[証明]x,y,zの既約分数による表示をa/b,c/d,e/fとする. まず, xz= ae
bf, yz= ce
df. z >0より,e >0,f >0だから, ef >0. よって
xz <+z⇐⇒cebf −aedf >0
⇐⇒(bc−ad)ef >0
⇐⇒bc−ad >0
⇐⇒x < y となる.
[定理 3.19]任意のx, y∈Qに対して,x < yならば,あるz∈Qが存在してx < z < yが成り 立つ. この性質をQの稠密性という.
[証明]a/b, c/dをそれぞれx,yの既約分数による表示とする. b >0,d >0よりb+d >0. そ こで,
z=a+c b+d とおく. x < yより,bc−ad >0である. よって
b(a+c)−a(b+d) =bc−ad >0, (b+d)c−(a+c)d=bc−ad >0.
したがってx < z < y.
となる. さらに, b <0のときは,x=a/b= (−a)/(−b)とb >0のときの結果を用いて
|a|
|b| =| −a|
| −b| =|a0|
|b0| が得られる.
任意のa∈Zに対して,a=a/1だから,
|a|0=¯¯¯a 1
¯¯¯0=|a| 1 =|a|.
したがって,有理数の絶対値は整数の絶対値の拡張になっている. そこで,有理数の絶対値もまた
| ∗ |で表すことにする.
[命題 3.20]任意のx∈Qに対して,
|x|=
x x >0のとき
0 x= 0のとき
−x x <0のとき が成り立つ.
[証明]xの既約分数による表示をa/bとするとき,b >0なので, x >0⇐⇒a >0,
x= 0⇐⇒a= 0, x <0⇐⇒a <0
であることから明らかである. 例えば,x <0のとき,a <0より|a|=−aなので,
|x|= |a| b = −a
b =−a b =−x となる.
[命題 3.21]任意のx,y∈Qに対して,次が成り立つ.
(i) |x| ≥0.
(ii) |x|= 0⇐⇒x= 0.
(iii) x≤ |x|. (iv) |−x|=|x|.
(v) |xy|=|x||y|.
(vi) y6= 0ならば,|x/y|=|x|/|y|. 特に,|1/y|= 1/|y|.
[証明](i)上の命題と,x <0ならば−x >0であることからわかる.
(ii)上の命題から明らかである.
(iii)x= 0またはx >0のときは|x|=xである. x <0のときはx <0<|x|である.
(iv)x=a/bを既約分数による表示とすると,|−x|=|−a|/b=|a|/b=|x|.
(v)x=a/b,y=c/dを既約分数による表示とすると,xy= (ac)/(bd),bd >0より,
|xy|= |ac|
bd =|a||c| bd = |a|
b
|c|
d =|x||y| となる.
(vi)y·(x/y) =xであるから, (v)より|y||x/y|=|x|. 両辺を|y|で割れば,|x/y|=|x|/|y|が得 られる.
[定理 3.22]任意のx,y∈Qに対して,次が成り立つ.
(i) |x+y| ≤ |x|+|y|. この不等式は三角不等式と呼ばれる.
(ii) |x−y| ≤ |x|+|y|. (iii) |x| − |y| ≤ |x+y|. (iv) |x| − |y| ≤ |x−y|.
[証明](i)x≤ |x|,y≤ |y|より
x+y≤ |x|+|y|. 一方,−x≤ |x|,−y≤ |y|より
−(x+y)≤ |x|+|y|.
|x+y|はx+yか−(x+y)のどちらかに等しい. よって
|x+y| ≤ |x|+|y|. となる.
(ii) (i)において,yに−yを代入すれば, |−y|=|y|より(ii)が得られる.
(iii) (ii)においてyにx+yを代入すれば,
|x−(x+y)| ≤ |x|+|x+y|. これと|−y|=|y|より(iii)が得られる.
(iv) (i)においてxにx−yを代入すれば,
|(x−y) +y| ≤ |x−y|+|y|. これより(iv)が得られる.
4 実数
4.1 Q の Cauchy 列
Xを集合とするとき,NからXへの写像をX における元の列という. 写像 f :N−→X, n7−→f(n)
に対して,xn =f(n)とおくとき,f を(xn|n∈N)または(xn)と書く. 特に,XがN,Z,Q,R,C のときには14), (xn)を数列という.
Qの元の列(an)がQのCauchy列であるとは,任意の正の有理数εに対して,ある自然数n0が 存在して,任意の自然数m, nに対して,m > n0かつn > n0ならば, |am−an|< εが成り立つと きにいう. QのCauchy列全体からなる集合をCとする.
