KClお よびCac12溶液 を潅水 し,生
育および葉 内カチオン含量におよぼす影響 を調べた.ま
た,潅
漑水の浸透圧 の影響 を調 べる目的で,NaCI溶
液 と等浸透圧 に調整 した PEG溶 液 も用いた。材 料 お よ び 方 法
実験は 1997年 1月か ら3月 にかけて鳥取大学乾燥地研究センターのガラス室内で実施 した。
1/5000aワ グネルポットに未耕作地の砂丘砂を充填 し
,1月
18日 にホウレンソウ(̀ト ライ') を 1ポ ットあた り3株になるように播種 した。施肥は,元
肥 として苦土石灰(2.4g/ポ ット),ミ ネラルG(0.8g/ポ ット)および化成肥料(NIP205:K20=0・ 56:0,52:0.54g/ポ ット)を施用 した。播種後 14日間は全ての処理区に淡水を潅水 し
,そ
の後は淡水(OmMl,NaCI(201「M,40mM,60mMJ,
Na2S04(10耐,20mM,30mM),KCI(20mM,40mM,60BIMj,CaC12(10mM,20mM,30mM)お よびPEG6000(NaCI の①20mM,② 401「
Mお
よび③ 60mMと 等浸透圧に調整)をそれぞれ 200m1/3日 潅水 した,播
種60 日後に地上部生体重を測定 した,地上部生体重を測定 した個体は直ちに乾燥機に入れ,80℃ で3日間乾燥 した後
,地
上部乾物重を測定 した。乾物重測定後の乾燥葉は湿式灰化 し,原
子吸光法 でNa,K,Caお
よびMg含量を測定 した,42
結
果
塩類溶液 の潅水がホウレンソウの地上部生体重 におよぼす影響について
,結
果 を第6図に示 した。NaCl(20mM,40alM)溶 液 とKCI(201「M,40耐
,60mMj溶液 を潅水 した処理区の生然重が OalMを潅水 した区よ り大 きかった。最 も大きかった 40mM KCt溶 液潅水区は OmM潅水区 と比較 して 141%で
,そ
れに次いで大きかったNaC1 40 区は136%であった。地上部乾物重 については,第
7図 に示す とお りであった,NaCl,Na2S04お よび KClを 潅水 した処理区が0耐 区 と比べて増加す る傾向があ り,NaC1 20mM区では0剛 区と比較 して 118%,NttS04 10耐 区では H3%,KC1 40BIM 区では
H2%で
あった,生
育が促進 された KC1 40耐 区と NaC1 40mM区 について生体重および乾 物重 を比較すると,OnlM区 に対 して生体重がそれぞれ141%および136%の増加 を示 しているのに対 して
,乾
物重ではH2%およびHl%で
あった。葉内カチオ ン含量におよばす影響 については
,乾
物 100gあ た りの値 を第8図
に,株
あた りの含量 を第9図に示 した。乾物 100gあ た りおよび株あた りの値 とも
,塩
類 を潅水 したものにつ いては潅漑水の塩類濃度が高 くなるにつれて全カチオン(Na+K+Ca+Mg)含
量は多 くな った。個 々のカチオンについてみると
,Mgは
潅水 した塩類の種類 と濃度が変わって も葉内含量は変わ らなかった。caは Na2S04溶液の潅水で少な く,Cac12溶液潅水で多かった,Kは
KCと の潅水で 多 いほかは潅漑水 による差 はなかった。Naは
NaCl溶 液 とNa2S04溶液 を潅水 した区のみ多量に 含 まれていた。考
察
生育が促 進 された KC1 401nM区 とNaC1 40mM区につ いて生体重お よび乾 物重 を比較す る と,
43
︱︱︱︱︱IL
¬
40 30 *ZoV 20 40 60 10 20 30 20 40 60 10 20 30 1 W 2 i3
1 ̲̲̲̲̲」 │ ̲̲̲̲̲̲̲―――――」 │ ―――̲̲̲̲ I L̲ ! │NaCI Na2S04 KCl CaC12 PEG
第6図各種塩類溶液の潅水がホウレンソウの地上部生体重におよぼす影響 注 '1997年1月18日悟種調査は播種60日後に行つた. V各 塩類港液のmM濃度を示す W① ,②,⑥は,それぞれ20mM,40mM.60mM NaCIと等浸透圧のPEG6000. X標 準誤差 イ= 料・■は,OmM区との間にt検定による有意差(1%,5%)があることを示す。0 2
︵益馬︶側雄¶
10
トト
キ■y
3.0 2.5
0 2
︵益ゝ︶側尽輝
卜釘
1.5
OV 20
│6010 20 30
20 │ │ ― ―劃 NaCINa2S04KCICaC12 第7図各種塩類溶液の潅水がホウレンソウの地上部乾物重におよばす影響 コ 1997年1月18日播種調査は播種60日後に行つた. V各 塩類溶液のmM濃度を示す. W① ②,③は,それぞれ20mM,40mM,60mM NaCIと等浸透圧のPEG6000 X標 準誤差. イ= *ネ,*は,OmM区との間にt検定による有意差(1%,5%)があることを示す̲︵3︶
︵2 一
302010
PEG
