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麟〕

第1節 授業設計の考え方

授業モデル開発にあたって、基本的学習過程の設計と知識の分類や問いと習得され る知識の関係については、岩田一彦氏の考えをもとにする。

1概念探究過程の設計

 岩田一彦氏は、科学的社会認識を育成する基本である概念探究過程について、次 のように述べている。1

説明力の大きい概念や、法 貝腱を、子どもが探究してい く過程として構成される。(中 略:引用者)社:会事象に関する 多様な情報を獲得して、その 中で、結果として存在してい る事象に対して『なぜ』とい う問いを発して、『原因』を探 究していくのが、『わかる』学 習過程の基本形である。

具体的な概念探究過程 の基本的学習過程を(図 W』1−1)に示す。

1

情報収集

H

情報の分類・比較

学習問題の発見・把握(なぜ疑問の発見・把握)

w

予想の提示(情報間の関係の直観的結合)

V

仮説の設定(情報問の関係の分析的結合)

w

仮説の根拠となる資料の収集(情報間の関係考察)

検証(情報間の関係の証明あるいは否定)

まとめ、応用、新しい問いの発見

(図W−1−1)概念探究過程の基本的学習過程

〔岩田一彦『小鱒磯業讐繋も猫成〕

第IV章第1節

授業開発にあたっては、この流れで単元を構成することが基本となる。

 また、「、思考・判断」の育成という観点から、「カリキュラムの中で、帰納的探究 過程、演繹的探究過程、発見的探究過程を計画的に配置すれ1ま、思考能力が高まる2」

と述べ、推理形式を意識した授業構成をしていくことの必要性を強調している。

 さらに実際の授業モデル開発では、佐伯絆氏の「包囲型の視点移動と湧き出し型 の視点移動3」論を参考にする。具体的には、各時間の概念探究過程で包囲型の視 点移動を、まとめの段階で「お金の流れ」に焦点をあてた湧き出し型の視点移動を 学習活動として組みこむ。このような視点移動を意図的に組みこむことで、社会を 見る視点が明確になり、社会事象は統合的に認識される。

2 知識と問いの構造

 前述した概念探究過程が効果的に展開され、教育目標を達成するためには、単元 の学習内容が、構造化された知識として提示される必要がある。このことについて 岩田一彦氏は、次のように述べている。4

 社会科の内容は、社会諸科学の蓄積してきた研究成果から構成される。(中略:引用者)

理論4 単死の学習内容が、構造化された知識として提示されれば、学習内容の定着性・応用度 が高まる。

 さらに、岩田氏は、「単元の知識の構造を、より説明可能なものにするためには、

知識分類が必要である5」と述べ、知識分類の必要性を説いている。それでは、知 識分類とはどのようなものだろうか。岩田氏は、知識を大きく事実関係的知識と価 値関係的知識に分類した上で、r社会科で育成していく知識の中心は、当然『事実関 係的知識』である6」と述べ、事実関係的知識を、概念的知識、説明的知識、分析 的知識、記述的知識に分類している。事実関係的知識間の関係構造図を次ぺ一ジ(図

IV−1−2)に示す。

 1で述べた概念探究過程を経れば、その単元で習得させたい法則性である概念的 知識を獲得することができる。しかし、概念を獲得するだけでは、般化・転移する 知識にならない。たとえば西林克彦氏は、知識を「法則的知識(L)」、「接続用知識

(1)」、r個別的なことがら(E)」に分類した上で、個別的なことがらを理解した

授業設計の考え方

A

       ︑︑ ノ       噛D       嚇 ﹃陰:唇h︑りや   9:露臼・隻  躍  曾  ﹂﹁︑二      ︸ミみ

皿 ︑⁝璽

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A概念的知識

B説明的知識

C分析的知識

D

その単元で習得させたい法貝1瓶 原因と結果の関孫が明示され、個別 事象を越えた法則性を示す知識,

特定の具体的社会事象を、因果関係 的に説明した知識、

社会の中に見られる諸関係を述べた

社会に存在する諸事象を記述する知

(図W−1−2)事実関係的知識問の関係

(岩田一彦『地理教科書を活用したわかる授業の創造』明治図書、1984、pp.11・17    『社:会科固有の授業理論30の提言』明治図書、2001、pp.45・47をもとに作成)

