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復調前帯域分割型最大比合成ダイバーシチ

第 8 章 地上デジタル放送の移動体受信における電波信号処理型最大比合成

8.3 復調前帯域分割型最大比合成ダイバーシチ

域)に分ける.グループ内のデータ数Q は6400/Mである.周波数選択性のため合成重み は周波数特性をもつが,各グループでは周波数特性のない重みw(m)m =1,2,...,M)とす る.このようなグルーピングを行うと各グループは6400/M個のFFT出力(メンバ)をも つことになる.最大比合成であるので,グループmの重みの決定は,アンテナ間の信号の 相関行列R(m)の最大固有値λmax(m)に属する固有ベクトルemax(m)を用いることができる.

このとき,相関行列の各要素を得る平均操作はグループ内のメンバの平均を使うことがで きる(後述の式(8.3)).このようにすると,OFDMの1シンボルの情報に対して全合成重 みが決定できるので,通常のスキャッタードパイロット信号を用いて合成する方法(複数 シンボルの情報を用いて重み決定をする方法)より,原理的な意味で高速な追従が可能に なる.

図8.6は,この手順を図式化したもので,図8.7は,その手順中のグループ化とグループ 単位での処理の部分を表している.以下,この部分の演算を数式で説明する.図8.6で太字 斜線で表したFFT後の信号成分データをx(1)~x(QM)とする.Mは帯域分割数,Qはサブ 帯域内のデータ数である.ここでベクトル

x

はアンテナ素子(素子数N)のFFT後の信号 領域の成分(図8.6の斜線を施した部分)を要素として

[

x k x k xN k

]

T

k) ( ) ( ) ( )

( = 1 2 K

x …(8.1)

で表される.ここで,上添字Tは転置を表す.ブロックmの相関行列

R (m )

…(8.2)

(m=1,2,…,M)

となる.ここで,上添字Hは複素共役転置を表す.この相関行列の最大固有値をλmax(m) その固有ベクトルをemax(m)とすると,合成重みw(m)は

) ( )) ( / ) ( ( )

(m e1 m e1 m emax m

w = …(8.3)

となる.ここで,e1は固有ベクトルの第 1 番目の要素である.相関行列から固有値解析に よって重みを求めるとグループ間での位相不確定性(あるいは位相不連続性)が生じてし まう.この位相不確定性を避けるために,アンテナ重みベクトルの基準アンテナ(ここで は,アンテナ1を指定)での重みが常に実数になるよう位相調整を行う.式(8.3)右辺の ベクトルにかかる係数はこの位相調整を行うものである.合成信号yは

{ } { }

=

+

− +

=

Q

i

H

m Q i

i Q Q m

m

1

) 1 ( )

1 1 (

)

( x x

R

{ m Q q } w m x { m Q q }

y ( − 1 ) + =

H

( ) ( − 1 ) +

…(8.4)

(q=1,2,…,Q)

となる.帯域外の周波数成分についてはすべての値を0とおき,このブロックデータをIFFT することにより,最大比合成されたベースバンド信号が得られる.この処理を切り出した OFDMシンボルごとに行う.

以下に述べる合成信号の品質評価では,実放送波信号を用いて,チューナに具備されて いる復調後のCNRで評価する.このため,このあと,このベースバンド信号をパソコン内 でLow IF信号に変換し,これをDA変換でアナログ信号に戻し,更にアップコンバータを 介しテレビチューナで受信可能なRF帯信号に戻す.

図8.6:帯域分割型最大比合成ダイバーシチの信号処理

図8.7:帯域内信号のグルーピングとMRCの重み決定

8.3.2 電波信号処理による最大比合成ダイバーシチ

ここでは,Low IF信号としてADCを介して取り込んだ実数領域信号の信号処理を述べ る.信号処理の流れを図8.8に示す.前節のベースバンド信号処理と共通する部分が多いが,

ここではその違いがある部分について詳しく述べる.

GI の周期性を利用するシンボルの切出しは,この処理を IF 帯で行うことを除いてベー スバンドで行ったことと原理は同じである.ブロック化された信号(実数信号)をIFFT処 理すると図8.8のような正負の周波数領域に,複素数で表される信号が得られる.以下の処 理では,このうちの正側の帯域信号S+(f)のみを用いる.帯域分割のグルーピングと重みの 決定方法は基本的に同じである.違いは,S+(f)信号に対して求めた重みw+(m)を用いて 合成した信号の複素共役信号を図8.8で示しているように周波数を正負反転して,負側の信 号周波数帯にコピーする操作である.信号が存在しない周波数領域の成分をすべて 0 とし

て,周波数領域での1シンボル分のブロックデータを作成する.このブロックデータのIFFT 処理を行うと,得られる信号は,入力信号と同じLow IF信号,すなわち,実数領域の信号 になる.なお,コピーする代わりに負の周波数成分を0とおき,このブロックデータのIFFT 処理を行い,その実数成分を使用することでも,目的とする信号が得られる.この説明か ら分かるように,入出力信号形式が複素数信号であるか,実数信号であるかを除き,信号 処理そのものはベースバンド信号処理も電波信号処理も,本質的に同じである.

本論文では,受信信号の特性を評価するのに,ベースバンドの信号処理の節で述べたと おり,市販チューナによる復調とCNR表示を利用するため,この信号を高周波信号にアッ プコンバートしてテレビチューナに入力する.Low IF段階で取り入れた信号の最大比合成 処理を,ベースバンドへ変換して行うという手間を省いたことが特徴になる.

図8.8:電波信号処理による帯域分割型最大比合成ダイバーシチの信号処理