3 高齢者の基盤化スタイル
3.3 発展分析
3.3.3 承認の内訳
最後に、ack の内訳について見てみよう。まず ack init の典型例を抜粋 3.2 に示す。
これは若年成人からの対話例である。360ms 等の数字は休止のミリ秒数を表している。
対象データからの抜粋 3.2
基盤アクト UU# 発話
init37 74.1 B : んなんかおばあさんの話なんか cont37(74.1) 74.2 おもしろかったんななん
ack37 init38 75.1 A : なん変わったおばあさんやったん(360ms)
ack38 init39 76.1 B : いやお(440ms)
cont39(76.1) 76.2 変わってはないけどぉ
A は UU75.1 において、すぐ前の B の UU 中の「おもしろかった」を「変わった」
18 複 ack 型はさらに細かく、同一話者による複 ack、異なる話者による複 ack などが区別されるが、
本章の研究ではそこまでの区別をしていない。
と言い換えることで DU37 を基盤化している(ack37)。それと同時に「やったん?」
と質問を投げかけることで、新しい DU を始めている(init38)。続けて、B も UU76.1 で「いやお(=そうではない)」と発話することですぐ前の発話を理解したというシグ ナルを発するが(ack38)、それは同時に「そうではない」という新しい会話的内容と もなっている(init39)。
ack(ack init 以外)を詳しく見ると、「うん(ん)」「はい(は)」やうなずきなどが、
各々の対話の中に 25-70%程度見られた。抜粋 3.3 がその例である。これは高齢者対 話からとっている。
対象データからの抜粋 3.3
基盤アクト UU# 発話
init12 21.1 A : ほいてわて(680ms)
cont12(21.1) 21.2 今朝 ack12 22.1 B : ん
init13 23.1 A : ほんならおめさに ack13 24.1 B : ん
init14 25.1 A : でぇ[ぷ]って書いて ack14 26.1 B : [ん]
ack14 26.2 ん
UU22.1、UU24.1、UU26.1、UU26.2 の B の ack は「ん」であり、これはこの文 脈でしか用いられないというわけではない。文脈によらずさまざまな場面で使用可能 であると考えられる。このような ack を汎用 ack と名付け、分類した。ただし、同じ
「ん」でも、強めて言うなど通常とは異なるアクセントの置かれていたものはこの分 類に含めなかった。うなずきについては、複数回うなずいたもの、通常より深くうな ずいたものはこの分類から除外した。
抜粋 3.4 は、ある場面でしか用いられないと考えられる ack の例である。対話は高 齢者対話である。
対象データからの抜粋 3.4
基盤アクト UU# 発話
init23 45.1 A : 途中でやめたらあきませんわ ack23 46.1 B : ねぇ[ぇぇ]
ack23 47.1 A : [あかん]ね
UU46.1 は「ねぇぇぇ」と通常とは異なり、長く引っ張るように言われた。UU47.1 は、UU45.1 の一部を使用した繰り返し発話となっている。このような発話は文脈依 存性が高いと考えられる。このような ack を個別 ack 名付け、分類した。
表 3.10 は、ack を汎用 ack、個別 ack、ack init の 3 タイプに分けて検定した結果 である。なお汎用 ack と個別 ack は、ack init とは異なり、対話調整機能が1つなの
で、ack init と区別するときに、まとめて専用 ack と呼ぶことがある。
表 3.10 ack init/個別 ack/汎用 ack の違いによる ack 数のχ2検定の結果 χ2(2)=90.106, p=2.715E-20
ack のタイプ OR (残差) YR (残差) 合計 ack init 38 (-8.33)** 126 (8.33)** 164 個別 ack 228 (-1.66)† 226 (1.66)† 454 汎用 ack 361 (7.40)** 198 (-7.40)** 559
合計 627 550 1,177
χ2(2)=38.931, p=3.518E-09
ack のタイプ OU (残差) YR (残差) 合計 ack init 33 (-4.49)** 126 (4.49)** 159 個別 ack 103 (-2.35)† 226 (2.35)† 329 汎用 ack 176 (5.81)** 198 (-5.81)** 374
合計 312 550 862
χ2(2)=6.333, p=0.0422
ack のタイプ OR (残差) OU (残差) 合計 ack init 38 (-2.47)† 33 (2.47)† 71 個別 ack 228 (1.01) 103 (-1.01) 331 汎用 ack 361 (0.34) 176 (-0.34) 537
合計 627 312 939
〔OR と YR〕〔OU と YR〕〔OR と OU〕のどれも有意に差があったが、残差分析結 果を見てみると、高齢者は地域によらずグループとして若年成人に比べ、汎用 ack の 割合が高く、ack init の割合が低かった。次のグラフは3タイプの ack 数の割合を年 齢別に示したものである(図 3.1)。
図 3.1 年齢別の3タイプの ack の割合 57.2%
36.0%
35.3%
41.1%
22.9%
7.6%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
高齢者 若年成人
ack init
個別ack
汎用ack