第 7 章 トータルレコーディング技術に基づく地上デジタル放送マルチパス波
7.4 測定結果
7.4 測定結果
ラムのピーク(A)は直接波である.反時計回り方向に7.9[°]の角度を観測しているが,こ れは7.3.2節で述べたアンテナアレーを目視にて直接波の波面とおおよそ平行になるように 設置したことに起因する.アレー列に垂直な直線と受信点から実際の送信点方向を結ぶ直 線との角度差を求めたところ,約8[°]であることが確認されており,誤差は1[°]以内である.
また,-34.5[°]及び5.7[°](それぞれピーク(B)(C)とする)の到来角度のスペクトラム が本論文で提唱する手法により推定されたマルチパス波である.今回設置したアンテナア レーは 1 アレーのみであるため,鏡像成分の出現に留意する必要があり,このスペクトラ ムを発生させ得る到来波は,送信点~受信点を結ぶ直線を基準に,反時計回り方向に-
145.5[°]及び 174.3[°](それぞれピーク(B)(C)に対応)方向である.受信アンテナ(八 木宇田アンテナ)を回転させ,波数並びに到来方向を確認したところ,直接波である 0[°]
の他に,おおよそ+170[°](図7ではAから+10[°]に現れる:ピークC付近)及び+210[°]
(Aから-30[°]に現れる:ピークB付近)の2波であることが分かっており,図7の結果 が妥当なものであることが確認された.尚,B・Cに関しては,角度的に広がりのある構築 物が視認され,複数のマルチパス波がクラスター状に到来してきている可能性があるが,
本測定ではこの確認まではできていない.
7.4.2 遅延時間
遅延時間推定に関する空間スペクトラムを図7.7に示す.同図より,最も強いピーク(ピ ーク(a))が-0.186[µs],これとは別のピーク(ピーク(b)(c))がそれぞれ 0.290[µs]
並びに1.39[µs]と観測された.また,直接波のスペクトラムとマルチパス波のスペクトラム の計 3 本のピークが見られることから,測定された受信波の本数に関して,前節の到来方 向推定の結果と相違ないことが確認できた.
ピーク(a)は直接波のスペクトラムである.時間軸上負の領域上に存在しているように 見えるが,これは,参照信号受信用アンテナと被測定信号受信用アンテナとの間に距離差 とケーブル長差があったためである.
本手法の精度であるが,パソコン内部にて遅延波を作成した場合の評価では,高精度(差 が検知できない)で一致している[40].また,基準信号受信アンテナ~被測定信号受信アン テナ間についての自由空間における距離差(到来波方向成分)が8[m]であること,同じく 同軸ケーブル(波長短縮率:0.8)の距離差 47[m]について自由空間での等価的な距離を求 めると58.75[m]であり,これらの差(58.75-8=50.75[m])より-0.169[µs]の遅延となる.
これは実際の遅延時間-0.186[µs]と20[ns]以内の精度で一致する.ピーク(b)(c)はマル チパス波のものである.上述のケーブル経路差を考慮した直接波とマルチパス波との実際 の遅延時間差は,それぞれ0.476[µs] 及び1.57[µs]である.これより,遅延距離は143[m]
並びに471[m]と導出された.
図7.7:実測遅延特性
7.4.3 反射源の特定
本論文にて提唱する手法においては,実際の放送波をサンプル信号として使用している こと,到来方向及び遅延時間が高精度に導出可能であることから,その実空間における反 射源の具体的な特定が可能である.
例えば,実信号の解析により得られたマルチパス波が 1 回反射であるならば,送信点・
受信点が焦点となる楕円の円周上に反射源が存在する.観測されたマルチパス波の反射源 が,受信点近傍に存在すると考えられる場合,受信点を焦点とする放物線に近似して取り 扱うことが可能である.
上述の通り,到来角度の結果と併せて調べることにより反射源の特定が可能であるが,
その具体的な反射位置(遅延(a,b,c)と角度(A,B,C)の対応付けなど)については,
もう少し詳細な解析が必要である.ただし,7.4.1節並びに 7.4.2節にて述べた通り,自明 の解である直接波の到来角度と遅延量が予想値通りに高精度(角度 1[°]程度,遅延 20[ns]
以内)で測定されており,本論文が目的としている測定手段の妥当性と有効性については,
このデータで明らかになったと言って良いであろう.