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第 5 章 :日本語とペルシア語の「口」を含んだ慣用句の対照

5.3 まとめ

第5章において、日本語の「口」とペルシア語の「ﻥﺎﻫﺩ/dahān/口」の意味拡張と慣用句 の成立について言及した。方法として、まず、「口」と「「ﻥﺎﻫﺩ/dahān/口」の意味を、「基 本義」と「派生義」の2種類に分け、それぞれの例を提示しながら考察した。その結果、

両言語では、「口」の基本義はほとんど同義であり、「人間と動物の顔の下にあるあな状の 部位、発声器官と飲食物を取り入れる部分であり、唇、歯、舌などを備える器官」とな っている。そして身体部位とする基本義から、メタファーやメトニミーによって意味が 拡張されていることが分かった。

「手」の意味拡張と同様に、両言語の「口」の意味拡張を「両言語における共通の意味 拡張」、「日本語特有の意味拡張」及び「ペルシア語特有」に分けることができる。それ ぞれの例は次のようなものである。

両言語における共通の意味拡張

両言語では「言語行為」と「摂食行為」という口の主な機能に注目され、その意味が 隣接性によるメトニミーに基づいて「基本義」から「摂食行為」及び「言語行為」へ拡 張されている。日本語では「口」の意味が「話すこと」、ペルシア語では、「話し方・話 す能力」に拡張されたものが見える。「口で言うほど...」「口が悪い」「ﻦﺘﺷﺍﺩ ﻡﺮﮔ ﻥﺎﻫﺩ/dahān-e

garm dāštan/口が暖かい(話し方が魅力的だ)」がその例となる。

また、両言語の「口を付ける」「ﻥﺩﺯ ﻦﻫﺩ/dahan zadan/口に入れる・口にする」などの例 が、口のもう一つの機能である「摂食行為」による意味拡張である。

両言語では、「口」の形状の類似性にも注目され、メタファーに基づいて、身体部位 である「口」から「通り抜けることができる空間・物を出し入れする所」、「食器や物の 出し入れをする所」という意味へ拡張されたこともある。「瓶の~」「非常~」「 ﮥﻧﺎﻫﺩ یﺮﻄﺑ/dahān-eye botrī/瓶の口」「ﺭﺎﻏ ﮥﻧﺎﻫﺩ/dahān-eye qār/洞窟の口」はその例である。

日本語の特有の意味拡張

日本語では、身体部位「口」からの意味拡張がペルシア語に比べて多い。つまり、日 本語の「口」のいくつかの意味拡張がペルシア語には見当たらない。日本語の「物事の 初め。最初:序の口」「種類の一つ:飲める口」「入っておさまる所:就職口」がペルシ ア語では存在しない「口」の意味拡張の例であり、日本語特有のものであると思われる。

ペルシア語の特有の意味拡張

一方、「口」から「気鳴楽器」「歌」「歌声の助数詞」という意味拡張はペルシア語の

「口」の特有の意味拡張である。

両言語における「口」に関する慣用表現の意味考察の結果

両言語では、「口」自体の「基本義」と「派生義」を提示し、その次に、日本語の「口」

に関する「慣用句」とそれと対応するペルシア語の「口」の慣用表現の意味拡張につい て考察を行った。方法としては、日本語の「口」の慣用表現をその典型的機能に基づき、

「摂食行為」を表すものと「言語行為」を表すもの、そして、その他のこの二つに含ま れないものに分類し、メタファーやメトニミーによる意味拡張の考察を行い、それぞれ の表現に対応するペルシア語の表現を提示し、意味の分析を行った。その結果として、

「摂食行為」を表す日本語の「口」は、「人」や「味覚」に拡張するのに対して、ペル シア語においては、「味覚」のみを表していた。すなわち、ペルシア語では「口」から

「人」へ拡張が存在しない。そして、「言語行為」の場合、日本語では「話す能力/技術」、

「話し方」、「話(の内容)」に拡張され、ペルシア語では、「話す能力/技術」、「話し方」

への意味拡張が発生していた。つまり、ペルシア語では、「口」から「話そのもの」へ の意味拡張がなされていたことが明らかとなった。また、「目」と「手」の慣用表現と

同様に、日本語では、メトニミーによる意味拡張が多くを占めるのに対し、ペルシア語

では「ﻪﻳﺎﻨﮐ/kenāye/メタファー」の方が多く見られた。

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章:日本語とペルシア語の「身」を含んだ慣用句の対照