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本研究の結論と今後の課題

ドキュメント内 大企業におけるイノベーション戦略 (ページ 185-200)

本研究の結論

本研究は、イノベーションのジレンマを回避するために、大企業の有効なイノベーション戦略 についてまとめたものである。

イノベーションは様々な分類方法が存在しているが、本研究ではChristensenのイノベーショ ン分類方法を採用して研究を行っている。すなわち、イノベーションを持続的イノベーションと 破壊的イノベーション二種類がある。企業は持続的な競争優位性を獲得するために、イノベーシ ョンの促進に力を入れている。特に、持続的イノベーションの追求を注目している。しかし、持 続的イノベーションを促進しすぎると、イノベーションのジレンマに陥る。また、各業界の有力 大企業は、破壊的イノベーションを重視している中小企業やベンチャー企業に追い越されて、ト ップの地位を奪われるケースが沢山ある。大企業は破壊的イノベーションの促進が難しいと考え られるが、大企業は破壊的イノベーションを無視すると経営不振や倒産になってしまう危険性が ある。従って、本研究は、大企業の有効な戦略がデュアルイノベーション戦略であると主張して いる。すなわち、大企業は持続的イノベーションと破壊的イノベーションをバランスよく促進す る必要があると主張する。組織特性や投資家の利益確保などの視点から見れば、大企業は確かに 破壊的イノベーションを促進する時様々な阻害要因が存在している。しかし、大企業は破壊的イ ノベーションが全くできないわけではないと考えている。又は、あるタイプの破壊的イノベーシ ョンは大企業の方が着手しやすい。

Christensen が破壊的イノベーションをローエンド型破壊的イノベーションと新市場型破壊的

イノベーション二種類に分類している。この理論に基づき、ウォークマン、iPod、Wii、Ds等の 製品特徴をレビューしながら、破壊的イノベーションをローエンド型破壊的イノベーション、新 市場型破壊的イノベーションと新価値創造型破壊的イノベーション三種類を纏めた。研究結果か ら言えば、大企業は確かにローエンド型破壊的イノベーションの促進意欲が低いが、新市場型破 壊的イノベーションと新価値創造型破壊的イノベーションの促進が可能であることが分かった。

特に、大企業は非主流の新規顧客の行動観察を重視することにより、今までの消費行動を阻害し

ている要素を見つけることが可能になり、新市場型破壊的イノベーションの促進に着手する可能 性がある。また、非主流の新規顧客の行動観察を重視すれば、潜在化されているニーズの発掘が 可能になり、新価値創造型破壊的イノベーションの促進が求められる。

また、本研究は上場並びに未上場有価証券報告書提出会社2121社を対象として、アンケート調 査を行った。回収したデータを共分散構造分析方法で分析して、本研究の仮説を実証した。さら に、新しい発見が見つかった。それが、大企業の持続的イノベーション志向性と新市場型破壊的 イノベーション志向性の係数は持続的イノベーション志向性と新価値創造型破壊的イノベーショ ン志向性の係数より明らかに高い。この原因を追究するため、考察を行った。結果としては、持 続的イノベーション志向性から新市場型破壊的イノベーション志向性あるいは新価値創造型破壊 的イノベーション志向性に転換するため、顧客の行動考察が必要である。しかし、新価値創造型 破壊的イノベーションは潜在化されているニーズに基づき行ったイノベーションであるため、潜 在化されているニーズの発見が難しくて複雑である。新市場型破壊的イノベーションのニーズは ある程度予測できるため、新価値創造型破壊的イノベーションより新市場型破壊的イノベーショ ンの促進が簡単である。さらに、本研究では、新市場型破壊的イノベーションを過渡期として、

持続的イノベーション志向性高い大企業は先に新市場型破壊的イノベーションに着手して、破壊 的イノベーションにより獲得した新しい顧客の行動を観察して、潜在化されているニーズの発見 が簡単になって、新価値創造型破壊的イノベーションの促進の可能性が高くなると考えている。

これが、いきなり持続的イノベーション志向性から新価値創造型破壊的イノベーションに転換さ せるよりリスクが低くなって、成功比率が高くなる。

そして、ローエンド型破壊的イノベーションについて、大企業は企業のブランド力への配慮や 市場の共食いなどの心配があるため、ローエンド型破壊的イノベーションを促進する意欲が低い。

但し、大企業は全くローエンド型破壊的イノベーションを起こさないわけではない。富士フイル ムの事例とキヤノンの事例を分析して、大企業はローエンド型破壊的イノベーションを促進する 原因を纏めた。①既存事業を捨てられない場合②競争環境が厳しい時、且つ強い競争会社が存在 する時③既存市場の市場シェアの維持・拡大を非常に重視する時、大企業はローエンド型破壊的 イノベーションに着手する可能性もないわけではない。さらに、キヤノンのプリンタの事例分析 により、持続的イノベーション志向性高いキヤノンがローエンド型破壊的イノベーション志向性

