第 7 章 高サイクル疲労強度に及ぼす気孔および結晶粒の影響
7.3 実験結果および考察
7.3.1 最大気孔径の推定結果
Fig. 7.1~Fig. 7.5に極値統計の結果を示す.Fig. 7.1はMIM製Ti-6Al-4V合金 の焼結材および HIP 処理材について極値統計を実施した結果である.各断面写 真中の最大気孔径のデータは直線上に位置しており,最大気孔径の分布が二重 指数分布に従っていることがわかる.図中の垂線はそれぞれの近似直線におけ るymaxからの垂線であり,各焼結体のdmaxを表している.焼結ままのTi64のdmax
は48 µmであるものの,HIP処理を施すと13 µmへと減少している.
Fig. 7.2には微細粉末製焼結体の最大気孔径を推定した結果を示す.微細粉末
製焼結体においては焼結まま材で23 µm~33 µmのdmaxを示しており,粉末粒径 の微細化によって気孔径も微細化していることがわかる.更に,dmaxはFine 1423 K が最も小さく,焼結温度を上げた場合においても下げた場合においても dmax が大きくなっている.この理由としては,焼結温度の低いFine 1373 Kでは相 対密度が低いため,焼結が不十分となり大気孔が残存しているものと考えられ る.一方で焼結温度の高いFine 1503 KやFine 1573 Kに関してはオストワルド 成長によりdmaxが増大したものと推定される.HIP処理材に関しては,粉末粒径 の影響が表れておらず,dmaxは13 µm~17 µmであり,通常粒度の粉末のHIP処 理材(Ti64-HIP)と同等であった.
Fig. 7.3に4Mo-0.4B添加材と0.4B添加材についての極値統計の結果を示す.
0.4B-4hのdmaxは60 µmと大きかった.これは,他の焼結体よりも相対密度が低
いためと考えられる.4Mo-0.4B-4hと4Mo-0.4B-8hのdmaxは49 µmであり,Ti64-4h と同等であった.4Mo-0.4B-8hの相対密度は99.2 %であり,Ti64-4hの97.4 %,
4Mo-0.4B-4hの 97.7 %より緻密化が進んでいるものの,dmaxは同等の値であり,
焼結による緻密化によって dmax を減少させることは困難であることが示唆され た.HIP処理を施した0.4B-HIPのdmaxは20µmであり,4Mo-0.4B-HIPのdmaxは
10 µmであった.
Fig. 7.4にα+β域焼結体の極値統計の結果を示す.1253 K-24hのdmaxは55 µm と若干大きいものの,1253 K-48hと1253 K-96hは49 µmと推定され,Ti64-4h と同等である.HIP処理を施した1253 K-24h-HIPのdmaxは14 µmであり,他の 条件とほぼ同等である.
- 102 -
Fig. 7.5にHDH処理材の極値統計の結果を示す.HDHのdmaxは58 µmであり,
HDH処理前のTi64-4hよりも増加した.HDH-HIPのdmaxは17 µmを示し,他の
条件とほぼ同等であった.
以上のように,焼結体中の最大気孔径に対しては,組成,焼結条件,熱処理 の影響は小さく,粉末の粒度の影響が大きいことがわかった.また,HIP処理材 に関しては全条件でほぼ同等の最大気孔径であった.
- 103 -
Fig. 7.1 Results of extremal statistics of the Ti-6Al-4V sintered compacts and the HIP treated compacts.
Fig. 7.2 Results of extremal statistics of the fine powder compacts.
99.995 99.966 99.752 98.185 87.342 36.788 0.062
-2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
-2 0 2 4 6 8 10
0 10 20 30 40 50 60 70
F[%]
Y= -Ln[Ln{j/(n+1)}]
Pore diameter [µm]
Ti64-HIP Ti64-4h
99.995 99.966 99.752 98.185 87.342 36.788 0.062
-2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
-2 0 2 4 6 8 10
0 10 20 30 40 50 60 70
F[%]
Y= -Ln[Ln{j/(n+1)}]
Pore diameter [µm]
Fine 1373 K Fine 1423 K Fine 1503 K Fine 1573 K Fine 1373 K -HIP Fine 1573 K -HIP
- 104 -
Fig. 7.3 Results of extremal statistics of 4Mo-0.4B compacts and 0.4B compacts.
Fig. 7.4 Results of extremal statistics of α+β region sintered compacts.
99.995
99.966
99.752
98.185
87.342
36.788
0.062
-2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
-2 0 2 4 6 8 10
0 10 20 30 40 50 60 70
F[%]
Y= -Ln[Ln{j/(n+1)}]
Pore diameter [µm]
4Mo-0.4B-8h 4Mo-0.4B-4h 0.4B-HIP 0.4B
4Mo-0.4B-HIP
99.995 99.966 99.752 98.185 87.342 36.788 0.062
-2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
-2 0 2 4 6 8 10
0 10 20 30 40 50 60 70
F[%]
Y= -Ln[Ln{j/(n+1)}]
Pore diameter [µm]
1253 K-24 h 1253 K-24 h-HIP 1253 K-48 h 1253 K-96 h
- 105 -
Fig. 7.5 Results of extremal statistics of the compacts treated HDH.