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有界領域における離散化勾配系モデルの分岐特性

第 6 章 離散化勾配系モデルのカオスを用いた制約条件付大域的最適化 120

6.2 離散化勾配系モデルとそのカオス特性

6.2.3 有界領域における離散化勾配系モデルの分岐特性

本節では,離散化勾配系モデル(6.4)式,(6.5)式からのカオス発生,および各モデルの カオス特性を,簡単な例をあげて述べる.

1変数多峰性関数

E(x) = 10(x10.4)2cos(10πx1) (6.6) を考える.(6.6)式の関数は図6.1の通りであり,明らかにx1 = 0.4が大域的最適解である ほか,0,0.2,0.6,0.8,1.0付近に局所的最適解が存在する.

(6.6)式を目的関数とし,制約領域Xを(2.2)式によって定める1次元上下限制約付最適

化問題(2.1)を考え,離散化勾配系モデル(6.4),(6.5)式へあてはめる.この場合,各モデ

ルの有界非線形関数f,φは(2.16)式のシグモイド関数を用いる.

離散化した非線形作用素勾配系で,差分化のステップ幅∆T を制御パラメータに選び,

その値を変化させることによる力学系の性質変化を観測するため,カオスの解析で一般的 に用いられる「分岐図」を,決定変数xならびに内部状態変数uに関して描き,図6.2に 示す.これらは,制約付最適化問題の各最適解からわずかに摂動した点を決定変数の初期 点とする軌道について,(6.4)式を写像とみなして十分に大きい回数(本例では10000回)

反復させた後の準定常状態における軌道の通過点を,∆T の値と対応づけて描いたもので ある.

決定変数xに関する分岐図で,∆T の値が小さい場合には,軌道はそれぞれ近傍の最適 解に引き込まれ収束する.勾配系モデルを力学系と解釈すれば,各最適解は離散力学系の 不動点,特にこの条件では安定不動点であることを意味している.しかし,∆T の値を大 きくしてゆくと,各最適解の近傍で2周期,4周期,· · · の周期倍加分岐がおこり,振動 を生じる.ここで,分岐とはあるパラメータの変化により不動点の性質が変化する現象で ある.さらに∆T の値を増加してゆくと,軌道がある有界領域内を埋めつくすカオス領域 に至る.カオスの占める領域は段階的に広がってゆく.一方,内部状態変数uに関しても 同様に分岐がおこる様子を観測できる.ここで,u空間で分岐が生じるパラメータ値は,

x空間で分岐が生じるパラメータ値と同一であることがわかる.

図6.2から,パラメータ値の変化幅を大きくした分岐図が図6.3である.x空間の分岐図

では,やがてカオスが制約領域全体を占めるようになり,そのような領域に対応して内部 状態空間の分岐図に明瞭なバンド領域(カオスの不変領域)が見られる.ただし,∆T の 値を増加させ続けるとバンド領域が消滅してしまう.このとき,制約のない変数uの軌 道は∆T の増加にともなって広がるのに対し,決定変数xは有界関数f によって制約領 域に閉じ込められるので,境界上を巡回する軌道となる.

次に,非線形変数変換勾配系の離散化モデル(6.5)で,同様に差分化のステップ幅∆T を制御パラメータとして変化させた分岐図(図6.4,図6.5)を評価する.

今回も,最適解へ収束する勾配系の軌道が,差分化ステップ幅の増大が最適解,すなわ ち力学系の平衡点を不安定化させ,軌道がカオス的になる.ただし,勾配系モデルが異な れば生じるカオスの性質も大きく異なり,図6.5では制約領域全域を占めることなくカオ スが壊れることが確認される.

-1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

E

x

1

図 6.1: 問題(6.6)に対する目的関数Eの形状

(a) 決定変数xに関する分岐図

(b) 内部状態変数uに関する分岐図

図 6.2: 非線形作用素勾配系の離散化モデルの分岐図(1)

(a) 決定変数xに関する分岐図

(b) 内部状態変数uに関する分岐図

図 6.3: 非線形作用素勾配系の離散化モデルの分岐図(2)

(a) 決定変数xに関する分岐図

(b) 無制約化変数yに関する分岐図

図 6.4: 非線形変数変換勾配系の離散化モデルの分岐図(1)

(a) 決定変数xに関する分岐図

(b) 無制約化変数yに関する分岐図

図 6.5: 非線形変数変換勾配系の離散化モデルの分岐図(2)