に転換するプロセスを纏めて、新市場型破壊的イノベーションを過渡期する必要性も分かった。

本研究の結論を纏めて言えば、①大企業がイノベーションのジレンマを回避するために、有効 なイノベーション戦略はデュアルイノベーション戦略である。すなわち、持続的イノベーション と破壊的イノベーションを同時に促進する戦略が必要である。但し、大企業は三種類の破壊的イ ノベーションを向いていない。大企業の有効のイノベーション戦略は持続的イノベーションと新 市場型破壊的イノベーションか持続的イノベーションと新価値創造型破壊的イノベーションある いは持続的イノベーションと新市場型破壊的イノベーションと新価値創造型破壊的イノベーショ ンを同時に促進するイノベーションである。②デュアルイノベーションを促進するために、顧客 の行動観察を重視しなければならない。顧客の行動観察を通じて、潜在化されているニーズの発 見が可能になり、新価値創造型破壊的イノベーションを促進する。また、顧客の行動観察を通じ て、消費行動を阻害している原因を見つけて、新市場型破壊的イノベーションの促進が可能にす る。③新価値創造型破壊的イノベーションにより開発した製品の影響力が高くて、競争力が高い ため、企業は新価値創造型破壊的イノベーションを積極的に促進している。しかし、新価値創造 型破壊的イノベーションが潜在化されているニーズに基づき行ったイノベーションであるため、

潜在化されているニーズの発掘が難しくて、新価値創造型破壊的イノベーションを実際に促進す る時難しい。新市場型破壊的イノベーションを過渡期として、持続的イノベーションからいきな りに新価値創造型破壊的イノベーションに転換するより顧客の行動を観察して持続的イノベーシ ョンから新市場型破壊的イノベーションに転換させて、新市場型破壊的イノベーションにより獲 得した新しい顧客に対して行動を観察すれば、新価値創造型破壊的イノベーションに移転させる プロセスの実効性が高い。④競争状況が厳しい時、特に大企業は後発企業としてこの業界に進出 する時、大企業もローエンド型破壊的イノベーションに着手する可能性がある。あるいは、大企 業は既存事業を捨てられない時、市場シェアの維持・拡大を求めるため、大企業もローエンド型 破壊的イノベーションを促進する可能性がある。ローエンド型破壊的イノベーションは既存市場 の既存顧客に低価格の製品を提供する特徴があるため、大企業は様々な心配があるから、戦略的 には促進しにくいが、新市場型破壊的イノベーションを過渡期として、価格に敏感の新規顧客を 獲得するために一時的に低価格の製品を提供する。そして、利益の獲得ができて、市場シェアを 拡大するため、さらに価格を安くして、ローエンド型破壊的イノベーションを促進する。

今後の課題

本研究では、大企業の促進するべきデュアルイノベーションを主張しながら、持続的イノベー ションから破壊的イノベーションに転換させるプロセスを明らかにした。しかし、戦略合理性の 変化は目にはみえないために、誰にとっても自明というわけではない。それが戦略転換に対する 企業内の合計形成を難しいものにするのである。(柴田,2015,p.176)さらに、現実では、企業は いつも決められた戦略転換プロセス通りに戦略の転換を実施するわけではない。経営者の経営の 質や、業界の競争状況や、インフラ整備の状況などに関わって、どのように進めるかが変わって くる。ここでは、日本企業のヤクルトとハウス食品を、中国という新市場への進出に成功した事 例1としてとらえ、持続的イノベーション志向からの戦略転換問題について簡単に分析する。

ハウス食品は 1997 年中国上海にカレーレストラン一号店を開店した。2001 年に上海ハウス味 の素食品有限会社を設立した。これはハウス食品が中国新市場開拓の最初の一歩と見られてい る。ハウス食品が中国に進出する前に、中国ではカレーライスを食べる習慣がなかった。カレー という物を聞いた人がいるかもしれないが、実際に自宅で料理することがあまりなかった。ハウ ス食品は最初に日本カレーの味のままで中国に導入したが、なかなか売れなかった。売れない原 因は主に二点がある。一つは、中国の国民はカレーを食べる習慣がない。作り方も食べ方もわか らない。もう一つは、日本カレーの味は中国人にとって薄いと言われていた。ハウス食品は中国 市場を開拓するために、この二つの問題を解決しなければならないと認識している。ハウス食品 の職員は市場調査を行いながら、カレーを普及するために様々なイベントを開催している。市場 調査においては、中国人の食べる習慣を観察しながら、中国人の味の好みを探している。市場調 査の結果を分析しながら、中国人に合うカレー味を研究している。様々なテストの結果で、「八 角」という中華料理の香辛料の一つをカレーに入れて、中国人から非常に高い評価を得た。そし て、家庭料理教室や学校でのイベントなどの開催を通じて、中国でカレーは速いスピードで普及 している。現在までの市場シェアは 95%以上を占めている。ハウス食品は中国人がカレーを食 べない習慣を変えて、家族で一緒に楽しんでカレーを食べましょうという価値を中国国内で創造 した。つまり、ハウス食品の中国進出は新市場型破壊的イノベーションの成功事例である。但 し、普及してから、ハウス食品にとって、新しい競争会社の出現や、変わっている顧客ニーズや 様々な新状況に対して、どのように対応すれば今後の課題になる。将来的な戦略では、ハウス食

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