Ⅰ 現状 と課題 1 救 急 搬 送 の 状 況
( 1) 救 急 患 者 数
本 県 に お け る 1 日 当 た り の 救急患者1は 、お よ そ 400 人 で あ り 、そ の う ち 100 人 が 入 院 し て い る と 推 定 さ れ ま す2。
( 2) 救 急 出 場 件 数
本 県 の 救 急 出 場 件 数 は 、 平 成 17 年 の 23,478 件 に 対 し 、 平 成 28 年 に は 27,331 件 ( 3,853 件 増 ) で 16.4% 増 と な っ て お り 、 特 に 平 成 22 年 か ら は 急 増 し て い ま す3。
23,478
23,456 24,024
23,689
23,562 25,092
26,357
26,704 26,462
27,034 26,723
27,331
22,000 23,000 24,000 25,000 26,000 27,000 28,000
平成 17年
18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
( 3) 救 急 搬 送 所 要 時 間
本 県 で は 、救 急 要 請 か ら 医 療 機 関 へ の 搬 送 ま で に 要 す る 時 間 が 平 成 28 年 で 31.9 分 で あ り 、全 国 平 均 の 39.3 分 と 比 較 し て 短 く 、搬 送 時 間 の 短 い 順 で 全 国 3 位 と な っ て い ま す4。
1 救急車等によって救急搬送される患者や休日・夜間等の通常の診療時間外に医療機関を受診する患者等を救急患者としています。
2 厚生労働省「患者調査」(平成 26 年)
3 福井県「消防防災年報」(平成 28 年)
4 消防庁「救急・救助の現況調べ」(平成 29 年)
福井県「平成 28 年度版 消防防災年報」
県内救急出場件数の推移
(件)
第 5 部 5 疾病・5 事業、在宅医療の医療提供体制の構築(5 事業 第 3 章 救急医療)
平成21年 22年 23年 24年 25年 26年 27年 28年
福井県 28.9 29.9 30.3 30.1 30.5 31.3 31.6 31.9 全国 36.1 37.4 38.1 38.7 39.3 39.4 39.4 39.3 全国順位 6位 5位 3位 3 位 3 位 3 位 3 位 3 位
( 4) ド ク タ ー ヘ リ の 導 入 状 況
ドクターヘリは 43 道府県に 51 機(平成 29 年 12 月現在)が導入されてい ますが、本県では未導入となっています。本県の救急搬送時間は全国 3 位の 早さですが、救急出 動 件 数 の 増 加 へ の 対 応 や 災 害 時 の 活 用 な ど か ら 、ド ク タ ー ヘ リ の 導 入 が 課 題 と な っ て い ま す 。
( 5) 救 急 搬 送 で の 転 送
他府県では、転送回数が多かった事例も報告されていますが、本県では、
平 成 27 年 に は 、重傷以上の救急搬送者の 93.6%が初回に救急車が搬送した 医療機関に収容されており、医療機関で患者の収容が困難であるために、転 送回数が 4 回以上となった事例は全体の 0.4%に留まります5。
( 6) 救 急 搬 送 体 制
本 県 で は 、病 院 到 着 ま で に 薬 剤 投 与 な ど の 特 定 行 為 を 行 い 、病 院 前 救 護 で 重 要 な 役 割 を 担 う 救 急 救 命 士 が 着 実 に 増 加 し て い ま す 。
( 7) 高 齢 患 者 の 増 加
本 県 の 救 急 搬 送 さ れ た 高 齢 者 は 、 平 成 27 年 に は 、 16,969 人
( 62.1% )を 数 え 、増 加 傾 向 に あ り ま す 。今 後 も 、高 齢 化 の 進 展 と と も に 救 急 搬 送 件 数 は 増 大 し 、救 急 搬 送 に 占 め る 高 齢 者 の 割 合 も 増 加 す る も の と 推 測 さ れ ま す 。
