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実験結果

ドキュメント内 MIM 製 Ti-6Al-4V 合金の疲労強度の向上 (ページ 77-83)

第 5 章 α+β 域焼結による高強度化

5.3 実験結果

5.3.1相対密度

Fig. 5.2に各焼結体の相対密度を示す.1623 Kでの焼結と比較して,1253 Kでの

焼結では緻密化の速度が非常に遅いことがわかる. しかしながら,86.4 ksの焼 結を施すことで 96.3 %の相対密度を示しており,HIP 処理によって気孔を除去 することが可能な密度には達することが分かった.

Fig. 5.2 Relative densities of sintered and HIP treated compacts.

5.3.2光学顕微鏡による組織観察

焼結体およびHIP処理体の組織写真をFig. 5.3に示す.1623 K焼結体が粗大な ラメラ組織を呈している一方で,1253 K焼結体は等軸状かつ微細な組織を示し ている.しかしながら,完全な等軸組織ではなく,一部にラメラ組織も観察さ

れる duplex 組織となっており,焼結時間を延長するとラメラ組織がより明瞭に

観察される.また,焼結時間の延長とともに気孔の数が減じていることと,結 晶粒成長が進んでいることがわかる.HIP処理を施した1253 K-24h-HIPは気孔 が除去されており,ほぼ完全に緻密化できている.

95 96 97 98 99 100

0 100 200 300 400

Relative density [%]

Sintering time [ks]

1253 K 1623 K

1253 K-24h-HIP 1623 K-HIP

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Fig. 5.3 Optical microphotographs of sintered and HIP treated compacts.

5.3.3EBSDによる組織観察

各焼結体の IPF マッピング画像およびマッピング画像から算出した平均結晶

粒径をFig. 5.4に示す.1623 K-4hと比較して,1253 K焼結体は微細な組織を示

しており,平均結晶粒径の値で1/8程度まで微細化している.焼結時間を延長し た焼結体では粒成長が生じており,1253 K-96hよりも1253 K-24h-HIPの方が微 細結晶粒を示していることから,焼結によって真密化を図るよりも,ある程度 の焼結によって相対密度を上げた後,HIP処理を施した方がより微細な結晶粒を 有する焼結体を作製できることが分かった.

5.3.4酸素量

各条件における酸素量の測定結果をFig. 5.5に示す.1253 Kの焼結体はいずれ

も 0.25 mass%の酸素量を示しており,焼結時間を延長したものの酸素量の増加

は見られなかった. また,1253 K-24h-HIPは0.19 %という低い酸素量を示して (a) 1623 K-4h (b) 1253 K-24h (c) 1253 K-48h (d) 1253 K-96h (e) 1253 K

-24h-HIP 50 µm

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いるが,これは HIP により表面層に酸化が見られたため,表面層を機械加工に よって除去した試験片について酸素量測定を行ったためである.

Fig. 5.4 IPF mapping images and mean grain diameters of sintered and HIP treated compacts.

Fig. 5.5 Oxygen contents of sintered and HIP treated compacts.

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35

1623 K-4h 1623 K-HIP

1253 24h 1253 K-24h-HIP

1253 K-48h1253 K-96h

Oxygen content [mass%]

(a) 1623 K-4h 149 µm

(c) 1253 K-48h 23 µm (b) 1253 K-24h

19 µm

(d) 1253 K-96h 25 µm

(e) 1253 K -24h-HIP

20 µm 100 µm

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5.3.5引張強度特性

各条件における引張強度と伸びの関係をFig. 5.6に示す.1253 K-24hは引張強 度と伸びともに低いものの,1253 K-48h, 1253 K-96h,1253 K-24h-HIPは溶製 材規格値を満たす引張強度特性を示した.特に1253 K-96hと1253 K24h-HIPは

伸び18 %以上と延性に優れており,等軸組織が延性の向上に作用したと考えら

れる.

Fig. 5.6 Tensile properties of sintered and HIP treated compacts.

800 850 900 950 1,000

0 5 10 15 20 25

Tensile strength [MPa]

Elongation [%]

1623 K-4h 1253 K-24h 1253 K-24h-HIP 1253 K-48h 1253 K-96h

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5.3.6疲労強度特性

回転曲げ疲労試験の結果をFig. 5.7に示す.1253 K-24hは373 MPaの疲労強度

を示し,1623 K-4hといったβ域焼結体よりも高い疲労強度を示した.更に1253

K-48hと1253 K-96hは480 MPaとこれまで作製した焼結まま材の中で最も高い

疲労強度を示した.HIP処理を施した1253 K-24h-HIPは530 MPaの疲労強度を 示した.これは溶製材の規格値(510 MPa, ASTM Grade5)を超える値である.1253

K-24h-HIPは引張強度,伸び,疲労強度の三者とも溶製材規格値を凌駕しており,

α+β 域焼結と HIP を組み合わせることで十分な機械的特性を有する MIM 製焼 結体を作製することができた.

Fig. 5.7 Results of fatigue test of sintered and HIP treated compacts.

250 300 350 400 450 500 550 600 650 700

1.0E+04 1.0E+05 1.0E+06 1.0E+07 1.0E+08

Stress amplitude[MPa]

Number of cycles

1623 K-4h 1623 K-HIP 1253 K-24h 1253 K-24h-HIP 1253 K-96h 1253 K-48h

- 77 - 5.3.7破面観察

Fig. 5.8に1623 K-4hと1253 K-48hの破面写真を示す.1253 K-48hの破面全体 は,1623 K-4hと比較して粗さが小さく,微細結晶粒を反映している.また,き 裂発生位置近傍には大気孔が観察された.これは,前章で示した 4Mo-0.4B-8h と同様であり,結晶粒径の微細化によって大気孔が疲労破壊の起点となったた めと考えられる.

Fig. 5.8 Fractographies of 1623 K-4h and 1253 K-48h after rotary bending fatigue test.

500 µm

100 µm

(a) (b)

(a) 1623 K-4h, 294 MPa, 6.1×106 cycles

(b) 1253 K-48h 502 MPa, 2.3×106 cycles

25 µm 500 µm

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