第 4 章 :日本語とペルシア語の「手」を含んだ慣用句の対照
4.1.1 日本語の場合
【「手」の基本義】
『日本語国語大辞典(第2版)』(2001)は「手」について次のように語義を示してい る。
1.人体の上肢。躯幹の上部で、肩から左右に分かれ出ている部分。肩の関節部から指
先までの部分。
2.かいな、うでと区別して、てくびから先の部分。その全体だけではなく、指、ての ひらなど部分を漠然とさすこともある。
3.ヒト以外の動物の前肢。前足。また、植物のつるなどをもいう。
また、『日本語大辞典 第二版』(1995)において「手」の定義は以下の通りである。
1.手首から、先の部分。手背(手の甲)、手掌(てのひら)、手指からなる。ものを持 ったり、握ったり動かしたり、作ったりなどする。
2.人体の、肩から先の部分。腕。
3.てのひら。
『大辞林 第三版』(2006)に「手」の基本義は、「人体の肩から先の部分。手首・て のひら・指先などをさすこともある。また、動物の前足をいうこともある」と書いてあ る。
そして、『広辞苑 第六版』(2008)における「手」の基本義の意味分類は次の通りで ある。
人体の左右の肩からでた肢。
1.肩から指先に至る間の総称。2.手首3.手のひら4.手の指
以上の定義から見ると、「手」の基本義はほぼ同じ示しており、「人体の肩から、指に 至るまでの部分」すなわち、具体的な身体部位いを指すものといえる。しかし、その意 味から様々な抽象的な意義が派生し、意味拡張している。以下では、「手」の派生義を 示す。
【「手」の派生義】
まず、『日本語国語大辞典』『日本語大辞典』『広辞苑』『大辞泉』『大辞林』『明鏡国語 辞典』といった辞典を参考した上で、日本語の「手」の派生した主要な諸意味を次のよ うに分類、整理する。
<名>と<接頭>
1.人体の手のように突き出ている。
・器物の左右に分かれた部分。又、器物の取っ手「鍋の~」「急須の~」
・植物の蔓などをからませるための竹や木の棒など「竹をアサガオの~にする」
・几帳などの横木
・ほのお「火の~が上がる」「水の~」
・幕などの乳を通してかけ渡す網「網の手」
・長旗のへりについている、竿さ おにつけるための緒お
・雁かり股またの矢じりの左右に突き出た部分。
2.人体の手のように作業や仕事を行うもの
・労働力。働く人・力。人手「~が足りない」「~に職を持つ」「猫の~も借りたい」
・部下。配下「~の者」
・分担する人・その動作をする人、また特に、そのことに優れた人の意を表す「嫁のも らい~」「語り~」「やり~」「踊り~」「読み~」
・くみ。隊
3.手を動かしてすること。
・所有。所持。持つこと。保持すること。「大金を~にする」「人の~に渡る」
・手で文字を書くこと。筆法。転じて書かれた文字。筆路。書跡「綺麗な~」「人の~
をまねる」「~習い」
・技量。腕前「~が上がる」
・方法。手段。手立て。また策略。相手に勝つわざ「きたない~を使う」「その~に乗 らない」「~の付けようがない」
・仕事やことを処理する能力「~職を持つ」「~に余る」
・手数。手間。世話「~の込んだ作品」「この子は甘えん坊で~がかかる」「~ばかり掛 かる」
・日本音楽で、(節ふしに対して)楽器の演奏。また、その調子や拍子をとる方法。「古い味 線曲に筝の~付ける」「合いの~」「~事」
・関わりあうこと。交際。関係 4.手で指すもの。
・ある方面・方向・方角・側面「山の~」上~」「右~の建物」「行く~をさえぎる」
・ある特定の種類のものやある種類に属する人やもの。また、ある手法・技法によるも の。「その~の話には気を付けろ」「この~の品」「厚~の生地」
・人品。風采 5・自分の手
・手前。自分
・その物事を機械などを用いないで作る・人が自ら手を下してすること。
「~づくり」「~弁当」「~料理」
・その物が、持ち運びや取扱いに容易な小型のものである意を表す。「~斧」「~帳」「~
箱」
6.技芸などの一定の型
・囲碁・将棋・相撲などで、石や駒を打つこと。また、その攻め方・受け方
「~のない将棋は負け将棋」「五~先を読む」「堅い~で攻める」
・舞や踊りの所作「さす~引く~」
・トランプ、花札、勝負事などで、手中にあるもの。手持ちの札・駒など。手の内。
「~を明かす」「相手の~を読む」
7.人が手を使って様々な事をすること。また、人の行為を漠然という
・仕事。作業「裁縫の~を休める」
・他人に関与すること「~出し」
・武器を使って傷つけること。転じて、戦いなどで受けた傷「~争い」「深~」
8.ある方面に配置した軍隊
「寄せ~の軍勢」
9.支配下・監督下(にあるもの)
「犯人の~から人質を救う」「平家の~の者」
10.人との結びつき・つながり
「~を切る」
11.代金・代償「酒~」
12.江戸時代の雑税の一。山手・野手・河手の類。
13.茶器などで、その手法になるもの「三島~の茶碗」
14.武芸などの技。「相撲の四十八~」
15.風采。体裁。
<接尾>
助数詞
1.囲碁や将棋などで石や駒を動かす回数を数えるに用いる。「三~で詰む」「数~先を よむ」
2.矢二筋を一組として数えるのに用いる。「的矢一~」
3.相撲の番数を数えるに用いる。「相撲出でて五~、六~ばかりとりて」「宇津保・俊 陰」
4.舞の数を数えるのに用いる。「一~舞うて東の方の賤しき奴ばらに見せん」「義経記・
八」