5 消防庁「平成 27 年中の救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査の結果(平成 27 年)
21 年 23 年 25 年 27 年 29 年 救 急 隊 員 (人 )
567 529 528 527 559
う ち 救 急 救 命 士
(人 )
172 183 192 193 228
人 口 10 万 人 対
21.5 23.0 24.2 24.4 29.2
福井県「平成 29 年 消防防災年報」
救急搬送の平均時間(覚知から医療機関への収容までの時間) (単位 分)
消防庁「救急・救助の現況調べ」(平成 28 年)
第 5 部 5 疾病・5 事業、在宅医療の医療提供体制の構築(5 事業 第 3 章 救急医療)
( 8) 疾 病 構 造 の 変 化
本 県 の 事 故 種 別 救 急 搬 送 人 員 は 、 平 成 23 年 に は 急 病6の 患 者 が 15,553 人 ( 59.0% ) で あ る の に 対 し 、 平 成 28 年 に は
16,270 人 ( 59.5% )、 に 達 し 、 こ の 5 年 間 で 急 病 に よ る 救 急 搬 送 人 員 が 717 人 増 加 し て い ま す 。今 後 も 急 病 の 対 応 が 増 加 す る も の と 推 測 さ れ ま す 。
( 9) 重 症 患 者 の 動 向
全 国 の 平 成 27 年 に お け る 全 救 急 搬 送 人 員 の う ち 、「 死 亡 」ま た は「 重 症 」( 33.8 万 人 ) と 分 類 さ れ た も の を み る と 、「 脳 疾 患 」 (6.9 万 人 、 20.6% )、「 心 疾 患 系 」 (8.2 万 人 、 24.7% )と な っ て い ま す 。 ま た 、 急 病 の う ち 死 亡 が 最 も 多 い の は 、「 心 疾 患 等 」 と な っ て い ま す 。
し た が っ て 、重 症 患 者 の 救 命 救 急 医 療 体 制 を 構 築 す る に 当 た っ て は 、 重 症 外 傷 等 の 外 因 性 疾 患 へ の 対 応 に 加 え て 、脳 卒 中 、急 性 心 筋 梗 塞 等 の 生 活 習 慣 病 に 起 因 す る 急 病 へ の 対 応 が 重 要 で す 。
( 10) 軽 症 患 者 の 動 向
救 急 車 で 搬 送 さ れ る 患 者 の う ち 、診 療 の 結 果 、帰 宅 可 能 な 軽 症 者 は 、 消 防 庁 の 調 査 に よ る と 全 国 的 に は 50% 程 度 を 占 め て い ま す 。こ の 中 の 一 部 に は 不 要 不 急 に も 関 わ ら ず 安 易 に 救 急 車 を 利 用 し て い る 例 も 散 見 さ れ ま す 。
救 急 車 の 不 要 不 急 の 利 用 は 、救 急 搬 送 を 実 施 す る 消 防 機 関 や 救 急 医 療 機 関 に 過 重 な 負 担 を か け 、重 症 救 急 患 者 へ の 対 応 に 支 障 を き た す こ と が 問 題 と な っ て お り 、救 急 医 療 の 適 切 な 利 用 に 対 す る 自 覚 と 理 解 が 必 要 で す 。
本 県 で は 、 平 成 27 年 の 人 口 1 万 人 当 た り の 救 急 出 場 件 数 が 362.4 件 と 、全 国 で 最 も 少 な く な っ て お り 、全 国 と 比 較 す る と 、救 急 車 は 適 正 に 利 用 さ れ て い る と 考 え ら れ ま す 。
2 医 療 提 供 体 制
( 1) 病 院 前 救 護 活 動
① 自動体外式除細動器(AED)の設置と救急蘇生法の普及