「
4
︒
0 2 0
︒
︵ヨω硼ooく一oEE︶咽佃ハトホRE釈
卜ω
NaCI Na2S04 KCI
第8図各種塩類溶液の潅水がホウレンソウの葉内カチオン含量におよばす影響 y各 塩類溶液のmM濃度を示す Z① ②,③は,それぞれ20mM.40mM,60mM NaCIと等浸透圧のPEG6000̲PEG
¬
…
¬
0 5
︵益\一oEじ硼佃ハトいくE慇
トミ
Oy 20 10 20 30
1 1NaCI Na2S04
KClCaC12PEG
第9図各種塩類溶液の潅水がホウレンソウー株あたりの葉内カチオン含量におよばす影響 y各 塩類溶液のmM濃度を示す. Z① ,②,③は,それぞれ20mM,40mM′60mM NaCIと等浸透圧のPEG6000.10 20 30 1Z 2 (§
│ L̲̲̲̲̲̲̲̲̲―――――――一」 十 一F
OmM区 に対 して生体重がそれぞれ141%および136%の増加 を示 しているのに対 して
,乾
物重では 112%および111%であった.こ
の ことより,生
育の促進 には乾物重の増大だけでな く地上部含水 率の増大が作用 していると考えられる.ホ
ウレンソウに高濃度のNaCI処理 を施す と,Naは
主に液胞 に隔離 される(Speer・ Kaiser,1991)。 このため
,液
胞 の浸透圧が増 し,浸
透圧 に見合 う 水分 を吸収す るために含水率が高 くなったと考えられる.潅漑水の浸透圧がホウレンソウにおよぼす影響については
,PEG区
で生育が抑制されている ことか ら,浸
透圧 が大 き くなることによる生育促進作用はないと考え られる。葉内カチオ ン含 量 について個々のカチオンについてみると,Caに
ついては,NttS04区 で少な く,CaC12区 で多か つた。一般に,土 壌溶液中のNa濃度が高い場合 には,Ca吸収が拮抗的に低下するといわれ る(但野, 1984)。 しか し NaCI区 のCa含量は OmM区 よ りも多いことか ら,Na2S04区 でCa含量が少な いのは元肥 中のCa2+と潅水溶液中のS042が結合 し
,吸
収できなかった ことによるのではないか と推察 される。CaC12区でCa含量が多いのは,CaC12か ら供給 されたCaを吸収 したため と考 え られ る.Kに
ついては,KCI区
で多 くなっているほかは潅漑水による差はなかった。KCl溶液潅 水で大 きくなったのは,KCIか
ら供給 され′たKを
吸収 したため と考 え られる。Naに
ついては,NaCI区 とNa2S04区以外では外部か らの供給がないため
,Naを
含む NaCI溶 液 とNa2S04溶液 を潅 水 した処理区のみに多量 に含 まれていた。生体重および乾物重 と葉内カチオン含量の差異をあわせて考えると
,生
体重および乾物重が 大 きいものは,そ
の特徴 として Naま たはKの
葉内含量が多 いことが認め られる.Kに
ついては,KCl区
で含量が大きいことよ り,元
肥 のK供
給がやや不足状態 にあった ことが考 え られ る。一 方,Naに
ついては NaCl,Na2S04溶 液潅水でもKCIと 同等の効果が認め られた ことよ り,ホ
ウ レr
ンソウではNaに
Kと
同 じ働 きがあるのではないか と推察 された.摘
要
ホ ウ レ ン ソ ウ に淡 水 (0耐),NaCI(20耐,40mM,60mM),Na2S04(10mM,20耐,30alM),KCl(20mM, 40TIM,60mMj,CaC12(10nlM,20耐
,3肺
の お よ び PEG6000(NaCIの① 20耐,②
40mMおよ びC刈
0耐と等 浸 透 圧 に調 整)を潅 水 し
,生
育 量 お よ び 葉 内 カ チ オ ン含 量 にお よ ぼす 影 響 を調 べ た 。(1)地 上部乾物重 については,NaCt,Na2S04,KClを 潅水 したものが大 き くなる傾向があった. (2)生 育が促進 された処理区について
,地
上部生体重 と地上部乾物重 を比較すると,0廊
潅水 に対す る増加割合 は生体重 の方が大 きく
,生
育の促進 には乾物重 の増大 だけでな く,地
上部 含水率の増大が作用 していると考え られた,(3)葉 内カチオ ン含量 について
,生
体重および乾 物重が大 きいものは,Naま
たはKの
葉 内含量 が大 き く,Naに Kの
代替効果があることが示唆された。第
7節 K供
給 量 の違 い とNaCl溶
液 潅 水 の効 果Naの施用がサ トウダイコンの生育 に効果があることが古 くか ら知 られてお り,そ の効果は
K
の供給が制限されているときによく現れるといわれている。 このことか ら
,サ
トウダイコンで はNaが
何 らかのKの
代替 を行 っていることが考 え られる,ホ
ウレンソウで も塩水 の潅水によ る生育促進効果が認め られ,さ らに前節でサ トウダイコンと同様 にNaがKの
代替 として働 いて【