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実証結果の提示

ドキュメント内 大企業におけるイノベーション戦略 (ページ 139-161)

本章の第1節で、信頼性の基準を確認し、モデルの信頼性を検討する。第2節で、分析の方法 を述べ、そこで用いられる因子スコアの計算結果を説明する。第3節では、実証分析の結果を提 示する。持続的イノベーション志向性と新市場型破壊的イノベーション志向性の関係、持続的イ ノベーションと新価値創造型破壊的イノベーション志向性の関係、及び持続的イノベーションか ら新市場型破壊的イノベーションと新価値創造型破壊的イノベーションに移転させる条件を実証 する。第5節はモデル実証の補足として分析を行う。第6節が実証結果のまとめである。最後は、

実証結果に基づき、論文の考察を行う。

第4章でモデルの構成概念及び測定変数を提示した。これから、測定変数記述統計量を述べる こととする。構成概念の「持続的イノベーション志向性」、「新価値創造型破壊的イノベーション 志向性」、「新市場型破壊的イノベーション志向性」、「ローエンド型破壊的イノベーション志向性」

と「顧客の行動観察」をそれぞれ説明し、構成概念に扱われる測定変数に対し、平均値と標準偏 差を用いて検討する。

信頼性分析

本モデルの信頼性についての結果は以下になる。小塩(2005,P,13.)によると、測定したデータ には、誤差がつきものであるため、測定したデータの信頼性や用いた測定用具の信頼性を何らか の形で表現する必要がある。信頼性分析とはアンケートデータなどの度合いや項目の信頼性を調 べ、信頼性を高めるための分析方法である。よく分析に用いられるものに、値が大きければ信頼 性が高いとするアルファ係数がある。「信頼性がある」というのは、尺度内の項目同士に一貫性が あることである。アンケートの回答者が、同じ尺度内の項目に対して同じような回答をしていれ ばアルファ係数は大きくなり、回答のバラツキが大きければアルファ係数は小さくなる。もし、

尺度内の項目と方向性の異なる項目があれば、その項目を削除することで、アルファ係数を置き することができ、信頼性を高めることができる。

その判断基準は、小塩(2005)の基準によれば、0.50 より値が高ければ高いほどよいである。

値は0.50 を下回っていれば再考が必要と指摘している。また、Gliem and Gliem(2003,p.87) によれば、Cronbach’s alphaは、信頼性指標であり、図表 5-1に示したように、0から1までの 値で表現される(一般的に 0.7 以上であれば、変数における信頼性があると判断できる。0.6 以上 の値においては、信頼性が高いと判断されないが、分析可能なものとしてみることができる。ま た、0.5以上の数値であれば、比較的に信頼性が低い。0.5未満の数値は、信頼されないレベルで ある。すなわち、信頼性の値は0から1の間で、値が高ければ高いほど信頼性が高い。信頼性の 値は0.5以下であれば、信頼性がないと判断する。

図表 5-1 : 信頼性指標の数値と評価

Cronbach's alpha 信頼性

0.9 ≦ α Excellent (High-Stakes testing) 0.7 ≦ α < 0.9 Good (Low-Stakes testing) 0.6 ≦ α < 0.7 Acceptable

0.5 ≦ α < 0.6 Poor

α < 0.5 Unacceptable

(出典:Gliem and Gliem,2003,p.87)

判断基準において、本研究で用いられた値を分析すると、図表 5-2ようになる。新価値創造型 破壊的イノベーション志向性、新市場型破壊的イノベーション志向性とローエンド型破壊的イノ ベーション志向性の信頼係数は、0.7以上であり、信頼性を有すると判断できる。持続的イノベー ション志向性と顧客の行動観察の重視の信頼係数は、0.6 以上であり、許容される程度であるた め、一定の信頼があると判断できる。

図表 5-2 : 信頼性統計量

項目数 有効数 信頼性 係数

判定

持続的イノベーション志向性 3 50 .602 Acceptable 新価値創造型破壊的イノベーション志向性 3 49 .707 Good 新市場型破壊的イノベーション志向性 4 51 .715 Good 顧客の行動観察の重視 3 48 .635 Acceptable

(出典:筆者作成)

仮説に関する各指標の提示及び因子スコアの計算

共分散構造分析には、これまでの分析手法と比較して優れている特徴がある。その中の大きな 特徴は、従来測定できないものである「構成概念(潜在変数)」を「観測変数(測定変数)」で表すこ とができるところである。また、「複雑な関係をパス図で表現できる」と言うところもある。パス 図とは、先に述べた構成概念(潜在変数)と観測変数(測定変数)との関係を、図を使って表現したも のである。このパス図を使うことによって、今までの分析手法を、数式を使わずに表現できるた め、第三者に対し自分の研究仮説を分かりやすく伝えることができる(豊田, 2007 : p.2)。

欠損値の推定(最尤法の採用)

本研究では、母体数がやや少ないため、欠損値を除いて分析することが難しい。本研究では、

欠損値を除かなくて最尤法を採用して分析を行う。これから、AMOS(AMOS 22)の「平均値と切 片の推定」を行っており、この意義について検討する。IBM(1983, 2013 : p.249)によれば、一般 的な欠損値の処理には、三つの方法がある。一つ目は、データの一部に欠損値のある測定値を分 析から除外することである(サンプルごと除外)。二つ目は、各標本積率を個別に計算し、特定の積 率の計算に必要な値が欠損している場合にのみ観測値を計算から除外することである(ペアごと 除外)。三つ目は、データを代入することである。三つのデータの除外においては、問題が指摘さ

