この章では,数学を身近に感じることができる教材例と教材を使用するときの展 開例として,
r石けん膜の性質」を紹介したもの,
「変化の割合」への理解を深めるもの,
「微分すること」のイメージをつかませるもの,
「スネルの法則」を微分法を用いて証明を紹介するもの
の4例を述べる。これらの教材を通して,生徒が,数学の学習に対し,おもしろ
さや不思議さを感じ,新しい規則性の発見や解析する活動を通して,興味や関心を 持ってくれることを期待したいと考える。3.1 自然事象を数学からの視点でとらえることができる 教材例
L 題名「石けん膜の不思議〜表面張力と最小問題〜」
2.目的 「石けん膜」という生徒にとって身近な事象を取り上げることで,自然 事象を数学的な観点から見つめると何が分かるのか体験し,数学への興味・関 心を持たせる。
3.対象 中学3年生
4.時間 選択数学の時間・全4時問
5.教材について本教材は,「選択数学」の時問を利用して行う。「石けん膜(シャボン玉)」は,
生徒にとって一度は遊んだことのあるものである。今回は,中学2年生の学習 内容を総合的に活用できる内容をして,自然事象の1つである「石けん膜の性 質」を使う。そして,石けん膜の表面張力の性質と3点スタイナー問題と関連 つけて教材化した。
スタイナー問題は最短ネットワーク問題と呼ばれている。その解法は,図形の 合同の性質を用いているものや,三角不等式や微分法などを使っている証明さ
3.数学を身近に感じる教材例
77
れているものなどがある。今回は,まず石けん膜の表面張力を使って視覚的に 3点スタイナー問題をとらえてから,証明や作図を使って中継点を求められる ような流れを考えた。また,実験や観察を通して,生徒が,授業内容により関 心を持ち,活動と理論がつながるような支援をしていきたい。なお,生徒の混 乱をさせるため,今回は,三角形の3内角が120。未満の場合のみ扱う。
生徒は,1年生で「平面図形」「空間図形」の単元で,基本の作図や点と直線 の距離,図形や立体の特徴などを学習している。また2年生では,合同の条件 や三角形や平行四辺形などの平面図形の性質を活用して「証明」を学習し,理 論的に考えるカを養っている。しかし,なかなか目常生活や自然現象と数学の 関わりを実感できる機会は少ない。
ところで,目常生活の中では,「最短距離」「最大の利益」など,最大最小につ いて考える機会が多い。また自然現象でも,蜂の巣のでき方や光の屈折などの ように無駄のない性質や動きがある。生徒にとって気にもとめないごく普通の 性質や動きではあるが,これらの自然事象の性質や動きは,身の回りの道具や 環境,予測や分析など自分たちの生活の中に取り込まれ,活用されている。
この教材から,生徒が身近な事象を数学的にとらえることで,目常の中に隠れ ている数学を発見する楽しさを感じてほしいと思う。
6.教材使用のねらい(付録としてワークシートの例を載せる)
1時間目では,石けん膜という教材を通して,石けん膜の中に隠された数学 に気づき,表面張力を使用した「スタイナー問題」を紹介する。また,生徒に は,平面上の石けん膜の張り方に着目させ,自然事象の規則性への関心を持た
せたい。
2時間目では,実際に
「3点スタイナー問題」
(ただし,三角形の3内角 は1200未満)について証
明をする。
また今回の例では,P Cソフト「シンデレラ」
を使っている。
このソフトは,図形上 の点を自由に動かして,
距離の変化を観察したり,
図形の移動を観察したり など,紙上ではできない 動きをとらえることがで きるソフトである。
ファイル ぽ モ ド おロ フォ マット ヘルツ
」蛍8
蔚ノ・血一助2) ∵)x近 あ一窃』声か
P ㌶
桝 〇
Oh
諏﹄4
弔囎⑱銚︑
鳳慨咳金琴毒
』
昇乏 猶艇
餐
麺×・〆
ロや
1 鴻曾
7.32
P
1民βド1 Lo5 溺
R
︑●
訊8ρ1
σ
艶・二・㌔㍉乃甘桝鼻1#o■晦臼1
マウスをドラッグして自由妻案を勘かす
P Cソフト「シンデレラ」の画面
3.数学を身近に感じる教材例
78