ている7。

 本研究では、岩井克人氏の経済認職のモデルを明示した(第H章第2簾)。この モデルは、経済学の命題間の構造として設定されている。それぞれの命題は、単な

る社会的事象の法貝1牲や個別的な事象の記述ではなく、個別的事象の理解を助け、

法則を応用するのに使われる知識である。したがって、この命題を西林氏のいう「接 続用知識」とみなし、概念的・説明的知識と分析的・記述的知識の中間に位置づけ

る。

 生徒が獲得する理論に着目し、理論を解釈して学ぶ場として授業を設計した先行 研究に児玉康弘氏の一連の研究8がある。しかしこれらの研究は、児玉氏自らが述 べているとおり、「生徒が多様な歴史解釈を社会に対する見方・考え方=自らの,思考 の道具として学ぶ」9ことにとどまっている。これに対して、原田智仁氏は、「生徒 に敢えて異なる解釈をぶつけるよりも、それぞれの理論を導き出す際の解釈者の視 点に着目させることの方が重要ではないか」10と指摘している。

本研究は、経済学の視点と理論にもとづき、r経済を通して社会がわかる」授業モ デルの開発を目的とする。したがって、理論の事象に対して投げかける質問を引き 出し、「発見促進能力」を有する11という特質に着目する。接続用知識を説明的知 識と分析的、記述的知識の中間に位置づけるのは、このような理由による。

 それでは、このように構造化された知識は、授業過程の中でどのように獲得され るのカ㌔岩田氏は、「構造化された知識が問いの過程に転換できれば、桂会科授業過

第IV章第1節

程の設計ができる12」と述べ、知識の構造を問いの構造に転換することを主張して いる。岩田一彦氏によるr問いと習得される知識の関係」を(図IV−1・3)に示すム

習得される知識

①概念的知識    ①情報間の関係を求める問い(D)

  説明的知識        W畑

②分析的知識    ①と③の中間に位置する問い(H)

       How

      ③情報を求める問い⑫)

③記述的知識

       When、Whe e、Who、What       (図IV・1・3)問いと習得される知識の関係

岩田一彦『社会科授業研究の理論』明治図書、1994、p.128より筆者作成)

本研究ではこの岩田氏の見解に基づいた授業モデルの開発を行う。すなわち、次 節2 知識の構造で知識の構造を明示し、3 問いの構造で知識の構造を間いの構 造に転換する。そして、これをもとに、4で授業モデルの開発を行う。

《第IV章第1節の註・引用文献》

1岩田一彦『社会科固有の授業理論 30の提言』明治図書、2001、p.31 2伽砿、P.54

3佐伯腓『イメージ化による知識と学習』東洋館出版社、197&包囲型の視点移動とは認識対象を含む超 平面の上での、仮想座標軸によって、この座標軸上ではどこに位置づくか、あの座標軸上ではどうかと 順次確かめていくのが、「対象のまわりに小びとを走らせ、包囲する」認識活動である。しかしこれは、

認識対象の「ありのまま」をみろといっても、木を見て森を見ざる結果となるおそれがある。そのため、

学習者自身が対象そのものに入り込み、何が偶発的で何が本質的(必然的)かを体感する湧き出し型の  視蔦移動が必要となる。

4岩田一彦、前掲書、2001、p。40 5 ㎜.、P.45

6岩田一彦『地理教科書を活用したわかる授業の倉1刺明治図書、1984、p.18 7西林克彦『間違いだらけの学習論一一なぜ勉強が身にっかないか一』新曜社、1994

8児玉康弘「中等歴史教育における『解釈批判学習』の意義と課題一社会科教育としての歴史教育の視点  から一」全国社会科教育学会『仕会科研究1第55巻、2001、pp.11・20、「歴史教育における批判的思考

力の育成一『スペイン内戦とフランコ体制』の解釈批判学習」広島大学附属中・高等学校『研究糸劇 第47号、2000、pp.1・16、r中等歴史教育における解釈批判学習一『イギリス近現代史』を事例として一」

 日本カリキュラム学会『カリキュラム研究』第8号、1999、pp.131・144、など。

9児ヨ隷弓ム、肖鵬、2001、p.19

10原田智仁『世界史教育内容開発研究一理論批判学習一』風間書房、2000、p,496

11第1章第1節註3参照

12岩田一彦、前掲書、2001、p.49