れているため、AMOSでは、これらの方法ではなく、最尤法による推定値を計算する(IBM, 1983, 2013 : p.250)。最尤法は、確率的な分布を用いて、ランダムに欠損が生じたこととして分析する 方法である。この方法によれば、ランダムに欠損したという条件が満たされる場合において、堅 実な推定値が得られる。したがって、本研究の実証結果においては、一部の限定(欠損データが完 全にランダムに欠損していると仮定)が存在する。

共分散構造分析では、各推定結果を吟味する必要がある。その際に、モデルが実現するために、

各指標の適合度も検討しなければならない。共分散構造分析では、推定値を求めて分析終了では なくて、推定値を出すことに加えて、自分のパス図がどれだけあてはまるのかということも確か めなければいけない。この検証に必要な指標が適合度(指標)と呼ばれる数値である。本研究で は、有意確率、CFI、RMSEAの三つの指標を検定していく。

仮説に関する各指標の提示

有意確率は、モデルとデータの乗離度がゼロであるという帰無仮説を検定する際の判断基準で あり、これが有意水準(本研究では基本的に10%)を下回る場合には、モデルの乗離度が大きい と判断される。

AMOSでは、非常にたくさんの適合度指標が表示されるが、論文やレポートにはすべてを掲載 する必要がない。その中、欠損値を除去しなくて分析する場合では、適合度に関する代表的な指 標は適合度検定有意確率(CMIN), CFI, RMSEAの三つの値である。

CMINとは、帰無仮説「構成されたパス図は正しい」を検定するために利用する。この検定は、

帰無仮説の立て方が通常とは逆になっているため、仮設が放棄されないほうがよいことになる。

つまり、表示されている確率が高いほど、望ましい結果であると判断する。この性質は、放棄で きない場合は態度を保留する、という統計学の原則にも反する。また、この検定はデータ件数に 敏感に影響を受ける性質があり、データをたくさん収集するほど放棄される可能性が高まる。こ のような問題点があるため、CMINの値でパス図の適合度を判断しないようにする。

適合度指標CFI(Comparative Fit Index:比較適合度指標)とは、CMINのようにデータ件数 の影響を受けない指標で、一般的に 0.9 以上であれば「説明力のある(=データとあてはまって いる)パス図である」と判断する。

RMSEA(Root Mean Square Error of Approximation)は、最近頻繁に利用されている指標で ある。この指標が0.05以下であればあてはまりが良く、0.1以上であればあてはまりが良くない と判断する。その間の値の場合はグレーゾーンと呼ばれており、その結果で論文やレポートをま とめる場合には、そのパス図が妥当であるという詳しい説明が必要になる。

因子スコアの計算

モデルを実証する際、顧客の行動観察を重視する程度が高いグループと低いグループに分割し、

計算を比較しながら、仮説の正確さを説明する。本研究では顧客の行動観察の重視程度に関する 因子スコアを用いる。

顧客の行動観察の重視程度をグループ化するため、「顧客の行動観察の重視程度」を各観測変数

(「顧客の課題の重視」程度、「顧客の利用環境の重視」程度、「顧客の利用目的の重視」)により確 認的因子分析を行う。この因子分析による各観測変数に対する因子得点ウェイトを用い、次の数 式で計算した「顧客の行動観察の重視程度」の因子スコアを算出する。因子スコアの大小により、

グループ化を行う。

「顧客の行動観察の重視程度」因子スコア=Σ(各観測変数の値-各観測変数の平均値)×因 子得点ウェイト係数

図表 5-3に示したどおり、「顧客の行動観察の重視程度」の平均値-0.04324で、標準偏差0.33641 の結果となる。この顧客の行動観察の重視程度が-0.04324より大きいグループを「顧客の行動観 察を重視しているグループ」(サンプル52社のうち24社)として分析し、この顧客の行動観察の 重視程度が-0.04324 より小さいグループを「顧客の行動観察を重視しないグループ」(サンプル 52社のうち28社)として分析を行う。

図表 5-3「顧客の行動観察の重視程度」の記述統計

度数 最小値 最大値 平均値 標準偏差 顧客の行動観察の重視程度 52 -1.09049 .66251 -.04324 .33641

実証分析の結果

前述したように、新市場型破壊的イノベーションと新価値創造型破壊的イノベーションを実現 できるかどうか、一番大切なポイントは、顧客の真のニーズあるいは潜在化されているニーズを 把握できるかどうかである。また、潜在化されているニーズを把握するために、顧客の行動観察 を重視しなければならない。すなわち、顧客の行動観察を重視している企業グループと顧客の行 動観察を重視していない企業グループを分けて、持続的イノベーションの志向性と新市場型破壊 的イノベーション志向性の関係及び持続的イノベーションの志向性と新価値創造型破壊的イノベ ーションの志向性を分析するンケート結果を元に、IBM社のAMOSによって、有意確率、CFIと

RMSEA三つの適合度指標が以下のような図表 5-4で示される。

図表 5-4 :各適合度指標一覧表(二)

指標名 χ2 CFI RMSEA

計算結果 .056 .839 .076 基準値 >0.05 >0.9 <0.1

判定 ○ × ○

※ 適合判定の表記 ○=判定基準を満たす ×=判定基準を満たさない

適合度検定有意確率はχ2値である。帰無仮説「構成されたパス図は正しい」を検定するために 利用する。この検定は、帰無仮説の立て方が通常とは逆になっているため、仮設が棄却されない ほうがよいことになる。つまり、表示されている確率が高いほど、望ましい結果であると判断す る。

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