P Cソフトを使えば,図形を動かして生徒が予想を立てたり,証明したことを 確認できたりすることができるので,内容理解に大いに役立っと考えた。
今回は,実際証明をするので,丁寧に取り組みたい。
3時間目では,前時でPの位置を予想したときの証明の考えを利用して実際
の中継点一Pを決定する。次に,作図で点一Pの位置を決定する。証明によって,実際ハR.BP,OPの交角は1200であることを確認され,あらためて石けん膜
の張り方に着目することで,自分たちが数学を使って調べてきたことが確認させたい。
4時間目では,今まで3点の膜の張り方に着目して観察してきたことを,もう
少し拡張する。例えば,4点の場合も,交角が1200を作るのか,立体図形の
枠の膜の張り方を予想して実験して確かめるなどの活動を取り入れる。普段,何気ない自然事象が数学によって解明され,日常生活の中に使われてい ることを知り,数学と自然事象の関連を感じてほしい。
7。授業の展開例
●1時間目 「石けん膜の表面張力を知り,3点スタイナー問題について考え よう」
(i).表面張力の性質を知る。
なぜ,飛んでいるシャボン玉は球なのか,円環内に糸を張り,片方の膜 を壊すと残った方の膜が,さらに小さくなろうとして糸を引っ張る現象 などを見せるとよい。
(ii)。2点間に貼る膜の大小関係は,2点間の距離の大小関係と同値であるこ とを知る。
面積の大小を比べることと,
2点間の距離の大小を比べることは同値
図3.1:右の膜の方が面積は小さい
図3.1のように,2枚のアクリル板の間に2つのボルトで留めたものを用 意し,膜の張り方を観察し,膜の面積の大小関係は,2点間の距離の大
3.数学を身近に感じる教材例
79
小関係に同値であることを確認する。観察が困難な場合は,模造紙や写 真などを用いて説明することも可能。そして,3点スタイナー問題の話 につなげる。
(iii), 3点スタイナー問題を紹介し,膜の交角に着目して張り方を観察する。
ところで,3点スタイナー問題とは,以下のような問題である。
同一直線上にない3都市を結ぶ道路を建設したい。
道路の長さの総和をできるだけ短くするには,
どのような道を建設すればよいか。
ここで,様々な三角形の枠(透明な板2枚の間に3つのボルトが三角形
の頂点になっている)を用意し,実験観察する。ただし,枠の三角形は,内角がすべて120。未満のものにする。(理由は,前章)
(iv).膜は1点で交わり,交角は1200のようであることを確かめる。
なぜ交角が一定なのか,不思議に思う生徒もいると思う。だから,次時 に詳しく調べようと言う意欲を持たせたい。
●2時間目 『3点スタイナー問題を証明しよう」
︵i︶︑
「表面張力の性質」を振り返り,本時の課題を知る。本時の課題とは,以 下のようなものである。
3点からの距離の和が最小になる点Pを見つけよう
(ii).最短距離ついて確認する。
中継点0
/ B
.A,Bは固定点
中継点0,Pは自由に動く
、中継点D
図3.2:。40+OP+一D一θが最短になるときの中継点の位置を見つける 図3.2のように2点・4,Bがある。P Cソフトを使って2つの中継点0,P を動かし,中継点がどんな状態のとき,距離の和が最小になるか調べる。
そして,4点が一直線上に並んだときが最小であることを確認する。
(iii),図3。3を提示して,3点スタイナー問題の証明をしていく。なお,証明の 進み方は,,今回例に出したワークシートっいては穴埋め式をとっている が,生徒の実態に合わせて行う。
3.数学を身近に感じる教材例
80
ハ
2一.......β
史
β 0
図3.3:△EPPと△ABPは正三角形
ムノ招P…△PBEを利用して.AP+BP+OPニ1)E+EP+POであ ることを導く。そして,PE+EP+POが最小になるのは点E,Pがど
んな位置関係のときか考える。
(iv).点E,Pが線分1)o上にあればよいことを押さえる。
●3時間目 「中継点Pの位置を見つけよう』
(i).今度は,図3.4のように考え同様な証明をする。
前時と同様な証明をすればよいので,あえて証明は明記しない。結果,点