A E D に つ い て は 、 平 成
16
年 か ら 一 般 住 民 の 使 用 が 可 能 と な り 、 学 校 、 ス ポ ー ツ 施 設 、 文 化 施 設 等 多 数 の 住 民 が 利 用 す る 施 設 を 中 心 に 設 置 さ れ て い ま す 。県 で は 、 福 井 県 A E D 普 及 啓 発 協 議 会 に お い て A E D の 使 用 等 を 含 め た 救 急 蘇 生 法 講 習 会 を 開 催 し て お り 、 消 防 機 関 や 日 本 赤 十 字 社 に お い て も 開 催 さ れ て い ま す 。
6 消防庁「救急・救助の現況調べ」では、事故の種別として、火災、水難、交通、労働災害、一般負傷、加害、自損行為、急病、転院 搬送、医師搬送、資器材等搬送およびその他に区分しています。
第 5 部 5 疾病・5 事業、在宅医療の医療提供体制の構築(5 事業 第 3 章 救急医療)
② 消防機関による救急搬送と救急救命士等
救急隊は、一定の応急処置に関する教育を受けた3名以上の救急隊員に より構成されています。平成3年からは、救急救命士制度の発足により、1 隊につき1名以上の救急救命士が配置されることを目標に救急隊の質の向 上が図られています。
救急救命士については、メディカルコントロール体制7の整備を条件とし て、徐々に業務範囲が拡大され、平成18年4月からは心肺機能停止患者に 対する薬剤投与が可能となりました。
心肺機能停止患者への対応については、救急救命士を含む救急隊員(以 下「救急救命士等」という。)の標準的な活動内容を定めたプロトコール
(活動基準)が策定されています。これによって、救急救命士等が心肺機 能停止患者に対してより適切に観察、判断、処置を行えるようになり、救 急救命士等の質が向上し、業務が標準化されました。
これらプロトコールの作成、薬剤投与等を行う救急救命士への指示・助 言および救急救命士の行った活動の事後検証等を行うメディカルコント ロール体制については、本 県 で は 、 二 次 医療圏ご と に 医 師 会 、 救 急 医 療 機 関 、消 防 機 関 を 構 成 員 と し て メ デ ィ カ ル コ ン ト ロ ー ル 協 議 会 を 設 け 、医 師 の 応 急 処 置 等 の 指 示・指 導 に よ り 救 急 救 命 士 等 が 実 施 し た 処 置 結 果 の 事 後 検 証 等 を 行 っ て い ま す 。
今 後 は 、メ デ ィ カ ル コ ン ト ロ ー ル 協 議 会 に お い て 、心 肺 停 止 状 態 以 外 の 患 者 に 関 す る プ ロ ト コ ー ル の 策 定 に つ い て も 、検 討 し て い く こ と が 必 要 で す 。
③ 傷病者の搬送及び傷病者の受入れの実施に関する基準(実施基準)の 策定と実施
平成18年から平成
20年 に か け て 、 搬 送 先 の 病 院 を 探 し て 複 数 の 救
急 医 療 機 関 に 電 話 等 で 問 い 合 わ せ て も 受 入 医 療 機 関 が 決 ま ら な い 、 い わ ゆ る 受 入 医 療 機 関 の 選 定 困 難 事 案 が 他 府 県 で 発 生 し ま し た 。こ7 病院前救護における「メディカルコントロール」とは、救急現場から救急医療機関に搬送されるまでの間、救急救命士の活動等につ いて医師が指示、指導・助言および検証することにより、病院前救護の質を保障することを意味するものです。
福井県地域医療課調
135 136
796
1021
389
525
0 200 400 600 800 1000 1200
平成24年9月 平成29年10月
(設置数)
AED設置状況
県有施設 市町有施設 その他
第 5 部 5 疾病・5 事業、在宅医療の医療提供体制の構築(5 事業 第 3 章 救急医療)
の こ と を 契 機 と し て 、 平 成
