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有理数の構成

x, z R, y, w R とし, g([x, y]) = g([z, w])とする. このとき, 上の補題より[x, y] = ϕ(x)ϕ(y)1, [z, w] =ϕ(z)ϕ(w)1であるから,

g([x, y]) =g(ϕ(x)ϕ(y)1) =g(ϕ(x))g(ϕ(y))1=ψ(x)ψ(y)1, g([z, w]) =g(ϕ(z)ϕ(w)1) =g(ϕ(z))g(ϕ(w))1=ψ(z)ψ(w)1. これらより,

ψ(x)ψ(y)1=g([x, y]) =g([z, w]) =ψ(z)ψ(w)1. したがってψ(x)ψ(w) =ψ(z)ψ(y)となる. ψは単射準同型だから,

ψ(x)ψ(w) =ψ(z)ψ(y) =⇒ψ(xw) =ψ(zy)

=⇒xw=zy

=[x, y] = [z, w].

ゆえにgは単射である.

よって,整域Rを含む体Lはすべて,Kを部分環とすることがわかる.

一方,前の前の定理よりK自身がRを部分環とする体である. したがってKは,Rを部分環と する体のうちで最小のものである.

Kを整域Rの商体と呼ぶ.

さらに,任意のa,b∈Z, b6= 0に対して,

[a, b] = [a,1][1, b] =ab1. したがって

Q={ab1|a, b∈Z, b6= 0} と表すことができる.

Qの加法と乗法が満たす主な性質をまとめておく.

零元の存在と一意性:ある0Qがただ1つ存在して,任意のx∈Qに対して,x+0 = 0+x= 0.

加法における逆元の存在と一意性:任意のx∈Qに対して, ある−x∈Qがただ1つ存在し て,x+ (−x) = (−x) +x= 0.

加法における結合法則:任意のx,y,z∈Qに対して, (x+y) +z=x+ (y+z) = 0.

加法における交換法則:任意のx,y∈Qに対して,x+y=y+x.

乗法における単位元の存在と一意性:ある1Qがただ1つ存在して,任意のx∈Qに対し て,x+ 1 = 1 +x= 0.

乗法における逆元の存在と一意性:任意のx∈Qに対して,あるx1Qがただ1つ存在し て,xx1=x1x= 1.

乗法における結合法則:任意のx,y,z∈Qに対して, (xy)z=x(yz) = 0.

乗法における交換法則:任意のx,y∈Qに対して,xy=yx.

分配法則:任意のx,y,z∈Qに対して,x(y+z) =xy+xz, (x+y)z=xz+yz.

慣例にしたがって,任意のx,y∈Q,y6= 0に対して, x

y =xy1 と定める. すると,

1

y = 1·y1=y1 となる.

特に,任意のa,b∈Z,b6= 0に対して, [a, b] =a/bであり, Q=

{a b

¯¯¯¯a, b∈Z, b6= 0 }

と表せる. また, 任意の整数a∈Zに対して,a=a/1と表せる.

[命題 3.8]任意のa,b, c∈Zに対して,b6= 0,c6= 0ならば, a

b =ac bc が成り立つ.

[証明]a(bc) = (ac)bとなることからわかる.

[命題 3.9]任意のx∈Qに対して,あるa,b∈Z,b >0が存在して,x=a/b.

[証明](i)x∈Qとすると,あるa,b∈Z,b6= 0が存在してx=a/bと書ける. a(−b) = (−a)bな ので,b <0のとき,x=a/b= (−a)/(−b),−b >0となる.

[定理 3.10]xQとする. このとき,あるa0, b0Z,b0>0が一意的に存在して, x= a0

b0, gcd(a0, b0) = 1 が成り立つ. またこのとき,

b0= min{b∈Z|b >0かつ,あるa∈Zが存在してx=a/b}

である. 有理数xがこのように表されるとき,a0/b0xの既約分数による表示といい,xは既約分 数a0/b0で表されるという.

[証明]前の命題より, あるa, b Z, b > 0が存在して, x=a/b. 一方, d = gcd(a, b)とおき, a0=a/d,b0=b/dとおくと,

d= gcd(a, b) = gcd(a0d, b0d) =d·gcd(a0, b0) よりgcd(a0, b0) = 1が得られる. さらに,

x= a b =a0d

b0d =a0

b0

. となる12).

次に,a0,b0,a00,b00Z,b0>0,b00>0とし, x= a0

b0

, gcd(a0, b0) = 1, x= a00

b00, gcd(a00, b00) = 1

であるとする. このとき, a0b00 =a00b0である. gcd(a0, b0) = 1より, b0 |b00でなければならない.

同様に, gcd(a00, b00) = 1より,b00|b0でなければならない. b0>0,b00>0であるから,b0=b00が得 られ,さらにa0=a00も得られる. これで一意性が示された.

Bx={b∈Z|b >0かつ,あるa∈Zが存在してx=a/b}

とおくと, BxNであり,前の命題よりBx6=である. よってNの整列性により最小元b0が存 在する. また, あるa0 Zが存在してx=a0/b0と書ける. d0 = gcd(a0, b0)とおくとき, もし仮に d0 >1ならば,a00=a0/d0,b00=b0/d0とおくと, x=a00/b00, b0 > b00>0となってb0の最小性に反 する. したがってd0 = 1. さらに,上で示した一意性によりb0=b0となる.

12)ここで,最大公約数dは正の整数であることに注意せよ.

[命題 3.11x∈Qとし, a0/b0xの既約分数による表示とする. このとき, 任意のa, b Z, b >0に対して,x=a/bならば, d= gcd(a, b)とおくとa=a0d,b=b0dとなる.

[証明]d= gcd(a, b)とおき,a0=a/d,b0=b/dとおくと, x= a0

b0, gcd(a0, b0) = 1

となり,xは既約分数a0/b0で表される. 既約分数による表示の一意性により,a0=a0,b0=b0とな る. したがってa=a0d,b=b0d.

[命題 3.12] (i) 任意のa∈Zに対して,a/1aの既約分数による表示である.

(ii) 任意のb,c∈Z,b6= 0に対して, c

b Z⇐⇒cbの倍数 が成り立つ.

[証明](i)QがZの商体であることから,a=a/1であることは明らかである. また, Bx={b∈Z|b >0かつ,あるa∈Zが存在してx=a/b}

とおくと, 1∈Bxである. 1がBxの最小元であることはすぐにわかる13). よってa/1aの既約 分数による表示である.

(ii)a=c/bとおく. (i)より,c/bの既約分数による表示はa/1である. 前の命題から,d= gcd(c, b) とおくとc=ad, b= 1·d=dとなる. よってc=ab. 逆に, cbの倍数ならば, あるt∈Zが存 在してc=tbとなる. よってc/b= (tb)/b=t/1 =t.

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