第 4 章 超球面上の勾配系力学モデルによる主成分分析の実現 71
4.4 シミュレーション結果
-1 -0.5 0 0.5 1
0 100 200 300 400 500
θ
ij[rad]
iteration
θ
12θ
13θ
23図 4.1: 3次元主成分分析例題における決定変数θの変化
0 0.0002 0.0004 0.0006 0.0008
0 100 200 300 400 500 J ( w
i), J
totaliteration J(w
1) J(w
2) J(w
3) J
total図 4.2: 3次元主成分分析例題における目的関数J(wi)およびJtotalの変化(1)
ところで,(4.34)式による回転では特異点が存在するため,人工衛星の姿勢制御やコン ピュータグラフィックにおいて回転をとり扱うとき,角度不定性に伴いジンバルロックと 称される問題を起こすことが知られている[99].特に3次元では,(4.34)式でθ13=±π2 と なるとき,2つの回転軸が重なりあうため,θ12,θ23それぞれの値によるのではなく,両 者の差θ23−θ12のみによりR(θ)が決まる角度不定性を生じる.そこで,θ13 = π2 とし,
θ12 = π5,θ23 = 4π5 とおいて与えられる(4.38)式のw1,w2,w3がそれぞれ主成分方向を 与えるような共分散行列
C =
0.1313 0.0 0.0
0.0 0.1346 −0.1273 0.0 −0.1273 0.4849
(4.47)
を恣意的に与え,この共分散行列を勾配法モデル(4.43)に適用して,回転の特異点が与え る影響の有無を調べる.
θ(0) =0からの決定変数θの変化をFig.4.3に示す.この場合に求められた解は
θ∗ = [0.0, 0.0, 0.3142] (4.48)
で,あらかじめ与えた回転角の値とは異なっているが,(4.48)式から3つの主成分方向を 正しく得ることができた.
実際,提案手法には大域的最適解が複数存在し,試行初期点から勾配法モデルによりそ れらの1つを発見できればよいため,回転角そのものを一意に定めることを必要としな い.そのうえ,決定変数θは不定に陥ったとしても,非線形変換(4.31)を通して観測され るベクトルは一定値になるので,主成分方向の発見に支障を生じない.また,数値計算で
はJtotalの値を評価して反復の打切り操作を行えばθの不定性を排除することができるの
で,回転演算の特異性が提案手法の有効性にもたらす影響は小さいと考えてよい.
なお,このような回転の特異性を回避するために,四元数を利用した回転の表現[28]や,
回転角度の特異性を判定のうえ摂動させる方法[92]なども研究されている.
-1 -0.5 0 0.5 1
0 20 40 60 80 100
θ
ij[rad]
iteration
θ
12θ
13θ
23図 4.3: 3次元主成分分析例題における目的関数J(wi)およびJtotalの変化 (回転に特異 性が存在する場合)
4.4.2 10次元主成分分析
4を上回る次元数の主成分分析では,元の探索空間の次元数nと問題(4.35)で考える決 定変数θの成分数,すなわち回転の自由度n(n2−1) は一致しない.一方,この数はn次元 ベクトル(探索個体)をn個独立して与える場合の自由度n2より小さい.本条件のもと
でも問題(4.35)の解が適切に得られれば,自由度の数に過不足がなく,回転に帰着した問
題定式化の妥当性を認めることができる.
以下では10次元の例題を考える.このとき,回転の自由度は10(102−1) = 45である.3次 元例題と同様にして乱数データの共分散行列を与え,提案した勾配法モデルに適用したと
きのJtotalの推移を図4.4に示す.変数の多さにもかかわらず,目的関数値は単調に減少し
ていることが確かめられる.
また,図4.5は,決定変数θの全45個の成分について,変化を重ねて表したものであり,
いずれの変数も収束することがわかる.それらの収束値θ∗は表4.1に示すようであり,こ
れを(4.35c)式に代入して求めた10個のベクトルは表4.2のように得られた.10個のベク
トルは確かに正規直交条件を満足し,それぞれ主成分方向に対応することが確かめられた.
0 0.003 0.006 0.009 0.012 0.015
0 200 400 600 800 1000 J
totaliteration J
total図 4.4: 10次元主成分分析例題における決定変数θの変化
-1 -0.5 0 0.5 1
0 500 1000 1500 2000
θ
ij[rad]
iteration
図 4.5: 10次元主成分分析例題における目的関数J(wi)およびJtotalの変化
表 4.1: 10次元主成分分析例題における回転角の収束値θ∗
θ12 0.3638631667 θ29 0.2091325246 θ56 0.2821923252 θ13 0.1373446582 θ210 −0.1725605549 θ57 −0.5152241996 θ14 0.7513807608 θ34 0.1687650706 θ58 0.5286604574 θ15 0.1942833047 θ35 0.2112673120 θ59 −0.4303772541 θ16 −0.0838502104 θ36 0.0065738319 θ510 −0.3635289690 θ17 −0.0591830599 θ37 0.3623206189 θ67 0.3378035484 θ18 −0.0132447861 θ38 0.1171593427 θ68 0.1845530132 θ19 −0.0160834135 θ39 −0.0322593492 θ69 −0.4476332793 θ110 −0.1511450189 θ310 0.1473779970 θ610 0.6269378889
θ23 0.4276673318 θ45 0.1687872513 θ78 0.3793926031 θ24 0.7336867022 θ46 −0.2484657926 θ79 0.0552415687 θ25 −0.8384679140 θ47 0.1767236463 θ710 0.0694129744 θ26 0.2254761096 θ48 0.1356398410 θ89 −0.4284864632 θ27 0.1908800842 θ49 0.3775189076 θ810 0.2093985609 θ28 0.5203537323 θ410 −0.5903947422 θ910 0.2927387080
表 4.2: 10次元主成分分析例題における主成分方向wi(θ∗)の推定結果
i wi(θ∗) 主成分
1 [0.65258,0.248518,0.096516,0.658544,0.189818,
−0.082634,−0.058461,−0.013092,−0.015899,−0.150570]T
第1 2 [−0.292733,0.275411,0.142102,0.345958,−0.582166,
0.183464,0.159315,0.479388,0.204917,−0.169748]T
第8 3 [−0.059875,−0.456110,0.765275,0.122299,0.203374,
−0.019056,0.334005,0.115532,−0.026321,0.143015]T
第3 4 [−0.229769,−0.511822,−0.370499,0.287677,0.189702,
−0.222320,0.118863,0.022985,0.278457,−0.536291]T
第7 5 [−0.340153,0.195566,0.103648,0.023533,0.495820
0.158839,−0.378725,0.385365,−0.436775,−0.284560]T
第2 6 [0.056580,−0.276226,−0.441957,0.271413,0.098237,
0.535462,0.232462,0.224105,−0.241482,0.438817]T
第9 7 [0.013210,0.414824,−0.163236,−0.209771,0.357202,
−0.299722,0.673843,0.283237,0.060148,0.042012]T
第6 8 [0.292048,−0.295778,−0.101745,−0.138564,−0.255912,
−0.514979,−0.217192,0.586315,−0.245480,0.125612]T
第4 9 [0.165758,−0.022892,0.035098,−0.180758,0.291113,
0.223650,−0.315907,0.350204,0.742828,0.170571]T
第5 10 [−0.447449,0.133246,−0.057256,0.422872,0.119936,
−0.438996,−0.216815,−0.103822,0.121517,0.565932]T
第10