• 検索結果がありません。

第 2 章 直積集合に束縛された非線形力学系による制約条件付最適化 6

2.5 シミュレーション結果

本節では,2次元凸関数を目的関数の例にあげ,数値例を通じて単位超立方体領域を有 界な制約領域Xとする制約条件付最適化問題を実現するための2.2節の非線形作用素勾配 系モデル,あるいは2.3節の非線形変数変換勾配法モデルの特性を比較する.また,最適 解が制約領域の境界上に存在する場合,2.4節で考慮した障壁法を適用することによって 得られる力学系の安定化効果を示す.

なお,シミュレーション結果はいずれもRunge-Kutta法により数値的に計算したもの である.

制約付最適化問題(2.1)で,制約領域Xが(2.2)式の単位超立方体領域で与えられる0-1 上下限制約付最適化問題に対し,目的関数Eとして2次元(n= 2)凸関数

E(x) = x21−x1x2+ 2x22−x1−x2 (2.74) を考える.その形状は図2.8に示す通りであり,制約領域内部の点(5/7,3/7)で最小となる.

非線形作用素勾配系モデルにおいては決定変数xおよび内部状態変数u,非線形変数変 換勾配系モデルにおいては決定変数xと無制約化変数yの軌道を描いたものを,それぞ れ図2.9,図2.10に示す.ただし,決定変数の初期点x(0)は,制約領域内においてx1,x2

でそれぞれ0.001,0.1から0.1間隔で0.9までの値,および0.999と変化させて生成した計 121点を用いた.両モデルに対する有界非線形関数はいずれも(2.16)式のシグモイド関数 を用い,内部状態変数および無制約化変数の初期値はその逆関数(2.17)によりf1(x(0)) を計算して与えた.

計算結果において,いずれの勾配系モデルでも決定変数xが(5/7,3/7)へ,内部状態変 数uおよび無制約化変数yは(0.9163,0.2879)に収束した.ただし,2種類のモデルは ともに初期点と収束点が一致する一方,その間の通過点をあらわす軌道形状が大きく異な る.非線形作用素勾配系では収束点まで軌道が相互に漸近し続けるのに対し,非線形変数 変換勾配系では初期点付近ですみやかに軌道が集合し,同一経路を経て最適解へ向かうこ とがわかる.

図 2.8: (2.74)式の形状

(a) 決定変数xの軌道 (b) 内部状態変数u の軌道 図 2.9: 最適解が制約領域内部に存在する場合の非線形作用素勾配系モデルの軌道

(a) 決定変数xの軌道 (b) 無制約化変数y の軌道

図 2.10: 最適解が制約領域内部に存在する場合の非線形変数変換勾配系モデルの軌道

次に,(2.74)式の関数をx1,x2方向ともに+1だけ平行移動した関数

E(x) = x21−x1x2+ 2x222x14x2+ 4 (2.75) を考える.制約条件がない場合,(2.75)式の最小点は(12/7,10/7)であるが,制約領域内 では図2.11の通り(1.0,1.0)が最適解である.

試行初期点は前の例と同様に与え,非線形作用素勾配系モデルを用いて決定変数xおよ び内部状態変数uの軌道を描いたものを図2.12に示す.決定変数xは(1.0,1.0)へ収束し たが,対応する内部状態量uは[1,1]T 方向に沿って発散した.そのため,内部状態を安定 化するため1次遅れ項を有する内部状態表現モデル(2.65)式を適用し,時定数をτ = 10 と設定して試行初期点からの軌道を描いたものを図2.13に示す.境界上に存在する最適点 は上下限領域内部へ僅かに摂動され,決定変数xは(0.99995,0.99995)へ収束した.また,

内部状態変数uも安定化され,(10.000,10.000)に収束した.なお,前例において非線形 作用素勾配系が示した,最適解に収束するまで軌道が相互に漸近する性質は,1次遅れ項 を考えた場合も含めてやはり見出すことができる.

図 2.11: (2.75)式の形状

(a) 決定変数xの軌道 (b) 内部状態変数u の軌道

図 2.12: 最適解が制約領域境界上に存在する場合の非線形作用素勾配系モデルの軌道(1

次遅れ項なし)

(a) 決定変数xの軌道 (b) 内部状態変数u の軌道

図 2.13: 最適解が制約領域境界上に存在する場合の非線形作用素勾配系モデルの軌道(1

次遅れ項あり,時定数τ = 10)

一方,非線形変数変換勾配系モデルにおいても,1次遅れ項を加えることによる変数安 定化効果の確認を含めて,軌道の追跡をおこなう.非線形変数変換勾配系(1次遅れ項な し)の結果を示す図2.14では,決定変数が(1.0,1.0)に収束したのに対し,無制約化変数 はやはり発散した.次に,1次遅れ項を加えたモデル(2.68)を用い,時定数をτ = 10と 設定した図2.15では,最適点の摂動量が大きく,決定変数xの収束点が(0.8356,0.8542),

対応する無制約化変数yの収束点が(1.6256,1.7676)となった.一方τ = 1000と設定す ると,決定変数の収束点は(0.99475,0.99480)となり,図2.16に示すように無制約化変数 の収束点が(5.245,5.254)に変化した.したがって,時定数を十分大きくとることにより,

決定変数の最適解をほとんど変化させることなく,変数の安定化を実現できることが確か められた.

(a) 決定変数xの軌道 (b) 無制約化変数y の軌道

図 2.14: 最適解が非負領域境界上に存在する場合の非線形変数変換勾配系モデルの軌道

(1次遅れ項なし)

(a) 決定変数xの軌道 (b) 無制約化変数y の軌道

図 2.15: 最適解が非負領域境界上に存在する場合の非線形変数変換勾配系モデルの軌道

(1次遅れ項あり,時定数τ = 10)

(a) 決定変数xの軌道 (b) 無制約化変数y の軌道

図 2.16: 最適解が非負領域境界上に存在する場合の非線形変数変換勾配系モデルの軌道

(1次遅れ項あり,時定数τ = 1000)