21年 5月 に 消 防 法 ( 昭 和 23年 法 律 第 186
号 )が 改 正 さ れ 、都 道 府 県 に 、傷 病 者 の 搬 送 お よ び 傷 病 者 の 受 入 れ の 実 施 に 関 す る 基 準 ( 以 下 「 実 施 基 準 」 と い う 。) の 策 定 が 義 務 付 け ら れ ま し た 。こ れ を 受 け 、 本 県 で は 平 成
22年 11月 に 実 施 基 準 を 策 定 し ま し た 。
今 後 は 、実 施 基 準 に 基 づ く 傷 病 者 の 搬 送 お よ び 受 入 の 実 施 状 況 の 調 査・検 証 を 行 い 、実 施 基 準 の 見 直 し 等 を 行 う こ と な ど に よ り 、傷 病 者 の 状 況 に 応 じ た 適 切 な 搬 送 お よ び 受 入 体 制 を 構 築 す る こ と が 必 要 と さ れ ま す 。④ 広域災害・救急医療情報システムの運営
本 県 で は 、「 福井県広 域 災 害・救 急 医 療 情 報 シ ス テ ム 」に よ り 、災 害 拠 点 病 院 や 救 急 医 療 機 関 が 、災 害 時 は も と よ り 平 常 時 に お い て も 、 パ ソ コ ン か ら イ ン タ ー ネ ッ ト を 介 し て 、 救 急 ・ 災 害 医 療 情 報 を 入 力・照 会 し 、消 防 機 関 と の 間 で 患 者 の 受 入 れ に 関 す る 空 床 情 報 等 の 情 報 交 換 を 行 っ て い ま す 。
ま た 、県 民 に 対 し て 休 日 に お け る 当 番 医 情 報 等 の 医 療 関 係 情 報 を 提 供 し て い ま す 。
さ ら に 、災 害 発 生 時 に は 、イ ン タ ー ネ ッ ト メ ー ル や F A X を 利 用 し た 一 斉 通 報 も 可 能 で あ る な ど 、迅 速 な 情 報 共 有 化 が 可 能 と な っ て い ま す 。
( 2) 救 命 ( 三 次 ) 救 急
三 次 救 急 医 療 は 、二 次 救 急 医 療 機 関 で は 対 応 で き な い 複 数 の 診 療 科 領 域 に わ た る 重 篤 な 救 急 患 者 等 に 対 し て 、高 度 で 総 合 的 な 医 療 を 提 供 す る も の で あ り 、 県 立 病 院 の 救 命 救 急 セ ン タ ー が 年 間 を 通 し て 24 時 間 体 制 で 対 応 し て い ま す 。
ま た 、公 立 小 浜 病 院 の 新 型( ミ ニ )救 命 救 急 セ ン タ ー8も 嶺 南 地 域 を 中 心 と す る 重 篤 な 救 急 患 者 に 24 時 間 体 制 で 対 応 し て い ま す 。
( 3) 入 院 ( 二 次 ) 救 急
二 次 救 急 医 療 は 、入 院 治 療 を 必 要 と す る 重 症 な 救 急 患 者 に 対 す る 医 療 で あ り 、 54 の 救 急 医 療 機 関 ( 病 院 39、 診 療 所 15) に お い て 、 救 急 車 に よ る 救 急 患 者 の 受 入 が 実 施 さ れ て い ま す 。( 平 成 30 年 1 月 現 在 )
本 県 の 救 急 医 療 機 関 は 、 減 少 傾 向 に あ り ま す が 、 人 口 10 万 人 当 た り で は 、 平 成 29 年 4 月 現 在 で 6.9 あ り 、 全 国 と 比 べ る と 上 位 に あ り ま す 。
救 急 医 療 機 関 に よ る 診 療 体 制 を 補 完 す る た め 、嶺 北 地 区 7 病 院 、嶺
8 従来からある救命救急センターは、20 床以上の専用病床を有しますが、新型(ミニ)救命救急センターは、20 床未満の専用病床であ っても、厚生労働省が平成 15 年度から新たに設置を認めるようになったものです。