[定理 4.1] (i) 任意の(an), (bn)∈ Cに対して, (an+bn)∈ C. (ii) 任意の(an)∈ Cに対して, (−an)∈ C.
[証明](i) (an), (bn)∈ Cとすると,任意の正の有理数εに対して,ある自然数n0,n1が存在して, 任意の自然数m, nに対して
m > n0, n > n0=⇒ |am−an|< ε 2, m > n1, n > n1=⇒ |bm−bn|< ε
2. したがって,n2= max{n0, n1}とおくと,m,n > n2ならば,
|(am+bm)−(an+bn)| ≤ |am−an|+|bm−bn|< ε 2 +ε
2 =ε が成り立つ.
(ii)|am−an|=|(−am)−(−an)|より明らか.
[補題 4.2](an)∈ Cとする. このとき,あるc∈Qが存在して,任意のn∈Nに対して|an|< c が成り立つ. これをCauchy列の有界性という.
[証明](an)∈ Cとすると,ある自然数n0が存在して,任意の自然数m,nに対して,m > n0かつ n > n0ならば,|am−an|<1が成り立つ. よって特に,任意のn > n0に対して,|an−an0+1|<1 となるから,
|an| ≤ |an−an0+1|+|an0+1|<1 +|an0+1|. ゆえに,
c= max{|a0|,|a1|, . . . ,|an0|,1 +|an0+1|}
とおけば,すべてのn∈Nに対して|an|< cが成り立つ.
14)R,Cは後で定義する.
[定理 4.3]任意の(an), (bn)∈ Cに対して, (anbn)∈ C.
[証明]上の補題より, あるa, b∈Qが存在して, 任意のn∈Nに対して,|an|< aかつ|bn|< b が成り立つ. c= max{a, b}とおく.
一方,任意の正の有理数εに対して,ある自然数n0,n1が存在して,任意の自然数m,nに対して, m > n0, n > n0=⇒ |am−an|< ε
2c, m > n1, n > n1=⇒ |bm−bn|< ε
2c.
n2= max{n0, n1}とすれば,任意の自然数m,nに対して,m > n2かつn > n2ならば,
|ambm−anbn|=|am(bm−bn) +bn(am−an)|
≤ |am||bm−bn|+|bn||am−an|
< c· ε
2c +c· ε 2c =ε.
したがって(anbn)∈ C.
[補題 4.4]任意の(an)∈ Cに対して, 次の三つの場合のいずれか一つ, しかも一つだけが成り 立つ.
(i) 任意の正の有理数εに対して,あるn0∈Nが存在して,任意のn∈Nに対して,n > n0なら ば|an|< ε.
(ii) ある正の有理数cとn0∈Nが存在して,任意のn∈Nに対して,n > n0ならばan≥c.
(iii) ある正の有理数cとn0∈Nが存在して,任意のn∈Nに対して,n > n0ならばan≤ −c.
[証明]まず, (ii), (iii)が同時に成り立つと仮定すると, (ii)より, ある正の有理数cとn0 ∈ N が存在して, 任意のn ∈ Nに対して, n > n0 ならばan ≥ cが成り立つ. (iii)より, ある正の 有理数c0とn00 ∈ Nが存在して, 任意のn ∈ Nに対して, n > n00ならばan ≤ −c0 が成り立つ.
n000 = max{n0, n00}+ 1とおくと, an00
0 ≥c >0かつan00
0 ≤ −c0<0となって矛盾する. したがって (ii)と(iii)は同時に成り立たない.
(i)のεとして(ii)のcをとれば,それは(ii)とは両立しえない. よって(i)と(ii)が同時に成り立 つことはない. (i)と(iii)についても同様である.
次に,いずれかの条件が成立することを示すために, (ii), (iii)が成り立たないと仮定する. (i)が 成り立つことをいえばよい.
正の有理数εを任意にとる. (an)はCauchy列であるから,あるn0∈Nが存在して, 任意のm, n∈Nに対して,m > n0かつn > n0ならば,
|am−an|< ε 2
が成り立つ.
一方, (an)は(ii)を満たさないと仮定した15)から, あるn1 ∈ Nが存在して, n1 > n0 かつ an1 < ε/2となる. 同様に, (an)は(iii)を満たさないと仮定した16)から,あるn2∈Nが存在して, n2> n0かつan2 <−ε/2となる. よってn > n0ならば,
an = (an−an1) +an1≤ |an−an1|+an1 < ε 2+ε
2 =ε, an = (an−an2) +an2≥ −|an−an2|+an2 >−ε
2−ε 2 =−ε.
ゆえに|an|< εとなる. したがって(i)が成り立つ.